vs 誰か
パドックという名の棺桶の中で
少年少女たちが眠っている間
星見を忘れた大人たちは
ユーラシア大陸の隅っこで
防腐剤にまみれながら
カラオケで十八番を唄っている
子守唄を忘れた青年たちは
十字架の前に立って
死者の復活を待っている
吸血鬼には負けまいと
首筋を隠しながら
地球儀をくるくると回している
負んぶに抱っこを忘れた人間たちは
今日もロウソクに火を灯している
私は部屋の片隅でお茶を汲みながら
醤油をかけた冷奴を齧っている
日焼けした畳の上で
知人への誕生日プレゼントを悩んでいる
苦しいからこそ、もうちょっと生きてみる。