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二つの手

ウクライナとロシアの戦争が終わらないまま1年。

私の家にはテレビがないので、自ら情報を探しに行かないと世界情勢もわからない。これほど情報が溢れている時代なのに、みんなが摂取したい情報は、残酷な異国の現実より、波風のないやさしい情報なのだろう。

もちろん私も同じで、頭の片隅にはあるけれど、遠い国のことより自分の日常を平和にすることに専念しようと何度も思った。

昨年、はじめて踏み出したチャリティ企画。

ありがたいことにたくさんの人に協力していただき、わずかだけれどユニセフを通じて寄付することができた。

私はとても暇なのだと思うけど、一つ疑問が浮かぶと眠っていても思考にうなされるほど考え込んでしまう人間だ。自分でも自分に疲れる。
悩む時間があるなら手を動かそうと思い、今年もチャリティ企画に踏み出す決意をした。

考え始めたのは2月だが、完成したのは5月。約2ヶ月半、戦争や貧困など、世の中で起きているいろんな問題について考え続けた日々だった。

昨年は「たくさんの平和のかたち」を絵にしたピンバッジを作ったのだが、今年は「大切なひとを想う窓」をテーマに額縁を作った。

なんとなく作れるかなと軽く考えていたけれど、いつも作っている置物とは別物で、陶磁器とネジなどの部品を組み合わせて作るという構造に苦戦し、何度も失敗してしまった。

そんな時想像したのは、自分と同じように絵を描いたり、ものづくりをして生きている異国の人々のことだった。

戦地では、心に大きな傷を負ってしまった人が大勢いるだろう。きっと手を動かすことすらできないだろう。
そんなことを考えると苦しくなって、自分が恵まれた環境で手を動かせていることが奇跡だと思った。早くみんなが普通の日常を取り戻せる日が来るよう、祈りを込めて作った。

最後に、伝えるための絵を。

完成した額縁は20枚。少ないけれど、同じものが他にはない窓たち。

今年もたくさんの人にご協力いただき、無事完売した。とてもありがたい。

今年の売上は国境なき医師団( https://www.msf.or.jp/ )と
ユニセフ( https://www.unicef.or.jp/ )に寄付をした。

寄付先は、自ら調べてオンラインで活動内容を聴いて、ここに届けようと思った2つ。

この件について発言し続けたことにより、優しい声もあったが思わぬ批判も届いたりして、心が折れそうになった。

自分にとっての善は、誰かにとっての悪でもあり、投稿を目にする度に不快に思った人もたくさんいるのだと思うと、怖くなった。
私も、正義って言葉は苦手だし、自分の正義を振りかざしてくる人も無理。

偽善と思う人もいるだろうし、批判もあって当然だと思う。想いを伝えるには、最低でも10年は必要だろう。そんなに続けられるわけないと思うかもしれないが、私は自分が続けられるであろうことだけは明確にわかる。

子供の頃に、絵を描く、ものをつくる人になると決めて、今日まで歩いてきたのだから。メンタルは弱いくせに、意志だけはとてつもなく強い。

年をとると、人は自分に二つの手があることに気づきます。
ひとつは自分を助ける手。そして、もうひとつは他人を助ける手。

オードリーヘップバーンが遺した言葉

20代の頃は、自分のことで精一杯で他人のことを考える余裕もなかったが、最近はこの言葉の意味がわかるようになってきた気がする。

大きな家も、高価な装飾品も自分には必要ない。
小さな部屋で、身の丈に合った生活でいい。
そんなものより平和と健康が何よりも尊いことを知っている。

一生、楽しく描いたりつくったりできればそれでいいと思っていたけれど、「伝えたい」という想いが新たに生まれた。

自分のために伝え続けてくれた人や、命を繋いでくれた先人がいるから、こんなふうに思えるようになったのだと思う。

今回の企画を通して、少しでも戦争など、私達が向き合わなければいけない未来について考えていただけたら嬉しい。他人事ではなく、未来を生きる子ども達のためにも。

続けていくこと、伝えていくこと。
私には、二つの手がある。

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