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【奇策なき勝利】第15節 大宮アルディージャ戦【雑感】

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どうでも良いんだけど、高木監督に「長崎さん」って言われると無性に寂しくなる長崎サポは少なくないはず。

スタメン

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長崎は前節から3人変更して加藤大、大竹、玉田がスタメン入りした。ここまで平日セットだった玉田が初めて週末セット入り。とはいえ今年は平日カップ戦と週末リーグ戦のターンオーバーではなく、リーグ戦の中でのターンオーバーなので平日に出ようが週末に出ようがあまり関係ない気もする。「大宮には玉田セットを当てた方が良い」と「新潟にはルアンセットを当てた方が良い」のどちらが優先されたのかは気になるところだが…

対する大宮は前節から4人変更。イッペイシノヅカ、三門、翁長、黒川が先発。(たぶん)現状でのベストメンバーを当てる形になった。昇格候補に挙げられることが多く、下馬評通り序盤戦は自動昇格圏内を維持していたが前節までの5連戦を2分3敗と大失速。やはり高木監督は夏に弱いのか…と長崎サポ的には妙に懐かしい気分になるが、それでもリーグ屈指の選手層を誇るだけに結局シーズン終盤には復活してそうな気がするので、叩けるうちに叩いておきたい相手ではある。

いつもの3-1-4-2と大宮の可変守備

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大宮の守備はてっきりWBが1列下がる5-4-1だと思っていたが蓋を開けると4-4-2のブロックを組んで守っていた。愛媛に敗れた前節も4-4-2に取り組んでおり、ここは高木監督の明確な意思がありそう。どんな狙いがあるのか深掘りする時間がないが、たぶんリトリート時も前線に2枚残してカウンターをスムーズにしたい、イッペイをサイドハーフの位置に残す事で攻撃に力を割きたい、前からプレスを嵌めたいという思惑はありそうだった。高木式3-4-2-1から4-4-2の可変で体力的に一番貧乏くじを引くのは左ウィングバックだが、そこに永遠に走れるS2機関(最近エヴァンゲリオン見返した)を搭載した翁長がいるから成り立つシステムな気もする。

--システムを使い分けてくる大宮が相手でしたが、4バックは想定内だったのでしょうか。僕は4バックで来るだろうなと。前節、ものすごく機能的になった大宮。前からのプレッシャーを掛けてきたというのを見たときに、仕掛けてくるのは4バックだろうなとは思った。
(手倉森監督)

長崎的には5-4-1で固く守られる方が嫌だった気もするが、手倉森監督は大宮が4-4-2で守ってくると想定していたようだ。いつものように4-4-2迎撃用の3-1-4-2(厳密には3-1-4-1-1)で大宮を攻略していく。噛みあわせ的に浮いてくるウィングバックを起点に攻め込む長崎、序盤は亀川を起点に攻撃を試みたがイッペイ・西村の守備に手を焼く。特にイッペイはゾーンを埋める守備に苦手意識がありそうだが、対峙した相手を抜かせない守備は上手かった。左が行き詰った所で右サイドに振ってみた所、意外と毎熊・大竹でシュートまで行けたことで大宮に圧力を掛けることが出来た。

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前節から引き続き近い距離感を保ってダイレクトパスを2~3本繋ぎ、テンポを変える攻撃でゴールに迫る長崎。24分には毎熊がインナーラップ(サイドバックが内側を駆け上がるランニング)で抜け出してクロス、亀川が合わせたヘディングは惜しくも枠外。

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幅を使って攻撃することで大宮の2トップが対応しきれない&全体のスライドが遅れてブロックが若干広がったと見るやハーフスペース(大竹・澤田が立ってる所)に縦パスを通しさらにチャンスを作る。30分、角田→大竹→畑と繋いで大竹のシュートはDFにブロックされたが攻撃のバリエーションを見せる。

この日の長崎は大宮相手に奇策を用意したわけではなく、いつも通りの可変3−1−4−2システムで4−4−2ブロックを攻略していった。序盤戦レビューでも書いた気がするが、3−1−4−2は4−4−2ブロックを崩すために考案されたとも言われており、要するに「こうか は ばつぐん だ」ということなのだ。構造上浮いてくるウィングバックを起点に、序盤は攻めあぐんだものの徐々に幅と深さを活かして大宮を追い詰めていく。

大宮に呼吸させない長崎のプレス

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ボールを奪い返した大宮はシンプルに戸島に当てる or 裏に出すパスを狙っていた。序盤戦はカウンターを含めて何度か決定機を作られかけるが、最後のクオリティに助けられた場面があった。特にイッペイシノヅカはいつもの怖さが見られず、明らかに調子を落としているように見えた。単に夏場が苦手なのか、連敗のプレッシャーを感じているのか…大宮の質的優位を担うだけに、イッペイシノヅカの不調と大宮の不調は無関係に見えなかった。

飲水タイム明けから長崎はプレスの強度を上げる。これも良い時のパターンで、3バックでビルドアップをする大宮に対して長崎のサイドハーフとサイドバックが1列上がることで同数プレスを掛けていく。大宮は長崎のプレスを上手く外すことができずボールロスト or 望みの薄いクリアを頻発、セカンドボールを回収されて波状攻撃を受ける事になった

これなぁ…何とかはね返し続けるんだけどセカンドボールを延々と拾われてサンドバック化していく流れ、高木長崎では良く見た光景だよなぁ…

長崎のボール保持は機能的だったが、それより攻守の切り替えの速さで相手を上回れたのが大きな勝因の一つだった。この強度のプレスを連戦の中でどこまで維持できるか?というのが今後の鍵になるのは間違いなさそうだ。

