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【長崎は昇格できるのか?】第28節 愛媛戦&第29節 大宮戦【メモ】

新潟→金沢→甲府のアウェイ3連戦は辛かった。万全を期して望んだものの獲得した勝点は2、あまりに報われない結果だった。思い返せばあの本間至恩の同点弾がケチのつき始めで、結局長崎は8戦勝利から見放されて順位を大きく下げた。

そして迎えた魔の10月、6試合中5試合がアウェイという鬼畜な日程。しかも磐田→北九州→愛媛→大宮という地理的にも繋げづらい4連戦を含んでおり、どう考えても今シーズン最大の正念場だった。結果的に10月に獲得した勝点は11となり、自動昇格圏の目安と言われる「試合数×2」を目標とすれば十分な結果を残せた。どん底の9月から比較すれば、立て直したと表現して差し支えないだろう。

第28節 愛媛FC戦

スタメン

愛媛との前回対戦は7月上旬の第4節。愛媛をシュート2本に抑えてスタッツ上は完勝だったが、実際は左サイドから何度か決定的なクロスを入れられていたし、決勝点は愛媛GKのミスキックをイバルボが攫ってPKを奪取したものだった。

流動的なポジションチェンジ、長短のパスを織り混ぜて幅と奥行きを活かす…愛媛は典型的なボール保持に強みのあるチームだが、その愛媛に対して手倉森長崎はボール保持+即時奪還を選択した。北九州戦同様、5-4-1でスペースを埋めてカウンター狙いの可能性もあるかと思ったが、手倉森監督の選択が正解だった。

5-4-1でスペースを埋める愛媛に対して秋野を下げない2-2-4-2でビルドアップをする長崎。カイオがいつもより高い位置でタクトを振る役を担った。好調の氣田を中心に愛媛の泣き所(ハーフスペース)を根気強く殴り続けた。

ボールを失った時は一番近くにいる選手が走って寄ってファーストディフェンス、愛媛の選手が嫌がってロングボールを蹴るまで圧力を掛けた。極力、自陣に撤退しないという選択はリスクもあるが愛媛には「こうか は ばつぐん だ」だった。なかなかフリーな選手を見つけられない、ポジションを移動する暇もない、1トップに入った有田はボールを収められるポストプレーヤータイプではない…愛媛は攻め手を見つけられないまま前半を耐え続けたが、結局は後半立ち上がりに毎熊のミドルシュートを叩き込まれた。

悪癖再び

今シーズンの長崎にはいくつか解決するべき課題があるが、その中の一つがアウェイでリードした時の振る舞いだ。新潟戦も、金沢戦も、松本戦も、町田戦も…え?こんなに?…4試合もアウェイで先制しておきながら追いつかれ、勝点を12も失ってきた。どうしても先制した後にホッと一息してしまう悪癖が、五度(ごたび)露見した。

やっとの思いで先制したわずか1分後、(たぶん)山崎の糸を弾くようなロングフィードを長沼が受けて、毎熊を交わしてクロス、ほとんど仕事ができなかった有田が頭で同点弾を決めてみせた。2本のパスで得点した愛媛、絡んだ3人の能力を褒めるべき得点でもあるが、長崎側からすると「ああまたか」という失点だった。

結局は氣田がPKを決め、愛媛が4-4-2に変えた隙を見逃さず名倉がループシュートを決め、仕上げに玉田が直接FKをねじ込み、4-1の快勝となった。なったが、この試合で最もフォーカスされるべきなのは51:00〜52:50の約2分間だろう。継続して前から行くべきだったのか、一度後ろでブロックを構えるのか、この場面でも富樫がやや躊躇しているように見える。ピッチ上の意思決定をどうするのか、何度も高い授業料を払っているはずだが、まだ履修できていない事を証明してしまった。

第29節 大宮戦

スタメン

大宮は今、野戦病院と化している。正式に発表されている以外でもイバ、イッペイシノズカ、クリャイッチなど主力級を含む10人以上が離脱しているようだ。7人座れるベンチにはわずか5人だけ、フィールドプレーヤーは4人だけという苦しすぎる台所事情。それでも黒川、翁長、笠原など出場している選手のクオリティはJ2屈指なわけで、ぜひ勝ちたいが簡単ではない試合となった。確実に運動量が落ちるであろう後半80分過ぎが勝負かなと個人的には思っていたが…

