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ヴォクス・マキナの伝説をTRPG側から解説してみた Season 2 #2(第4~6話)

※注意※
この記事は「ヴォクス・マキナの伝説をTRPG側から解説してみた」の続きです。過去の記事がまだの場合は順に読むことをお勧めします。

#1ではシーズン1の内容に加え、原作となるTRPGセッション『Critical Role』についても紹介しています。

シーズン2の前回の内容や、新たに登場するゲストキャラについては↓からどうぞ。

主要設定

第5話~:火の次元

第5話で一行はケイレス曰く火の次元から物質界を守る民の地・パイラに立ち寄りました。

D&Dの多元宇宙には物質界の他に、善や悪などのような概念を象徴する「次元界」が存在し、その中に、火・水・風(大気)・大地の4大元素を司るものがあります。日本の作品風に言うなら「精霊界」でしょうか。
火の次元界はどこを見ても砂漠や溶岩が広がる、火の精霊が住まう世界です。

ここから先はCritical Role側の設定となりますが、本作の舞台となるタルドレイ大陸やその周辺の海には各元素の次元界と繋がる地があり、パイラはその中でも火の次元界と関わりのある場所ということになります。

第6話~:フェイの国

新たなヴェスティッジ「ミスカーヴァー」を手に入れ、次なるヴェスティッジの在処のビジョンを得たスキャンラン。そこは本人曰く「ドラッグでハイの時みたいだ」という光景でした。

そこは「フェイの国」―D&Dで言えば、次元界のひとつ、妖精界「フェイワイルド」。物質世界を誇張したような外見の、メルヘンの世界です。しかし、フェイ=妖精達は必ずしも善良な存在ではありません。それこそスキャンランが「ドラッグでハイになった」という表現は言い得て妙と言えるような、常人からすれば想像もできないような思考をする者達も少なくありません。
フェイワイルドで過ごした記憶に悪影響が出る、フェイワイルドで数日過ごした後、帰ってきた時には数分しか経過していなかった、もしくは数年も経過していたという事例もありますが、ヴォクス・マキナの一行はどうなるのでしょうか?

個別解説:第4話

リヴィヴィファイ(キャショー)

治療呪文すら受け付けず、倒れるヴェクス。キャショーがパイクと共に復活の儀式を提案する。

死者の復活というのは信仰による奇跡として代表的ですが、D&Dのクレリックにもいくつか例があります。
その中でも、このヴェクスの状態なら一番レベルの低い「リヴィヴィファイ」の呪文で事足ります。D&Dのルール上では死亡して1分以内、老衰死には非対応、失った四肢の復活も不可能という制限があります。

2023/02/18追記:原作Critical Roleでは死により重みを与えるため、蘇生呪文にはD&D5版のルールに加えてより厳しい制限が設けられているようです。
この辺りもまたいずれ翻訳するかもしれません。
2023/02/25追記:せっかくなので翻訳しました。

フライ(ザーラ)

先行するザーラとキャショーはヴォクス・マキナを待ち伏せるため、呪文で高台に飛び待機した。

浮遊する円盤を作る呪文は「テンサーズ・フローティング・ディスク」がありますが、こちらは人二人を乗せられるだけのサイズはなく(直径1メートルない程度)、高い所に移動することもできません。
人二人を浮かべたことから、「フライ」の呪文による飛行の表現と考えるべきでしょう。

モンスター:単眼と触手の怪物

続いてヴェスティッジを手に入れるため、ザーラは胸につけていたアクセサリーから単眼と触手の怪物を呼び出した。怪物は触手を伸ばし、石化攻撃でヴォクス・マキナを追い詰める。

原作のザーラが召喚呪文やアイテムを使用した記録はありませんが、ザーラの契約相手であるグレート・オールド・ワンは「異形」系の生物の親玉とも言うべき存在であること、単眼と触手の怪物であること、そして石化能力から、D&Dを代表するオリジナルモンスター「ビホルダー」の差し替えとみて間違いないでしょう。

