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マーガレット・ラザフォード主演ミス・マープルシリーズ1『夜行特急の殺人』(1961)紹介と感想


あらすじ

パディントン発4時50分の列車に乗ったマープルは、別の路線を走っている列車とすれ違う際に、女性が首を絞められているの目撃する。
すぐに車掌や警察に訴えるが、誰にも信用してもらえないマープルは、旧知の司書・ストリンガーと一緒に調査を開始する。
列車の走行ルートにあたる線路沿いの情報を丹念に調べたマープルは、アカンソープ邸に目を付ける。
職業斡旋所へ行き、メイドとして屋敷へ潜入することにしたマープルは、気難しいアカンソープ氏と丁々発止のやり取りを繰り広げながら、調査を進めていく。
果たして死体はどこにあるのか、そしてその犯人は一体……。

紹介と感想

原作からいくつかの要素が省略され、人間関係にも若干の変更はありますが、物語の筋は原作に沿っています。

原作と違い、殺人を目撃するのはマープル自身になっており、潜入もマープルがするため、マギリカディ夫人とルーシー・アイルズバロウはいませんが、ルーシーという名のメイドがマープルの家で働いています。

ストリンガー氏とは仲良しであり、屋敷潜入前の老人コンビの事件調査パートで既に軽快な面白さがあります。
クラドック警部補は今回が初対面なので、まだマープルの凄さに気づいていなく、初めは軽く扱いますが、徐々に見直していく過程が楽しめます。

物語最初の、アナウンスからマープルが列車に乗り込み、車内で過ごす様子から殺人の発見までの流れるような展開で、しっかりと映画の世界に引き込んでくれます。

屋敷に潜入してからは、アカンソープ氏やアレクサンダーが良い味を出しています。
もちろん、調査の目くらましにゴルフをするマープルと、それに突っ込むアレクサンダーも観ることができます。

最後、犯人と一対一で向き合うマープルには、かっこよさが漂っています。
原作ではルーシーのお相手が気になる展開でしたが、今作にはマープルに想いを寄せる男性が出てきます。そして、そのオチは……。

原作より単純な筋になっていますが、気軽に楽しいコメディ風味のミステリー映画としてオススメです。

「マープルだ
 怖ろしいメードだよ」

クインパー医師にマープルを紹介するクラッケンソープ氏

映画概要

ミス・マープル/夜行特急の殺人 Murder She Said(1961)

原作:アガサ・クリスティー『パディントン発4時50分』(1957)
監督:ジョージ・ポロック
脚本:デービッド・パーサル/ジャック・セドン
製作:英国
時間:86分

  ジェーン・マープル/マーガレット・ラザフォード
 ジム・ストリンガー氏/ストリンガー・デイヴィス
   クラドック警部補/チャールズ・ティングウェル

    クインパー医師/アーサー・ケネディ
  エマ・アカンソープ/ミュリエル・パブロウ
    アカンソープ氏/ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス
      キダ―夫人/ジョーン・ヒクソン
    アレクサンダー/ロニー・レイモンド

同一原作の映像化

ミステリーの構造的にも物語的にも映像化しやすいためか、今作以降も多数の映像化があります。

ジョーン・ヒクソン主演シリーズ(英)
 第9話『パディントン発4時50分』(1987)

ジェラルディン・マクイーワン主演シリーズ(英)
 シーズン1 第3話『パディントン発4時50分』(2004)

アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル(日)
 第21話~第24話『パディントン発4時50分』(2005)

岸恵子 主演・馬淵淳子シリーズ(日)
 第1話『嘘をつく死体』(2006)

奥様は名探偵シリーズ(仏)
 第2弾『パディントン発4時50分』(2008)

天海祐希 主演・天乃瞳子(日)
 『パディントン発4時50分〜寝台特急殺人事件〜』(2018)

個人的にお勧めの映像化は、安定して面白いジョーン・ヒクソン版と、原作に沿ったストーリーながら、アニオリ少女・メイベルを主人公にアレックスやジェイムズとの交流を増やしている独自アレンジのアニメ版になります。

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