元をたどれば1つの問題

大宮は5-4-1でスペースを埋める守備→ボールを奪ったら縦に速い攻撃がベースになる。これぞ高木琢也というチームである。ただファンマ役を期待したハスキッチはあまり無理が効くタイプではなく、イバを補強したものの相次ぐ怪我人…あまりに苦しいシーズンである。

それでも5-4で構えるブロックは相当に固く、磐田戦や甲府戦で露呈したように攻めあぐねる展開が続いた。セットされた相手を崩し切るのは相当難しく、得点するには相手が守備陣形を整える前に攻撃する=ショートカウンターで仕留める以外に道はなさそうだった。しかし大宮の帰陣は相当に速く、少しでもパスがずれる、横パスが一本入るだけでもう大宮の9人の選手は定位置に戻っている。

この試合でも良い位置でボールを奪う機会はあった。集計はしていないが5回は前向きでボールを奪っており、そのいずれもシュートに繋がらなかった。徳島戦以降「縦に速い攻撃」を標語に強化月間に入っている長崎、氣田を中心に攻め込むものの最後のパスが繋がらない。結局枠内シュートは0本、攻め込んでいるようで攻めきれなかった。

まだまだ途上の縦に速い攻撃(=ショートカウンター)、相手が帰陣する前に素早く攻め込むという型、これがなかなか実装できないのが5-4-1相手に手こずる原因の一つと言える。さらに言えばカウンターが打てるようになればアウェイでリードした時の振る舞いも落ち着きがでそうなものである。去年は戦術的な拠り所がない中で徐々に瓦解していき、今年はまず「秋野を中心としたボール保持」を仕込んだ。再現性を持って相手を押し込めるようにはなったが、副作用として縦の推進力が出せなくなった。ボール保持とカウンターのバランス、現在は苦心しているが開幕当初と比較すると随分マシになってきた感もある。

終盤にはイバルボを投入、寄り切ろうという魂胆だったかもしれないが完全に当てが外れる。コロナ中断明けから明らかにコンディションを落とし続けているイバルボ、再開当初こそ無双したものの直近の試合ではあからさまにボディコンタクトを嫌がっている。栃木戦でイバルボを0.5列下げるという解が出たかと思いきや、手倉森監督は3-3-4の1トップで起用。満身創痍の大宮を仕留めるのは80分以降かと思いきや、イバルボ投入で隙を見せた長崎はあわや失点という場面を作られる始末。センターバックを背負うでも、ボールを引き出すでも、守備をするわけでもないイバルボは3度のボールロストと少しのチャンスメイクだけでインパクトは残せなかった。

長崎は昇格できるのか?

今にして思えばシーズンプレビューで書いたことが割と当たってたなと思う今日この頃。アウェイ3連戦+アウェイ4連戦という罰ゲームのような日程を潜り抜けて自動昇格件と勝点差5の3位で30節を迎えられたのは評価されるべきだろう。そのおかげで残り13試合中9試合がホームというアドバンテージを得て、新加入選手が馴染める日程的な余裕を作ることが出来た。

今後の13試合は一巡目の結果で見ると5勝6分2敗となり、勝ちきれなかった相手が多く、上積みを証明するにはうってつけの相手ばかりだ。懸念があるとすれば、プレーオフも降格もない特殊なレギュレーションのため既に明確な目標を失ったチームが半数以上いるという点だ。思えば長崎の2019年、2016年のシーズン終盤はひどい有様で、目標がないとモチベーションを維持するのはプロであっても難しい。まして過密日程は続くわけで、福岡・徳島の勢いが止まらない可能性もある。

長崎はもう単純に勝ち続けるしかない。順位表に一喜一憂せず、勝点3を積み上げ続けるだけと割り切り、一戦一戦に挑むしかない。90分フル出場が厳しい角田の代わりにアンダー世代の代表経験もある庄司、コンディションが一向に上がらないイバルボに代わってJ1でも屈指のセンターフォワードだったエジガルジュニオの補強に成功した。左サイドバック、左センターバックの手薄感は否めないがJ2では望外の戦力を有することになった。例年、シーズン終盤に問題となる練習場の芝張替え問題もアウェイ4連戦中に解決済み。準備は万端…のはず。

残り13戦で成長の余地があるとすれば盤石のゲーム運び。先制した試合をいかにコントロールするか、リードした試合をいかに締めるか。大事になるのはショートカウンターの精度。ここへきて調子を上げてきた氣田・名倉も期待できる。まずは難敵・水戸をきっちり撃破することで、逆転昇格への道が見えてくるはず。

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