ビホルダーは中央と本体から伸びる目の合計11の目を持ち、中央の目は魔法の無力化、そして10の小さな目からは石化、分解、念力など、様々な効果を持つ光線を発射します。
10種類の効果のうち石化だけが採用されたのは、ピンチの表現として都合がよかったからでしょう。

ひとくちにビホルダーといっても、その姿は多様です。
左:D&D第5版ルールブックより 右:ゲーム『Dark Alliance』より

シールド・オヴ・フェイス?(キャショー)

呼び出した怪物が想定以上に強く、自ら討伐に入るキャショーとザーラ。石化に巻き込まれなかったヴェクスと共に戦うため、キャショーは他の二人を光の盾で触手から守る。

S2第1話で紹介したグローブ・オヴ・インヴァルナラビリティやウォール・オヴ・フォースはキャショーのクラス・クレリックでは使用できません。
光の盾の表現はパイクのシールド・オヴ・フェイスに似ていますが、複数体に対して使うことができません。
外見からシールド・オヴ・フェイスの表現とみた方がいいのでしょうか。

ヘイスト / 高速移動はデスウォーカーの鎧の効果でない説(ヴァクス)

幻覚の中でパーヴォンとカラスの女王に認められ、覚醒するデスウォーカーの鎧。防具から力を引き出し、ヴァクスは恐るべきスピードで怪物を翻弄する。

アニメでは高速移動があたかもデスウォーカーの鎧によって与えられた効果であるように描かれていましたが、原作での情報を見るとこの段階ではACの上昇と死亡判定の有利しかなかったようです。

一方で、配信に乗るにあたって『パスファインダー』1版からD&D5版にコンバートされたアイテムの中に「ブーツ・オヴ・スピード」(D&D5版とは主な仕様が異なる)があり、こちらは着用者に「ヘイスト」の呪文の効果を与えるというものでした。
『ファイナルファンタジー』をご存じの方なら名前を聞いてピンとくるかもしれません。D&Dではヘイストは文字通り受けた相手を加速させ、攻撃回数の追加、各種防御能力の上昇、移動力の増加といった多様な効果を一度に受けられる協力な呪文です。

アニメ版ではデスウォーカーの鎧の効果に組み込むことで、視覚的により印象的なシーンになるように仕上げたのかもしれません。

生物を異次元にしまうアイテム(ザーラ→ヴェクス)

脱出後、ヴェクスはザーラから怪物をしまっていたアクセサリーを受け取る。このアイテムはトリンケットを持ち運ぶために使用されることになる。

これはオリジナルアイテムですが、原作では外見と出自が異なっています。
原作では「デスウォーカーの鎧」の持ち主・パーヴォンの相棒であった狼を呼び出すための結晶体で、一行は狼を解放したのちトリンケットを入れていました。

このアイテムはDMによる救済なのでしょう。原作情報によれば「ボーナス・アクション(通常の攻撃とは別枠)で、入れた生物を自分から少し離れた所に召喚できる」「最後に収納した生物が死亡したとき自動的に容体を安定化する」など、ビースト・マスターの相棒の弱かった点やプレイヤーが心配だった点を改善し、扱いやすくしています(Season 1解説 #2「トリンケットが出てこなくなった」を参照)。

クリスタル・ボール/スクライング(フードの女性)

水晶玉でヴォクス・マキナの動向を監視するフードの女性。

水晶玉を通して異なる時間や場所の出来事を見るというのはファンタジーやオカルトの鉄板ですが、D&Dにはまさに水晶玉などを触媒とする念視の呪文「スクライング」があるほか、逆にスクライング同様の効果を得られるクリスタル・ボール、すなわち魔法の水晶玉もあります。

個別解説:第5話

ブルーム・オヴ・フライング(スキャンラン)

