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なぜ、アメリカ式教育は「緩い」のに、アメリカという国はイノベーティブなのか(3)

前々回記事(1)前回記事(2)、からの続きです。

アメリカの伝統的ボーディングスクールに通うYさん(17歳)と、その父親であり「海外進学生の親ブログ」のゆたかさんへのインタビュー。

前回までは、Yさんに、アメリカの高校の「授業について」、ボーディングスクールの「先生や生徒の質について」答えていただきました。
今回は、そこからもう少し踏み込んで、いよいよ核心に迫っていきます。


🏫勉強だけじゃない。「尊敬のベクトル」が多数ある


勉強ができる子が尊敬されるのは、世界中どこの高校でも同じ。海外留学して対等に付き合える友達がほしいなら、まずは英語・算数、もしくは社会系の科目で実力を見せて一目置かれること、と語る留学エージェントもいます。

日本でも同様で、「偏差値の高い学校」の制服を着て歩いていれば多くの人から憧れや羨望のまなざしでみられることでしょう。

ですが、アメリカでは「それだけではない」とYさんは語ります。

「勉強ができる人が尊敬を集めるのはもちろんですが、それも個性のひとつにすぎません。スポーツができる人、楽器ができる人、芸術が得意な人、またそうした一芸に秀でた人だけでなく、みんなに優しい親切な人、まじめな人、おもしろい人などの人柄も尊敬の対象となります。そして最も大切なのはやはり『リーダーシップ』です」


🏫リーダーは1人じゃない


日本で「リーダーシップ」というと、「クラスで1人のクラスリーダー」「チームで1人のチームリーダー」のような印象のある言葉です。ですが、それはどちらかというと意味合い的には「オーナーシップ」のこと。全員に「リーダーシップ」が求められるとはどういうことでしょうか。

Yさんはこう説明してくれます。

「何も大きなことでなくていいんです。例えば、寮の共用のバスルーム(トイレ)をきれいに使うにはどうしたらいいかとか、実際に考えて実行できる人。みんなのためになる行動ができる人。貢献できる人。それがリーダーシップです」

みんなのためになる方向にみんなを導くことができること、それがリーダーシップ。そしてそのリーダーシップは、「スモールステップ」から育んでいけるとYさんは実体験から話してくれます。

まずは小さな身の回りのことから始めて、徐々に学校全体のこと(後輩の手助け、クラブや課外活動のリーダー職)、そして地域への貢献活動へ。
グローバルに貢献する未来に向けての礎は、現実的で着実な一歩から始まります。
決して、大きなことや派手なこと、特別なことだけがリーダーシップではない、とYさんは語ります。

一方、日本の中等教育のゴールは「いい大学に入ること」になりがちであり(何校か日本の私立中学校の説明会等に出席するとそれがよくわかります)、いろいろな入試パターンが増えてきたとはいえ、まだ偏差値・学力に対しての評価に偏重している感が否めませんが、学力以外の特技や個性、キャラクター、自分で考えて周囲に貢献することができる「リーダーシップ力」も、学力と同様に尊重されるところが北米の教育のあり方。

その多様性と自由さが魅力である、ということは親であるゆたかさんにも、高校生の留学生当事者のYさんにも共通する思いである様子です。


🏫多様だから、素直になれる。気付きが得らえる


現在17歳のYさんは、幼稚園から小学校3年生までをアメリカの公立校で、その後か中学3年生の1学期までを日本の公立校で、15歳から現在までをアメリカの私立校(ボーディングスクール)で過ごしている、という経歴の持ち主。

日本の教育とアメリカの教育のどちらもそれなりの年数受けたことがあり、その違いを実体験しているYさんに、アメリカの学校のよさを聞くと、

「アメリカの学校では、多様な価値観があるから、思っていることを素直に言えるようになる。すると、気付けることが多くなる。それによって感謝も生まれる。
そしていろいろな人がいるからコネクション(人との繋がり)が得られる。それはアメリカの学校のよさかな、と思います」

と語ります。
一方、父親であるゆたかさんに「アメリカの高校に行かせてよかったと思いますか」と問うと、

「子どもたちには多様な考えを持てるようになってほしい、と願っています。そして、そのように育っているようなので、アメリカの学校でよかったと思います」

との答えが。

また、ゆたかさんに我が子たちの今後についてはどんなことを望むのか、と問うと、

最終的には『人生の成功って何?』ということになるのですが、それは外資系コンサル企業や総合商社に就職することなの?というと、それも否定はしませんがそれだけではないんじゃないかな、と個人的には思っています。それぞれの子どもの決めた道を家族全員でサポートし合っていければいいと思います」

と話してくれました。

多様性が担保されているからこそ、素直になれる。本当の気持ちに向き合える。

これは学生本人からの言葉としてとても印象的でしたし、また、父親であるゆたかさんについても、ご自身の海外での勤務経験、幅広い交流経験に裏打ちされた視座の高さもまた印象的でした。

「絶対に失敗してはいけない環境」では、人は挑戦することができません。「成功した」という結果だけが価値を持つ環境では、人はより失敗を恐れ「過去に成功できたこと」しかしないようになります。

「失敗してもいいし、いろいろあっていい」「再チャレンジできる」。
そういう環境に子どもを置いてやれているか?ということは、どこの国にいて、どんな教育システムの中にいたとしても、留意していたい点です。

「ゴールはココ」、「そのための道筋はコレ」と、親の時代の常識やインターネット上で語られる成功譚からの既成概念で決めてしまわないようにしたいものです。


🏫今回のまとめ


☑アメリカの高校では「尊敬のベクトル」が多様であり、勉強以外の面も高く評価される

「リーダーシップ」とは周囲への貢献。「1人の代表者」のことではない

多様性が担保された社会で、人は素直になれる


次回は、ぐっと現実的に「教育とおカネの話」「奨学金の話」に切り込みます。

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