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マイケル・ガンボン主演『メグレ警部 Maigret』第1シリーズ(1992)各話紹介と感想

どの話も手堅く面白いですが、個人的ベストは「メグレと宝石泥棒」「メグレと錯乱した女」「ホームグラウンドのメグレ」です。
個別感想はネタバレあります。


第1話「メグレと宝石泥棒 The Patience of Maigret」

原作:『メグレと宝石泥棒 La patience de Maigret』(1965)

引退まで11年とのセリフあり、設定としては四十台半ばと思われます。
判事はコメリオで、新任の判事のエピソードはありません。
パルマリを追って7年目の設定です。

原作以上にメグレ班全員で捜査している感が強く感じられます。
大筋は原作に沿っており、ゴム手袋や空白の20分などのエピソードも拾っています。
78分の時間がある事で丁寧にエピソードを描写しており、満足度が高いです。

 アリーヌ・ポーシュ/シェリル・キャンベル(戸田恵子)
   バリヤール夫人/レイチェル・フィールディング(土井美加)
マニュエル・パルマリ/トレヴァー・ピーコック(大塚周夫)

第2話「メグレと泥棒の女房 Maigret and the Burglar's Wife」

原作:『メグレと消えた死体 Maigret et la grande perche』(1951)

冒頭のズズメバチの下りが使用されていて少し笑顔になりました。
エルネスティヌとメグレの過去の因縁については、リュカが若いラポワントへ説明をする形に変更されています。
外回りの捜査は殆どリュカが担当する形になっており、原作では休暇中だったリュカの活躍が目立つようになっています。
それ以外のメグレ班のメンバーも存在感があり、ドラマ2作目としてキャラクターを印象付ける作品となっていました。

セールの最初の妻の存在はカットされており、事件自体も単純化しています。
セール母の狂気も薄くなっているため、最後の犯人との対決の印象が薄まっているのが残念でした。

ギョーム・セール/クリストファー・ベンジャミン(小林 修)
   セール夫人/マージェリー・ウィザーズ(島 美弥子)
エルネスティーヌ/サンディ・ラトクリフ(小宮和枝)

第3話「メグレと漁村の教師 Maigret Goes to School」

原作:『メグレと田舎教師 Maigret à l'école』(1953)

原作通りジョゼフ・ガスタンが直接依頼に来て、最初はリュカとジャンヴィエが話を聞きます。
その後、メグレはガスタンと一緒に村へと行き、原作に沿った物語が展開されていきます。

タイトル通り漁村であることがしっかり強調され、メグレは白ワインと牡蠣を気にしながら機嫌よく捜査しています。
原作と違い、牡蠣を食べられて良かったです。
ジャン・ポールが原作以上に感情を爆発させる少年になっているのが、登場人物面での大きな変更点だと思います。

余所者に排他的という情報はありますが、ドラマ自体の雰囲気が明るめなのもあって、原作やクレメール版ほど作品内に息が詰まる感じはありません。話のまとまりも良く、シリーズの一本としては満足度が高いですが、原作の雰囲気の映像化としては明るすぎたのが難点でもありました。

 ジョゼフ・ガスタン/ストゥルーアン・ロジャー(伊藤和晃)
   ダニエル―大尉/エイドリアン・リューキス(山口嘉三)
ドクター・ブレッセル/ジム・ノートン(寺島幹夫)

第4話「メグレと錯乱した女 Maigret and the Mad Woman」

原作:『メグレと老婦人の謎 La folle de Maigret』(1970)

メグレが話を聞いた翌日に、老婦人は死にました。老婦人がいつもより遅く出かけた理由として、ラポワントとお茶を飲んでいたため時間が遅くなり、公園に行く代わりに少し散歩をし、いつもより早めに帰ってきたと理由が追加されています。
物語は原作に沿ってテンポよく進みます。
メグレ班も全員活躍し、夫人の出番も多いです。
原作が短めで、捜査物の雰囲気が強かったので、本ドラマに合ってる原作だと思ってましたが、良いドラマ化になっていました。
最後には老婦人だけでなく、マルセルの死にも罪悪感を持つメグレですが、「あなたが何もかも一人でできるわけないのよ。そういうこと」と夫人に言葉をかけてもらいます。ドラマならではの余韻を追加しており良かったです。

アンジュール/フランシス・キューカ(来宮良子)
  マルセル/マーク・フランケル(大塚明夫)
  エミール/マーク・ロキュアー(家中 宏)

第5話「ホームグラウンドのメグレ Maigret on Home Ground」

原作:『サン・フィアクル殺人事件 L'Affaire Saint-Fiacre』(1932)

原作のストーリーに沿ってテンポよく進んでいきます。
エルネストの証言が原作から変更があり、バーから館での夕食のシーンはカットとなり、ドラマ版オリジナルの幕引きとなっています。パリ警視庁への予告状は、エミールが潔癖故、事件を暴いて欲しかった行動と動機づけられています。

原作よりメグレが昔馴染みに笑顔を見せたりと、事件以外の部分では和やかな様子が感じられ、ホームグラウンドに居るメグレを存分に味わえました。

    モーリス伯爵/ジョン・ワーナビー(佐古正人)
エミール・ゴーティエ/ポール・ブライトウェル(鈴置洋孝)
  ジャン・メタイエ/ジェームズ・クライド(関 俊彦)

第6話「メグレわなを張る Maigret Sets a Trap」

原作:『メグレ罠を張る Maigret Tend un Piège』(1955)

原作に沿いながら時間に収めるように適宜簡略化が施されています。
正味50分の中で、大きく分けて2部に分かれている原作を映像化する為、捜査パートもサクサク進んでいくので、捜査が進まない中での焦燥感や鬱屈が薄まった感じがあります。
短い時間で伝わりやすいように、母と嫁の憎み合いやモンサンの鬱屈など、モンサン一家の描写も原作より分かりやすくなっています。
原作ではメグレが話したモンサン像についても、モンサン自身が一部語っています。

手堅い作りで悪くありませんが、原作や他の映像化に比べるとやや淡白に感じてしまうのが惜しい所です。

 マルセル・モンサン/リチャード・ウィリス(池田秀一)
    モンサン夫人/アン・ミッチェル(翠 準子)
イヴォンヌ・モンサン/レオニー・メリンジャー(幸田直子)

レギュラーキャスト

ジュール・メグレ/マイケル・ガンボン Michael Gambon(瑳川哲朗)

     リュカ/ジェフリー・ハッチングズ(田中信夫)
  ジャンヴィエ/ジャック・ギャロウェイ(1-5以外/神谷和夫)
   ラポワント/ジャームズ・ラーキン(1-3、1-5以外/津久井教生)

   メグレ夫人/シャラン・マドン(1-1、1-2、1-4、1-6/加藤みどり)

    コメリオ/ジョン・モファット(1-1、1-2、1-6/大木民夫)
※ジョン・モファットはラジオドラマで1987~2007年までポワロを演じている


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