かつての詩127「バスに乗って」

「バスに乗って」

バスに乗って出掛けよう
バスに乗って目的地まで行こう
あの街のことが少しは詳しくなるかもしれない

十月の土曜
柔らかな陽射しの入る窓際が眩しく
僕はバスに乗って
あまり知らない街へ行った
ありふれた日常の当り前の空間の中を
バスは規定速度で進んで行く

映り行く景色は言い訳なんかしない
ただ人の息吹が延々と受け継がれている
そこに在るだけで良い
それ以上も以下もない

バスに乗って出掛けよう
バスに乗って目的地まで行こう
目的地がないのなら
無理やりにでも決めてしまえ

酔い止め薬を鞄に入れて
混雑には気を付けよう
ガランとした車内を後ろの席から見渡せば
長方形の物体は歪な三次元
バスは大きくカーブを描く

このバスが動くのは運転手が居るから
このバスが走れるのは僕以外の乗客が居るから
この地上では僕は一人ぼっちじゃないらしい

バスに乗って出掛けよう
バスに乗って目的地まで行こう
君の街まで行ってみれば
僕はますます一人じゃない
回るタイヤは人生の回転

Masanao Kata©️ 2009
Anywhere Zero Publication©️ 2022

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