マイケル・ガンボン主演『メグレ警部 Maigret』第2シリーズ(1993)各話紹介と感想
どの話も手堅く面白いですが、個人的ベストは「メグレとナイトクラブ・ダンサー」「メグレと幼友達」「メグレと建築疑惑」です。
個別感想はネタバレあります。
第1話「メグレとナイトクラブ・ダンサー Maigret and the Night Club Dancer」
原作:『モンマルトルのメグレ Maigret au "Picratt's"』(1950)
ラポワントがアルレットの死を知るのはアパートで直接死体を見る形に変更されており、原作以上に衝撃的な知り方となっています。
最後のオスカルとの対峙シーンは原作と変更され、ラポワントの情念がより強く出る形になっていました。
薬中の人物はマイルドな人物造形になっており、伯爵の死体発見と同時に建物屋上から飛び降りようとする形に変更して、間のエピソードを一気に簡略化しています。
アルレットの存在を感じる部分は原作より薄まっていますが、物語の最後にラポワントが泣くシーンもあり、全体的には満足度が感じられます。
ローズ/ブレンダ・ブレシン(谷 育子)
フレディ/トニー・ドイル(円谷文彦)
フィリップ/マイケル・シーン(山寺宏一)
第2話「メグレとホテル殺人事件 Maigret and the Hotel Majestic」
原作:『メグレと超高級ホテルの地階 Les caves du 'Majestic'』(1942)
いつも通りメンバーと一緒に捜査しています。
イギリス製作のため英語が分からないメグレという描写はありません。
仕事帰りのドンジュに声をかけるシーンはタクシーに変更しており、残念ながら自転車に乗るメグレは見られませんでした。
ジジもドンジュに原作より好意を持っていました。
殺人を一件省略するなど、全体的に簡略化されていますが面白かったです。メグレが殴られたり、殴ったりもあります。
ジジ/トーヤ・ウィルコックス(弥永和子)
シャルロット/ニコラ・ダフェット(水沢有美)
プロスペル/マイケル・J・ジャクソン(有本鉄隆)
ラミュエル/ジョン・カヴァナー(緒方賢一)
第3話「メグレ陰謀に落ちる Maigret on the Defensive」
原作:『メグレたてつく Maigret se défend』(1964)
先に「メグレと宝石泥棒」を映像化しているので、メグレが追う事件はレストランを狙う強盗事件へ変更されています。メグレが追っている男は、アンリという男です。
警察局長の役割も警視総監が受けているため、原作より直接的な対立姿勢が強まっていました。
大筋は原作に忠実な流れですが、小説と映像の媒体の違いもあり、やはり原作にあったメグレの悲哀などは薄めになっています。
このシリーズ特有の仲間との近さもあり、力を合わせて前向きに陰謀へ立ち向かう感じが強いです。
また、最後にメグレと犯人の対話があり、犯人の動機に関係する原作にあった戦時中のエピソードは無くなっており、動機が変更されていました。
ドクター・バルドン/オリヴァー・フォード・デイヴィス(永井一郎)
フランソワ・メラン/ジョン・ソールトハウス(田中秀幸)
アンリ・ローティエ/ジョン・ベンフィールド(飯塚昭三)
第4話「メグレと幼友達 Maigret's Boyhood Friend」
原作:『メグレの幼な友達 L'Ami d'enfance de Maigret』(1968)
フロランタンがメグレの家まで訪ねてくる形に変更になり、学生時代にメグレが自分の妹に熱を上げていたと夫人に話します。
当然、その全てはメグレをイラつかせます。
事件のまとめ方がバランスよく、最後まで面白く観ることができました。
短い中にもフロランタンの嫌らしさがしっかり出ていたのが良かったです。フロランタンがメグレ夫人と会う改変が、物語の最後に回収されます。
レオン・フロランタン/エドワード・ベザーブリッジ(家弓家正)
ヴィクトル・ドゥルエ/ケニス・ヘイグ(富田耕生)
フェルナン・クールセル/ピーター・ブライズ(村松康雄)
第5話「メグレと建築疑惑 Maigret and the Minister」
原作:『メグレと政府高官 Maigret et le marchand de vin』(1954)
子どもの犠牲者が62人へ変更されています。
大筋は原作通りですが、最後はマスクランがピクマルに追い詰められる展開を追加しており、原作のもやもやした終わり方とは真逆の方向で話を決着させました。
ドラマシリーズの明朗快活な空気を考えると悪い改変ではないと感じました。
原作でもメグレ班の全員に仕事があるため、レギュラー勢揃いのドラマシリーズでは一丸となって捜査している感じが、より強く感じられます。
カトルーが原作と違い風邪をひいているのに、休むように言っている女房の言いつけを守らずメグレの尾行をしています。
ポワンとメグレの交流は原作より薄めです。
ポワン大臣/ピーター・バークワース(久米 昭)
マスクラン議員/ジョン・フィンチ(池田 勝)
第6話「メグレとジャンヌヴィルの女 Maigret and the Maid」
原作:『メグレと奇妙な女中の謎 Félicie est là』(1944)
イベントの省略はありますが、病院でのメグレが看護婦を注意するシーンが残されていたのは良かったです。
また、パリでフェリースが銃を隠す場所が変わっているため、レストランからの一連のシーンはありません。
シチュエーションは違いますが「大嫌い!」「私は大好きだよ」のシーンもあります。
最後、メグレが立ち去る前に2階を見ると、窓を覗いていたフェリースがサッと隠れる場面が、フェリースって感じで良いです。
ただ、陽性の強い本ドラマシリーズと本原作の雰囲気は少し食い合わせが悪いのかなと思える時もあり、面白いのですが、お気に入りとまではいきませんでした。
フェリース/スージー・リンドマン(鶴 ひろみ)
ジャック/スティーヴン・マッキントッシュ(平田弘明)
レギュラーキャスト
ジュール・メグレ/マイケル・ガンボン Michael Gambon(瑳川哲朗)
リュカ/ジェフリー・ハッチングズ(田中信夫)
ジャンヴィエ/ジャック・ギャロウェイ(神谷和夫)
ラポワント/ジャームズ・ラーキン(津久井教生)
メグレ夫人/バーバラ・フリン(2-3~5/加藤みどり)
コメリオ/ジョン・モファット(2-2、2-5/大木民夫)
※ジョン・モファットはラジオドラマで1987~2007年までポワロを演じている
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?