納得を誘う論理的な主張のためのチェックポイントとは。予算要求理由書の作り方を例に紹介。
公共団体などに勤務していると、年に何度か予算の要求をする機会があります。
不足分を補填したい時や、新たにプロジェクトを立ち上げたい時に、資金を確保するために予算要求をします。
査定の結果、承認されれば業務の幅が広がるでしょう。
しかし、簡単にことは運びません。
「経理課の〇〇課長、どうせまた承認してくれないんだろうな…..」
「どれだけ熱意をもって伝えても、自治体の✕✕さんには届かないだろうな….」
「この事業になじみのない▢▢さんでは、この予算の重要さを理解してくれないんじゃないか….」
この記事では、私たちの要求を判断する立場の人を「査定係」と呼ぶことにします。
査定係にも様々なタイプがいますが、まず否定的な視点で物事を捉える人も少なくありません。
この記事では、シビアな視点を持つ査定係に対しても、自分の主張を自信をもって伝えるためのチェックポイントを紹介します。
事実を論理的に説明するポイントを押さえれば、自信を持って主張できる。
営業職の方がセールスで結果を出すためには、お客様の気持ちや要望を汲み取り、ベストなサービスを提供する「傾聴力」が大事です。
お客様は、自身に向けられるサービスに感動して、商品を購入したり、成約を決断してくれます。
しかし、公共団体を相手にする要求、特にお金を要求する際には、感情を動かす接客対応・サービスよりも、確固たる事実が優先されます。
査定係の反応を伺って出方を変えてみるよりも、集めた事実を論理的に説明することで、あなたの主張は強化されていきます。
するとその主張を受けた側は、納得感を持ってGOサインを出してくれることが期待できるのです。
では、情報を論理的に文章化するにはどうすればよいのでしょうか。
ここからは、主張を論理的なものにするために有効な4つのチェックポイントを、予算要求における理由書の作成を例に紹介します。
①必要性
②(金額の)妥当性
③非代替性
④有用性(ベネフィット)
4つのポイントを押さえれば、冷徹な査定係を相手にしたときでも、自信を持って主張をすることができ、要求の成功率を高められます。
効果的な主張はどのようなものかを理解できれば、必要な情報の判別もできるようになるでしょう。
また仕事外においても、恋人とのデート先を決める際や、家族との食事のメニューを決める際など、あなたの要望を主張したい場面で役立てられるはずです。
①「必要性」で議論のテーブルに乗せてもらう
要求する予算を使って、実施したい事業や購入したい商品が必要なものであることを説明できているか確認しましょう。
査定係は「必要でない」と判断した要求を、吟味することなく却下してしまいます。
どれだけ安価で、どれだけ画期的でも、不必要なものを検討されません。
社会情勢の動きや団体が抱える問題点を提示しながら、好転するためには事業・商品が必要なことをアピールしましょう。
査定係に「これは検討の余地がある」と思わせるためには、事業・商品の必要性を訴えることが有効です。
②「金額の妥当性」で誠意を示す
予算を要求する際に、提示する金額があまりにも高額だと検討すらされません。
団体の規模感にもよりますが、いきなり数百万・数千万の要求をしても承認はされないでしょう。
財源が国民の税金でまかなわれる公共団体においては、特に門前払いを受ける可能性が高いです。
額面上の金額が大きいだけではなく、要求する金額の相場感があっていないことも査定係の機嫌を損ねる一因となります。
例えば、会議室でパソコン画面の投影をするためのプロジェクター代を要求するとします。
一般的な据え置きプロジェクターは有名メーカーの商品でも5万円~10万円が相場であるのに対して、20万円も30万円も要求してしまうと金額修正を求められてしまうでしょう。
一度でも査定係の気分を害してしまうと、金額修正をしてもよりシビアな視点で判断されてしまうリスクもあります。
業者から発行された見積書の金額をそのまま要求書に転記することは好ましくありません。
あなたが求める事業・商品には、どれだけの費用がかかるのが一般的なのかをしっかりと調査しましょう。
③「非代替性」で逃げさせない
査定係は提出された予算要求に対し、2つの検討をしています。
1つ目は「この要求を承認するか否か」、2つ目は「別の方法はないか」です。
より出費が少ない方法で同様の結果を得られないか、より安価で同様のパフォーマンスを得られる商品はないかの精査をしているのです。
あなたに対して協力的な査定係からなされる意見であれば、有益なアドバイスとして修正案の参考にできます。
しかし、個々の具体的なケースに当てはまる最良の意見を提示してくれる人ばかりではありません。
表面上の金額だけで判断をし、より安価な方法があるからという理由だけで差し戻しの判断を下す査定係もいます。
こういった懸念を未然に防ぐためにも、あなたの提示した方法は他に取って代われないことが出来ないことをアピールしましょう。
「この機能が備わっているあの商品でないと、計画が実行できない。」
「こんなサービスを独自に提供しているあの業者に委託すれば、出費以上の結果を見込める」
結果だけではなく、結果に至るまでの過程のも明確になるため、査定係の頭の中でもイメージがしやすくなります。
なぜその計画でないといけないか、なぜその商品でないといけないかを主張することは、査定係が逃げる判断をする余地をなくすのに役立ちます。
④「有用性」で少しだけ心を動かす
新たに立ち上げるプロジェクトで何をしたいか、商品を購入して何をするかといった「結果」を示すことは、査定係が要求を検討するのに大事な材料です。
もう一息、その先のベネフィットについて言及をすることも有効です。
ベネフィットとは、結果を得たその先の未来に起こる理想的な展望のことです。
例として、会議室に設置するプロジェクターを購入する費用を要求する場面で説明します。
集音マイク付きプロジェクターで、会議室の遠隔通信環境を整えられるという結果を主張するとします。結果の主張に留まらず、オンライン会議の実施により従業員の移動時間削減に繋がり、1人当たりの労働時間の短縮を見込めるという団体にとっての利益までアピールできるでしょう。
査定係は損失に対して非常に敏感ですが、利益に鈍感であることが多いです。しかし、提示された利点に対して全く無頓着であるとは限りません。
目先の結果だけでなく、その先の夢を思い描くことで好奇心を揺さぶることができるはずです。
事実を論理的に主張できれば、相手が誰でもYESを引き出せる
ここまで4つのポイントをご紹介しました。
挙げた4つのポイントを網羅できればなお良いですが、その分だけツッコミの余地を与えてしまうリスクもあります。
自信を持って主張できるだけの調査結果をもって、要求をすることが大事です。
相手のYESを引き出す主張をするためには、事実を論理的に提示することが必要です。
なぜなら、確固たる事実の関係性が提示されると、相手自身が納得しながら頭の中でイメージできるからです。
論理的な主張をするために、この記事で紹介した「必要性」「金額の妥当性」「非代替性」「有用性(ベネフィット)」を含めて主張できているかをチェックしてみましょう。
あなたが自信を持って主張をすることができれば、苦手な相手からも好意的な返答をもらうことができるはずです。
ぜひ試してみてください。
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*この記事を書いた人*
【名前】村路ハジメ(むらじはじめ)
【自己紹介】大学職員をしながらWebライターをしています。扱っている記事のテーマは、これまでの職務経験を活かした不動産関連やofficeソフト、趣味の温泉やツーリング、アウトドアが多いです。選り好みせずに、幅広いテーマの記事を書いていきたいと思っています。クラウドワークス・ランサーズでお仕事の依頼を募集しています。下記のリンクより、ご連絡をお待ちしております。過去の執筆実績はnote上のポートフォリオに掲載しております。ご興味を頂けましたらご覧いただければ幸いです。
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