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橋口幸子『こんこん狐に誘われて 田村隆一さんのこと』

戦後から現代にかけた20世紀の詩人 田村隆一は稀代の天才である。
そして私にとっては詩の神様なのだが、そんな神さまの鎌倉は稲村ヶ崎にあった自宅をかつて間借りした著書が、一緒に過ごした1970年代の日々を綴った回顧録がこの本。
四番目の妻 和子との頃で、ねじめ正一の『荒地の恋』やそのドラマ化で親友 北村太郎を絡めた三角関係があったりするが、そこは深く突かないで著者から見た淡々とした田村隆一のいるソフトな生活が描かれている。
とは言え、酒仙の如き田村隆一も人間だということが身近に見ていた特有の視点で描かれ、人として抱える孤独への葛藤や詩を生むために魂を削る静かなる闘いが垣間見えるようで切なくもなる。
著者は、和子夫人とのことは別の著書『いちべついらい 田村和子さんのこと』で描いており、それぞれの想いを読者が推し量ることが求められるのは、尚更切なくて優しい……とは言うものの、難点を言うならば、田村隆一を予め知っておかないと行けないところがある。



橋口幸子『こんこん狐に誘われて 田村隆一さんのこと』 左右社
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橋口幸子『いちべついらい 田村和子さんのこと』 夏葉社
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