ボールを奪った瞬間での切り替えの速さというのは長崎さんのほうがあったかもしれない。
(髙木監督)

大宮のボール保持

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大宮のボール保持は4-4-2ブロックから3-4-2-1に可変する。まずは右サイドのイッペイを起点にしながら、可変の割を喰って遅れて上がってくる翁長が逆サイドで浮いている形を作り出す。大宮の強みの1つはウィングバックの強烈さだが、この日は横スライドの速さと亀川・毎熊の対人守備で決壊を防いだ。

大宮としては戸島の強さ、黒川の速さを上手く活かせるシーンは限定的だった。ちゃんと見てないので詳しい理由は分からないが、やっぱりファンマが抜けたのは痛かったのかも。イバがフィットしたら間違いなく順位は上がってくるはず。

大宮の違和感を突いた秋野

大宮はここまで5−4−1のブロックを組んで守ってきたチーム。最終ラインが5人か4人かというのは結構大きな違いで、大雑把に言えば1人で受け持つ横幅が長くなる事になる。突然1選手がカバーできる横幅が長くなるはずはないので、11人全員が一定の距離を保ちつつボールの位置に連動して前後左右にスライドする必要がある(逆に言えば5−4−1ブロックは最終ラインに5人のディフェンダーが並ぶので横方向のスライドをあまりしなくて良いというメリットがある)

いわゆる4−4−2の凸型ブロックを組むゾーンディフェンスという守り方は、サッカーにおける守備戦術としては基本的な考えになる。が、日本人選手にはまだまだ浸透しきっていないと言われている。その理由は…何かで読んだ気がするけど忘れたので割愛。

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50分、長崎は先制に成功する。後半立ち上がりから左サイドを狙ったのか分からないが、二見や秋野がドリブルで持ち上がるシーンが増える。どうしても浮いてしまうウィングバックに対する意識が強かったイッペイは、後半立ち上がりから自分の担当ゾーンを離れて亀川をケアする場面が見られる。本来凸型で構える必要がある4−4−2だが、イッペイがSB化することで5−3−2のような形になる。これが監督の指示だったのか独断だったのかは分からない。

大宮から見て右サイドの守備が曖昧になり出したのを察知したのか、秋野は左サイド奥にロングパスを放る。果たして秋野の狙い通りだったのか、イッペイと西村の対応が被り、何でもないボールをクリアミスする。近くにいた河本が反応するより一歩早く亀川がボールをつつき畑にパス、フリーの畑は思い切り脚を振り切ってシュート、ゴールに突き刺した。

2トップのプレスが掛からない、マーカーに釣られてゾーンを離れるというゾーンディフェンスあるあるのミスで失点という授業料を払うことになった大宮。正直、4−4−2の練度を上げるのはこれからという印象だった。少なくとも4−4−2殺しの3−1−4−2を仕込まれたチームを相手に実践したのは、かなり挑戦的だったように思う。

水戸戦の反省を活かしたゲームコントロール

先制点を挙げた長崎にさらに追い風が吹いたのは63分、加藤大が後ろにすらしたボールを河本が目測を誤りクリアし損ね、畑に身体を入れ替えられて抜け出された河面が後ろから手を掛けてファール。これがDOGSO(決定的な得点機会阻止)と判定されて河面はレッドカードで一発退場、追いかける大宮は10人となった。

高木監督は夏の移籍で獲得し、先週合流したばかりのイバを投入。J2では屈指のゴールゲッターであるイバ、最前線に立ってるだけで何かやられそうな雰囲気が醸し出されるからすごい。残り時間30分程度、イバが投入された事を考えれば1点差はセーフティリードと呼ぶにはあまりに頼りない。追加点をとって楽になりたいと考えても不思議じゃない局面に思えたが、長崎は思ったより冷静だった。

長崎は高確率でチャンスに繋がる場面では攻めの姿勢を見せたが、徹底してリスクのあるプレーを避けた。それでもイバを起点に何度か攻め込まれたが、終わってみれば後半の被シュートを1本に抑えてみせた。数的優位になってからは守備のたびに徳重から「ノーファーーール!!!」というコーチングもかかっており、コーナーキックはおろかフリーキックもほとんど与えなかった。

前節水戸戦では先制しながら前半のアディショナルタイムだけで2失点して逆転を許した長崎、後半で再逆転できたから良かったものの自動昇格を目指すチームとしてはあまりに稚拙なゲーム運びとなってしまった。ハーフタイムには「後始末をしてこい」と監督に檄を飛ばされたらしく、反省の残る内容となった。この大宮戦では反省が活きたのか、数的優位になってからもほとんど綻びを見せることなくゲームを終わらせることに成功した。

結局ああいう形で先制点を取った中で今度は相手に退場者が出て、しっかり1-0でコントロールしてゲームを進めるという手を選んだ。手堅く、ずる賢く取った勝点3だなと。(中略)手堅く勝ったことがチームのコントロール力を評価できるゲームだったなと思います。
(手倉森監督)

おわりに

これまで一度も勝ったことがなかった大宮に勝利、厳しい5連戦のスタートを白星発進することができた意義は大きい。難しすぎるアウェイ3連戦も「できれば2勝、最悪でも1勝」というハードルに下げることができた。

次節は好調の新潟。この3連勝で好調だった攻撃、守備、トランジションの局面で相手を上回れるか注目したい。

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