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みつもりりっく

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詩集になります。歌詞も合わせて投稿しています。
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#現代詩

あなたはだめじゃないから

あなたの言うことはわかる 死にたいと思う気持ちわかる ぼくも何度も死にたいと思ってきた でもなんだかよくわからないけど ここまで生きてこれちゃった ぼくもそう 自分のことを役立たずだと 何度も思ってきた いくら年を取っても あなたはあなたで きれいごとに聞こえたら嫌だけど これからの人生で 交わることもないかもしれないけど 一つだけ言わせてほしいよ あなたはだめじゃないから だめな人間なんていないから 自分がだめだと決め付けるだけだから なんでこんなこと言うかって それは自分

I LOVE YOUを信じられない

I LOVE YOUなんて軽々しく言わないで 嘘であるという証明がすぐにできるから I LOVE YOUなんて軽々しく言わないで 勘違いさせるテクニックでしょ I LOVE YOUと言う割には あなたはまだ私のことをよく知らない I LOVE YOUと言う割には あなたは私のことを好きではない I LOVE YOUを信じられない 愛してるとはニュアンスが違うから I LOVE YOUを信じられない 乙女の純情を弄ぶには破廉恥 I LOVE YOUなんて軽々しく言わないで

ELUSIVE ROMANCE

徘徊しているんだ街を 傷つけば傷つくほど 素敵になれる気がしてるからね 大人になり損ねて夢に 火を付けて落ちたな灰 コンビニ前で待つ始発早く お互いプライドを盾にして 弱点抉り合ってさ 自堕落なアイランド脇の海 漂流繰り返すんだ 戻ってこいよなんて言えるほど強くない 君といるとまるで万華鏡の中 冷たいんだよな空気が 水たまり踏んで朝もや潜って 埃の舞う巣箱に帰るよ 誰もが初めてらしい人生 飽きてきた一周目で 不思議と部屋が片付いていくな やりたいことやんなきゃ今は

サナギ

こんな姿は誰にも見せられない あなたの温もりが消えた 布団は今でも暖かい 一人だと静かだな 床は冷たい 体は動かない 私はサナギ 春を待つ 空が世界 星は人々 御伽の国へ行けたなら どんなに目覚めがよくなるだろう どこにやったか忘れたイヤリングの 片方抜け殻の部屋の 片隅今でも眠ってる 期待してしまうから どこにいたって 陰から出てくると 私はサナギ 春を待つ すぐに好きが 愛に変わって 絵本の中にいるような 気持ちが目覚めをよくしてくれた 空が世界

夏の隙間(改造バージョン)

二人が並んだバス停 太陽の波見るまでは 見飽きるほどの夢が 瞼の裏に焼き付くなんて 夢にも思わなくて 君と見つめ合うと 瞬く間に朝焼け 星を食んでいく 二人出会えたのは 僕が僕で 君が君だったから 僕が唯一 誇れることは 君と出会えた人生であったこと 涙で滲んだ木漏れ日 振り返る部屋に皺くちゃの 紙切れ転がってる 捨ててきた時間拾い集めて 花束作れたなら 君を思い出すと 雪崩れるように青春 今を飲んでいく 二人出会えたのは 僕が僕で 君が君だったから 君に

名はウルトラス

恐怖の館にいる。お化けが出そうで怖いのに小さなトイレに閉じ込められている。爪の垢を煎じて飲ませたいほどにつゆだくな牛丼を食べている間に、世の中では紫陽花が咲き乱れ、気付いたら、傷だらけになっていた。薄氷の上を這いつくばり、いっせーのせで人間から魂が抜けていく。山を登ろうにも、平地が続いており、突っ走ろうにも路肩にはウイルスがうようよいる。草むしりをしようにも、二輪ではガソリンが足らず、目の画素数が消耗しているのがよくわかる。後にも先にもないだろう、この点滅の先にいくつかの花。

