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ぼくのPoetry gallery

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かつて野に棲んだ詩鬼の残骸をここに記すという悪い趣味です。
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2023年12月の記事一覧

詩151「異彩」

「異彩」

異才の奇祭は胡散臭い
委細は一切言い出さないまま
雲散霧消な韜晦術で
まくのは煙かそれとも餌か
倒壊する論理には追い付けないが
それでも偉才と褒め称えられ
叩いて消えることさえない
ただ居るだけでも様になるので
冴えない無様な成りでも神々しい
嘘と誠が混合し インサイドで競り合って
玉虫色の魂の妖しい彩りは雄鶏のアシメントリー
色とりどりの折々のまとまりは始まりで終わり
つまりはあとの

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詩150「白銀の月」

「白銀の月」

帰り道の夜空を見上げると
ぼうっと冷たく光る月が滲む
あの気高く遠い世界なら邪な迷いも凍てついて
すべてはお前の想いひとつだ
そう突き放される気がしたら胸が締まった

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩148「紙で切った」

「紙で切った」

血も出ない指先の傷口は
確かにぱっくり薄く切れていた
景色が変わった違和感のような些細な痛みから
やがて来訪する刺激に覚えが始まる
涙も出ない心の無慈悲さは体との蟠り

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩147「呼吸」

「呼吸」

息を吸う
この部屋には一人
息遣いに耳を澄ませば
その音を吸い込んで
部屋の中は二人分

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩146「浮遊」

「浮遊」

傘を差せば宙に浮くような世界では
誰しも四角い丘に佇んで
冷たい夕日が沈むのを待っている
この世界は白々しい
白夜は琥珀色をまとった白昼夢か

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023

詩145「本を読む」

「本を読む」

人間がこれまで本を読んで来た
その姿の美しさを知った
幻想に迷い込む真剣な眼差し
知性が洗練される渦巻く瞬間を垣間見て
人が龍になるその時だと知る

Masanao Kata©️ 2023
Anywhere Zero Publication©️ 2023