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『モンマルトルのメグレ』個人的視聴ランキング

キャバレー〈ピクラッツ〉で働く踊り子・アルレットが深夜の警察署へ駆け込んできた。アルベールと言う男が伯爵夫人を殺すと話していたという。次の日、アルレットは自分の供述を否定する。その後、アルレットが自宅で殺され、続いて伯爵夫人の死体も発見される。

キャバレー〈ピクラッツ〉の関係者を中心に、社会の裏側で生きる人々を描いた名作『モンマルトルのメグレ』(1950)。メグレ班の一人、若きラポワントが物語に絡むのも特徴です。

この原作の映像化をいくつか観ることができたので、個人的な好みを書き残しておきます。

観たのは以下4本。
ジャン・リシャール主演シリーズ 第68話
 「モンマルトルのメグレ」(1985/仏/85分)

ブリュノ・クレメール主演シリーズ 第04話
 「モンマルトルのメグレ」(1992/仏/82分) 

マイケル・ガンボン主演シリーズ シーズン2・第1話
 「メグレとナイトクラブ・ダンサー」(1993/英/52分)

ローワン・アトキンソン主演シリーズ シーズン2・第2話
 「ピクラッツのメグレ」(2017/英/89分)

好きな順番は以下のようになりました。

リシャール ≧ ガンボン > クレメール = アトキンソン

どのドラマも面白く観ることが出来ましたが、残念ながら原作の良さを十分に描けている作品はありませんでした。

 リシャール版は、一番アルレットに迫ろうとしていました。ただし、アルレット以外の要素が薄味すぎるところがあったため、物足りなさがあります。
 原作でラポワントが担う役回りは、ゲストの新人刑事・ラクロワの担当になっています。しかし、初登場かつ話の中でそこまで目立つわけではありません(後に第80話にも再登場します)。物語の最後もラクロワではなくメグレに焦点を当てて終幕になっており、ラクロワの影が薄いのも物足りなさに繋がっています。
 ちなみに、ロニョンもちょい役で顔を見せますが、〝不愛想な刑事〟ではありませんでした。

 ガンボン版は、4本の中で一番ラポワントへ焦点を当てている物語構成でした。シリーズを通して時間の短さがネックとなっており、丁寧な脚本ながらアルレット含む殆どの要素が原作より薄まっています。
 しかし、ラポワントの描き方は一番満足度が高かったです。物語の最後もラポワントに焦点を当てており、原作の終わり方には負けていますが、ラポワントを描いた物語として満足感のある閉め方になっていました。
 ガンボン版がシーズン1の第1話のように78分のスペシャル枠で映像化していれば、リシャール版より好きになった可能性を感じます。

 クレメール版とアトキンソン版は、原作に無い要素の追加でテーマや事件の複雑さを狙っていますが、そのせいで物語としての焦点がぼやけている感じがあります。そのため、原作で描かれていた面白さは消えてしまっています。
 どちらも、ある登場人物を原作より悪い人間として描いている所が共通しており、原作で描かれていた「駄目な人間だが愛嬌もありどこか憎めないという多面性」が薄まっているのも残念でした。
 そもそもアトキンソン版は、全体的に男性は原作にいるキャラも居ないキャラもみんな酷い人間になっています。反面、女性は全体的に原作より好意的な描かれ方が多く、女性の生き方を巡るドラマという要素を前面に押し出したいのかなと思いました。
 ただし、両作とも原作を意識しなければ一本のドラマとして面白く観ることができました。

ちなみに、1978年の愛川欽也主演・東京メグレ警視シリーズの第6話で「警視とモンマルトルの女」として映像化されているみたいです。
中々視聴機会がないドラマシリーズなので、再放送・ソフト化・配信等されて欲しい所です。


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