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アガサクリスティーについて

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アガサ・クリスティー関係の記事をまとめています
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#サスペンス

アガサ・クリスティー『茶色の服の男』The Man in the Brown Suit(1924)+殺しのブラウン・スーツ(1989)紹介と感想

アガサ・クリスティー 深町眞理子訳『茶色の服の男』早川書房, 2020 今回は、購入以来読めていなかったハヤカワ・ジュニア・ミステリ版で再読しました。 あらすじ 冒険に憧れていたアン・ベディングフェルドは、父親が死んだことを機に、僅かな遺産を持ってロンドンへと出て来た。 ある日のこと、アンは地下鉄のホームから男が落ちて死んだ現場に遭遇し、その死体に近寄った茶色の服の男が落としたメモを拾う。 その後、二人の男はサー・ユースタス・ペドラーの持ち家であるミル・ハウスで起こった

アガサ・クリスティー『忘られぬ死』(1945)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー  中村能三訳『忘られぬ死 Sparkling Cyanide』早川書房, 2012(電子書籍) 個人的に、BBCミニシリーズでドラマ化して欲しい作品で上位に来る原作を、久しぶりに再読しました。 あらすじ 自身の誕生日パーティーの最中に青酸カリを飲んで死んだローズマリー・バートン。その死は、自殺として処理された。 それから1年が経ったが、妹のアイリス、夫のジョージ、ジョージの秘書であるルース、ローズマリーの不倫相手だったスティーヴン、スティーヴンの妻

アガサ・クリスティー『招かれざる客』The Unexpected Guest(1958)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー 深町眞理子訳『招かれざる客』早川書房, 2011(電子書籍) あらすじ 霧の濃いある晩。サウス・ウェールズにあるウォリック家のリチャードの書斎に、スタークウェッダーという男が訪ねてきた。 車が溝にはまってしまったため助けを求めに来たスタークウェッダーは、車イスの上で死んでいるリチャードを発見した。 書斎の中にはもう一人、リチャードの妻・ローラが銃を手に持ち茫然と立っていた。 彼女は、スタークウェッダーの質問に答える形で自分が殺した事を認めた。 スター

アガサ・クリスティー『終りなき夜に生れつく』Endless Night(1967)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー 矢沢聖子訳『終りなき夜に生れつく』早川書房, 2012 (電子書籍) 昔から大好きな作品の一つであり、時折再読したくなります。この作品もBBCミニドラマシリーズの計画が発表された時から映像化されないかなぁと思っています。 あらすじ マイクは、様々な職を転々としながら生活をしている青年だった。 彼は、ある時出会った〈ジプシーが丘〉に一目惚れし、友人である天才建築家・サントニックスが設計した家を建てたかった。 ある日、マイクは〈ジプシーが丘〉でエリーと

アガサ・クリスティー「ナイチンゲール荘」原作・戯曲・映画 比較感想

ネタバレ全開で記載しています。 原作「ナイチンゲール荘(うぐいす荘) Philomel Cottage」 1924年のグランドマガジン11月号で発表。1934年出版の『リスタデール卿の謎』に収録。 主人公はアリクス・マーティン。殺人者はジェラルド・マーティン。元カレはディック・ウィンディフード。 アリクスとジェラルドが出会ったきっかけは友人の家の集まり。現在のコテージの様子以外はすべてアリクスの回想で語られる。 アリクスの緊張状態での心理描写や、後の戯曲では削られたジェ

アガサ・クリスティー「事故」原作・戯曲 紹介と感想

「ナイチンゲール荘」の記事を書いてから、同じく『リスタデール卿の謎』に収録されている「事故」も他者の手による戯曲があったと思い出し、久しぶりに読み、情報を一つにまとめようと思い立ちました。 ネタバレ全開で記載しています。 原作「事故 Accident」 1929年にイギリスの新聞Sunday Despatchへ掲載後、1934年出版の『リスタデール卿の謎』に収録。 登場人物も少なく、ページ数的にもショートショート的なサスペンスです。現代の眼で見れば良くある話といえますが

クリスティー短編の魅力を伝える良作『アガサ・クリスティー・アワー』(1982)ドラマ概要+「仄暗い鏡の中に」「車中の娘」 紹介と感想

クリスティーのノンシリーズ短編8話とパーカー・パインから2話をドラマ化したドラマシリーズになります。 どの話も大筋は原作に沿いながら、ドラマとしてのアレンジが上手く面白い話が揃っています。 純粋な謎解きストーリーは無く、サスペンスからホラー、ロマンスを扱った作品が多いのが、他のクリスティー映像化とは違う特徴になります。 また、描かれる時代は、全て執筆当時の1920~30年台です。 ポワロやマープルがいなく、有名作品ではない中でも、しっかり受け入れられ高視聴率を得ていたよう

『アガサ・クリスティー・アワー』(1982) 「第四の男」「マグノリアの香り」 紹介と感想

第4話「第四の男」The Fourth Man 原作:アガサ・クリスティー「第四の男」(1925)    早川書房『死の猟犬』所収 脚本:ウィリアム・コーレット 演出:マイクル・シンプソン あらすじ エジンバラ行の夜行列車のコンパートメントの中に、医者のクラーク、弁護士のデュラン、宗教関係のパーフィットに、もう一人の男と4人が乗っていた。 クラークは、デュランとパーフィットに自身の公演のテーマである二重人格について話していた。 すると、四人目の男・新聞記者であるラウルが

『アガサ・クリスティー・アワー』(1982) 「ジェインの求職」「エドワード・ロビンソンは男なのだ」 紹介と感想

第9話「ジェインの求職」Jane in Search of a Job 原作:アガサ・クリスティー「ジェインの求職」(1924)    早川書房『リスタデール卿の謎』所収 脚本:ジェラルド・サヴォリー 演出:クリストファー・ホドソン あらすじ 仕事が見つからず家賃も払えないジェイン。 同じ建物に住むゲストから、タイムズの求人欄にジェインと同じような見た目・年頃でフランス語が堪能の女性を求める求人を紹介される。 試しに面接を受けてみると、多くの合格者を押しのけて見事合格し