名はアノニマス

幾何学的な模様が海原を抜けていくとそこには最寄りの駅があり、勤務地を越えてさらに進むと丁字路に行き着いた。織り成すメロディーが遠くから聞こえてきて、そこはあたかも楽園のようだった。小津安二郎の声が聞こえてくる。私は破廉恥な目元にキスをするように、アゴのホクロに手を当てた。もう少しボキャブラリーがあればと悔いても時すでに遅し。先生に教わったはずの掛け算も忘れてしまった。肩の骨がボキッと音を立てて、ボールペンの芯が破裂した。いつか艶のある風船が、割れんばかりの拍手喝采を受けること

真のクズのテーゼ

福沢諭吉は「ビールは酒ではない」と言って禁酒すると言ったにもかかわらず、ビールを飲み続けた。その考えでいえば、俺は毎日ビールを飲んでいるのだが、酒は飲んでいないということになる。偉人とはつまり、そういうことなのである。中途半端に善人ぶる奴らはみな本物のクズであり、真の善人は最高のクズなのである。 事件が起こればニュース番組で、加害者を徹底的に非難する。それを見た俺はあまりに滑稽で笑う。本物のクズだ。犯罪すれば法律で裁かれるのに、何をそんな厳罰ばかり望んで、いい気になってんだ

自分講座

ああまた理解されないや ああまた誤解されたや ああ孤独に次ぐ孤独 俺の気持ちの置所なんて どこにもないや 自分を見せれば見せるほど 孤独になっていく 誰が言ったか自分を出せ 俺は自分を出すほどに 一人になっていく 講座ばかりの世の中で 俺は自分講座を開いている 誰か俺に俺を教えてくれよ 俺が一番俺をわからないや

成仏の森

やっちまったなら 成仏の森で成仏させよう 澄み渡った空と正反対の 音楽を聴きながら やっちまったなら 成仏の森で成仏させよう 言いたいこと言い切ってから 死んでも遅くはないよ やっちまったなら 成仏の森で成仏させよう 練炭で死ぬより 気持ちのいいことしようぜ

vs 誰か

パドックという名の棺桶の中で 少年少女たちが眠っている間 星見を忘れた大人たちは ユーラシア大陸の隅っこで 防腐剤にまみれながら カラオケで十八番を唄っている 子守唄を忘れた青年たちは 十字架の前に立って 死者の復活を待っている 吸血鬼には負けまいと 首筋を隠しながら 地球儀をくるくると回している 負んぶに抱っこを忘れた人間たちは 今日もロウソクに火を灯している 私は部屋の片隅でお茶を汲みながら 醤油をかけた冷奴を齧っている 日焼けした畳の上で 知人への誕生日プレゼントを

反省と半生

ニキビが潰れて苛ついている 五百円玉を落として胸が痛い 先回りしないで私のやること 恋を奪い去っていく君が憎い 極楽浄土で暮らしてみたいの 二人でスキーに行きましょう 過去に宣いその日ぬか床の中 その果てにパンくずのような 真夏の陰で汗を掻いているわ 浮気をしたいのと心は喚いた 二兎を追う者は全てをも得る 神は嘘つきよ夕べ吐き捨てた ガムは視線の切れ端で磔の刑 口の中のよだれは乾き切って 恵まれた人々は両手に薔薇色 魚の眼をした元夢想家たちは 腐った都会で熱帯魚を飼って 凧糸

使徒、使徒

雨が降っている 降り止まない雨はないと 囁かれた気がした 耳元で光るイヤリング 泥臭い感情が呻く 簡素な街に手を振って 振り返ると影はついてくる 何もしなくても美しいという 歌詞に浮ついて 人混みに欲を見て 光る観覧車に色を見て 街に死にかけの使徒 後ずさりした背中に 汗と雨が入り混じって モグラになりたいと 涙は見せまいと 夜更けを待つ失恋前後

アテンションプリーズ

そうさ今の世の中 アテンションプリーズ そうさ今はみんな 番記者 パパラッチ アテンションプリーズ こっち向いてください 笑ってください アテンションプリーズ 酔わないでください 恋はしてください アテンションプリーズ 言いたいことは全部 音楽 文学の中 閉じ込められた世界の中で アテンションプリーズ