債権者の訪問

父の会社の経営が上手くいかず

ある日、帰ってくると母から相談された。

債権者の日本人がパソコンを家まで取りに行く来ることになっていて怖いから立ち会ってほしいとのことだった。

あまり怖いと言う感じがアメリカ生活をしていく中でなくなっていた私。

'いいよ。いればいいんでしょ。'と軽く返事した。

でも母は浮かない顔で、'Cくんにもいてもらうこと出来ない?'と聞いてきた。

母は家族以外を家に入れることに少し抵抗感がある人だったので、そんなことを言われてびっくりした。

'え?聞いてみるけど、、、多分いいよって言うと思う'と言うと、母は少しだけホッとして'ありがとう'と言った。

私はすぐに彼に立ち会ってもらえないかお願いすると、こころ良く返事をくれた。

債権者の男性は以前にも母しかいない時間に

自宅に来ていて母は怖い思いをしたと言う。

そして女性だけしかいないと分かっているその債権者は

次は何をしてくるかわからない勢いだと聞いていた。

当日、彼は私の部屋にあったPCのコンセントを全て外し

債権者がくるのを母と私達の3人で待った。

インターホンが鳴り、私が出た。

すると債権者の男性は私の隣に立っていた彼に

驚いた表情でひるんだ。

'こんにちわ。ちょっと待ってくださいね。'と私が笑顔で言っても彼に気を取られている様でだいぶ動揺していた債権者の男性。

その隙に彼は私の部屋からPCを持ってきた。

そして、債権者の男性に落ちついたトーンで

'外まで運びましょうか?'聞いた。

たじろいだ債権者はどもりながら

'No thanks'と言って彼からPCを受け取ると、よろけながら去っていった。

母は債権者と一言も交わすことなく終わった。

この債権者はまさか外人男性がいるとは思いもしなかったのだろう。

彼はいかついわけでも、高圧的な表情でもない。

むしろひょろひょろの優しい眼の持ち主。

そんな彼にびっくりした債権者の表情は

私達を笑わせてくれた。

何よりも彼のおかげで私は何一つ不安になることなく堂々と対処できた。

しかしながら正直なところ彼がいなくても対処する自信が当時の私にはあった。

でも、彼を頼った事によって、彼から守られた感が生まれた。

彼も満更でもない様子だった。


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