詩139「囲われた生産性」

「囲われた生産性」

火もなく
非もなく
日が暮れて
煙も立たない穏やかな息苦しい人生
虫籠のような狭い喫煙所で
煙草をくゆらせながら思っていた

人生を煙に巻いて
何もないままでは訝しいじゃないか
欲しいものは天体のように眺めて
誰かとの比を見れば手漕ぎトロッコのようだ
ハンドルを上下に動かしていただけで
線路から外れることのない幸せ

それでも毎日いろんな後悔をしていた
過去の自分と向き合う旅に
大海原へ漕ぎ出すくらいの勇気が要るのだ
自らじくじくと疼く心に手を突っ込んで
じっくり重い溜息で耐えている
それはもう風も吹かないほどに凪いで泣いた
無理やり熾した非を通して痛めつけ
それぐらいでしか自分を恨むことが出来ないのだ
さしずめ抗えない帆の無力さへの代償

胸に秘めたる熱もなく
悲惨だけが飛び散って
この指に挟む紙煙草を吸い終えたなら
おれも電子煙草に変えてみたい
本当に火もなく煙も立たない人生へ
然したる非もなく
日が暮れて行くだろう


Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?