ギルモアの店から持ち出したほうきを確かめるスキャンラン。書かれていた文字を読むと突然浮かび上がった。

魔女の乗り物としておなじみ、ブルーム・オヴ・フライング―つまり空飛ぶほうきです。D&Dでは合言葉を唱えると宙に浮かぶとあるので、このほうきに関してはスキャンランが解読したのがそれだったようです。

ディメンジョン・ドア(アルーラ)

火の次元界へのポータルをケイレスに任せ、エモンの宮廷魔術士・アルーラは瞬間移動で立ち去った。

短くもないが超長距離でもないこと、そして後のシーンで他にもう一人を連れて出現していたことから、ディメンジョン・ドアの呪文のようです。
瞬間移動の呪文はいくつかありますが、ディメンジョン・ドアは比較的高レベルの呪文で、最大150メートル程の距離を誰かもう一人と共に移動することができます。

テレポート(アルーラ)

エモンの塔が倒れる際、アルーラは一向を脱出させる手段として大人数を瞬間移動させたと説明された。

これはシーズン2解説 #1で紹介した「テレポート」の呪文でしょう。

元素の自然の化身(ケイレス)

自ら火の次元に飛び込み火を纏ったケイレス。

一見オリジナルのように見えますが、月の円環のドルイドが持つ「元素の自然の化身」の特徴の表現かもしれません。

シーズン1解説 #1でケイレスは「自然の化身」―動物変身の能力を持ち、月の円環の能力は自然の化身の強化に特化していると説明しました。そして、その強化の一つとして、動物ではなく、四つの元素の精霊のうち一つの姿を選んで変身することができます。
使用回数の消費数が2倍になりますが、虎や狼のような動物の姿より格段に強力です。

個別解説:第6話

フレイミング・スフィアー???(ケイレス)

雪山の寒さに凍える一行を、ケイレスは新たに授かった火の球で温める。

以前紹介したクリエイト・ボンファイアとは表現が違うようです。
「フレイミング・スフィアー」のようにも思えますが、こちらは地上を転がる火の球を生成するというもので、性質が異なります。
空中に浮かぶ明かりという意味では「ダンシング・ライツ」の呪文かもしれませんが、直接的に火と関係がなく暖はとれそうにありません。

モンスター:ゴルゴン(ゴーゴン)

スフィンクスが提示した条件のひとつとして、「死のゴルゴン」70体の討伐に言及された。

ゴルゴンと言われれば、ギリシャ神話に登場する髪が蛇の女性を連想するかもしれません。しかし、D&Dのゴーゴンは同じくギリシャ神話の怪物「カトブレパス」の別名として、鉄の体を持ち、石化ガスを吐く牛として描かれており、Critical Roleの第2キャンペーンでも実際にいち個体が登場しているようです。

D&D第5版より ゴーゴン

シールド(カマルジオリ)

条件として決闘を受け入れた一行。最初に名乗り出たヴァクスはダガーを投げるも、魔法の障壁で弾き返されてしまう。

魔法の障壁を作り出す呪文は数多いですが、「シールド」呪文はD&Dでも攻撃に反応して使用でき、一時的にACを高めて攻撃を通りづらくします。

同じくカマルジオリの目からビームに関してはD&Dのルールでも原作でもそれらしい内容は見当たりませんでした。

プレイン・シフト(ケイレス)

フェイの国へ向かうため、ヴァクスから転送の呪文が使えないか尋ねられるケイレス。

瞬間移動の呪文といっても、次元を超えることができるのは高レベルの「プレイン・シフト」です。
D&Dのルールでは特定の次元界に向かうためには「鍵」となるアイテムが必要ですが、本作では特殊な泥のようなものと魔法陣だけで起動していたので扱いが違うようです。

旅はまだまだ続く

今週はフェイの国に到着した所で終わりです。
個人的には本作でフェイワイルドがどう描かれるのかが楽しみです。

ヴォクス・マキナの伝説 シーズン2もようやく折り返し地点、まだまだクロマ・コンクラーベを倒すための旅は続きます。それではまた次回。


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