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アガサクリスティーについて

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#ミス・マープル

ミス・マープル長編05『魔術の殺人』They Do It with Mirrors(1954)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー 田村隆一訳『魔術の殺人』早川書房, 1982 『カリブ海の秘密』を読んだので、続けてヘレン・ヘイズ主演2作目の原作『魔術の殺人』も十数年ぶりに再読しました。 あらすじ マープルは旧友のヴァン・ライドック夫人に頼まれ、夫人の妹でマープルも友人であるキャリイの邸宅ストニイゲイトを訪れた。 キャリイは3番目の夫・ルイスと共に非行少年の更生を図る事業に取り組んでいた。 どこか現実離れしたキャリイに、理想家のルイス、キャリイの娘ミルドレッド、キャリイの幼女だ

ミス・マープル長編09『カリブ海の秘密』The Caribbean Mystery(1964)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー 永井 淳訳『カリブ海の秘密』早川書房, 1977 あらすじ 少し前まで肺炎を患っていたマープルは、甥のレイモンドの後押しもあり、西インド諸島のサン・トレノにあるホテルに滞在していた。 ある日、宿泊客の一人であるパルグレイヴ少佐がマープル相手に殺人の話をしていると、マープルの後方を気にしてから殺人犯が写っているという写真を慌ててしまった。翌日、少佐が急死していまい、病死として処理される。 不審に思ったマープルが独自に捜査を開始すると、少佐が持っていた写

ヘレン・ヘイズ主演ミス・マープルシリーズについて(1983・1985)

1980年代にワーナー・ブラザーズ制作のテレビ映画として2作品が作られたヘレン・ヘイズ主演のアメリカ製ミス・マープル。 舞台となっている時代は制作当時の80年代になります。 ミステリーとしてあまり複雑ではない2作品が選ばれ、そこから更に原作よりミステリーとして緩く仕上げてあります。 ヘレン・ヘイズ演じるマープルは原作のマープル像とは違いますが、ヒクソン版以外の映像化も原作のマープル像とは違うマープルの方が多いためさほど気になりません。 2作品とも娯楽ミステリードラマとして充

アガサ・クリスティー『殺人は容易だ』ドラマ作品 紹介と感想

『殺人は容易だ』Murder Is Easy(1982/米) ワーナーが80年代に製作していたクリスティー原作テレビ映画シリーズの1本です。 時代は製作当時の80年代になっており、舞台はイギリスの村ですが、ルークはアメリカ人でコンピューターの専門家になっています。 ルークを事件に呼び込むことになるフラトン(原作のピンカートン)には、同じくワーナー製作版『カリブ海の秘密』『魔術の殺人』でミス・マープルを演じるヘレン・ヘイズが出演しています。 他にも、オリヴィア・デ・ハヴィ

『ゼロ時間へ』映画・ドラマ 紹介と感想

クリスティー原作の中でもメディアミックス展開されている媒体が多い作品の一つが『ゼロ時間へ』になります。BBC製作のミニシリーズで制作も予定されているため、一度整理したいと思いました。 今回は、映画とドラマを紹介します。 映画『ゼロ時間の謎 L'Heure zéro』(2007/仏/108分)  監督:パスカル・トマ  脚本:フランソワ・カヴィグリオリ 物語は原作と同じくトリーヴス弁護士がゼロ時間の考えを語る所から始まりますが、この場にバタイユ警視(原作のバトル警視)が居

マーガレット・ラザフォード主演 ミス・マープルシリーズ(1961~1964)作品紹介

マーガレット・ラザフォードがミス・マープルを演じたシリーズは全部で4本あります。 夜行特急の殺人(1961) 原作:『パディントン発4時50分』(1957) 寄宿舎の殺人(1963) 原作:『葬儀を終えて』(1953) 最も卑劣な殺人(1964) 原作:『マギンティ夫人は死んだ』(1952) 船上の殺人(1964) 原作:映画オリジナル作品 概要テーマ曲も爽快な楽しいコメディミステリーシリーズになります。 原作のマープルも活動的な面がありますが、その比じゃないくらい活動

マーガレット・ラザフォード主演ミス・マープルシリーズ1『夜行特急の殺人』(1961)紹介と感想

あらすじ パディントン発4時50分の列車に乗ったマープルは、別の路線を走っている列車とすれ違う際に、女性が首を絞められているの目撃する。 すぐに車掌や警察に訴えるが、誰にも信用してもらえないマープルは、旧知の司書・ストリンガーと一緒に調査を開始する。 列車の走行ルートにあたる線路沿いの情報を丹念に調べたマープルは、アカンソープ邸に目を付ける。 職業斡旋所へ行き、メイドとして屋敷へ潜入することにしたマープルは、気難しいアカンソープ氏と丁々発止のやり取りを繰り広げながら、調査

マーガレット・ラザフォード主演ミス・マープルシリーズ2『寄宿舎の殺人』(1963)紹介と感想

あらすじ 募金活動で家々を回っているマープルとストリンガー。 二人は偏屈で有名な金持ち・エンダビーの家を訪れると、当主のエンダビーが階段から転げ落ちる現場を目撃する。 エンダビー氏は亡くなり、側には土の塊が落ちていた。屋敷の奥から物音がするためマープルが確認へ行くと、エンダビー氏が死ぬほど嫌いな猫が飛び出してくる。 マープルは早速クラドック警部補へ相談へ行くが、真剣に取り合ってもらえない。 泥の塊はあぶみがねの跡だと検討をつけたマープルは、泥の塊と同じ形の石膏の塊を作り、

マーガレット・ラザフォード主演ミス・マープルシリーズ3『最も卑劣な殺人』(1964)紹介と感想

あらすじ マギンティ夫人が首を吊っている現場で現行犯逮捕された男ハロルド・テイラー。 その裁判で陪審員を務めていたマープルは、マギンティ夫人が死の当夜、胸にバラの花を挿していたことから、誰か別の人物を待っていたのではないかと疑問に思い、ハロルドが無罪である可能性を考える。 マープルはストリンガーと共に独自に調査を始め、遺品の中から所々が切り取られた新聞紙を発見する。新聞紙の文字を組み合わせると、「バラの名を変えてもバラ」という文章になり、マギンティ夫人の家の連絡先も記載さ

マーガレット・ラザフォード主演ミス・マープルシリーズ4『船上の殺人』(1964)紹介と感想

あらすじ 青少年更生センター理事会で委員を務めていた叔父が亡くなったため、代わりの委員に選ばれたマープル。この理事会は、マープルの祖父が創立したものだ。 その理事会で、委員の一人のフォーリーが亡くなった。マープルは、フォーリーの嗅ぎ煙草が、事件後に空になっているのに気づく。 警察に伝えてもいつも通り本気で相手にしてもらえないマープルは、ストリンガーの協力を得ながら自分で化学実験を行う。 紙の上に落ちていた嗅ぎ煙草からストリキニーネが検出されたことから、殺人であると判断した