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勉強やる気スイッチの押し方

以前、宿題を溜めるのは学力の問題ではないという記事で、毎日の宿題を着実に進めるためには、与えられた宿題を対象期間に割り振りスケジューリングする能力と誘惑を絶って勉強へと気持ちを切り替える能力が必要であり、それは学力の問題ではないので、親が積極的にスケジューリングを手伝ってあげて、モチベーションが管理し易いように環境づくりにも配慮をしましょうということを書きました。

今回は、そのうちの後者、モチベーション管理について、特に心が折れちゃったケースの対処法を中心にご紹介していきたいと思います。

勉強はその気にさせるまでが大変

当たり前ではありますが、家庭学習のための教材は、能動的に学習に向かうことを前提に設計されています。子どもを学習に向かわせるためにこれといった有効なツールが無いことは、ドラえもんがのび太くんを使って既に証明しています。学校現場においても、先生に対して圧倒的に生徒の数の方が多いわけですから、先生が子どもを常に惹きつけているというよりは、たくさんの子どもが先生に合わせているというのが正しい現実理解だと思います。

世の中に溢れる学習支援のツールや教材、サービスは、子どもの理性に働きかけ、子どもが能動的に学習に取り組む気持ちになってはじめて効力を発揮する仕掛けとなっており、そこに気持ちを持っていくためのメソッドについては体系的にまとまったものがあまりありません。つまりそこは昔も今も各家庭での取り組みに委ねられているのです。

家庭学習で教えるべきはやる気コントロール

家庭での取り組みに委ねられていると表現すると押し付けられている感がありますが、考え方を変えると、学習に対するモチベーションのコントロールというのは、マンツーマンでその時々の子どもの状態、特性に合わせてタイミングよく行う必要があり、それは差し詰め学習版ライザップのようなもので、ライザップが高額であるように、それは本来とても贅沢で効果的なものだと我が家では考えており、問題の解き方を教えることよりも重要視しています。

動機・機会・環境

動機と機会と環境、この3つは企業内で不正が発生する際の構成要素と言われています。しかし、子どものやる気スイッチをONにする際にも、全く同じ3要素が必要になります。
我が家では、以前からこの3要素を重視しており、
動機付けについてはこちらの記事で、

機会や環境についてはこちらの記事で、

取り組みを紹介してきました。

上記のように、普段の生活の中から学習へと導くためのアプローチについては、すでにいくつか紹介してきましたので、今回は「一度やる気になったのに、気持ちが続かなくなった」という心が折れてしまったパターンのスイッチの押し方について、ご紹介したいと思います。

自分で気持ちを切り替えるまで、ひたすら待つ

これは上の娘の心が折れた時の対処法で、苦手な宿題が出たり、宿題の量が多すぎて戦意を喪失した時のお話しです。
娘は、やる気がなくなったとは言え、責任感というか道徳心が強いので、投げ出して遊ぶ訳でもなく、最初は机に座ったまま「やりたくない」と「やらなきゃ」を戦わせていることがよくあります。ただ、そのまましばらくすると気持ちのやり場がなくなり、鉛筆をトントンし出したり、机を蹴ったりして苛立ちを表現するようになり、それがどんどんエスカレートして、大声で文句を言ったり、いろんなものに八つ当たりするようになります。

そんな時我が家では、自分で気持ちの切り替えが出来るまでひたらすら放置します。突き放す訳でもなく、適度に距離とり、そっとしておきます。過去には大事なものを破いたりもしましたがそんな時もいちいち怒ったり口出したりしません。周りの住民に騒いでいる音が響いて迷惑じゃないかとかいろいろ心配になりますが、とにかく辛抱強く気持ちが切り替わるのを待ちます。

ここで気をつけないといけないのが、痺れを切らして、なんとか収めようと口を挟むことです。特に1番言ってはいけないのが、

「いつまでそうやってるの!」「いつになったら終わるの!」

と、こちらの事情をぶつけることです。
いつまでそうやっているかなんて子ども自身も分かりません。その気持ちの切り替え方が分からないから苛立っているのです。

あまりにも八つ当たりしている時間が長くて、普段の生活リズムやその日の予定に支障をきたすようなら、むしろ共感しながら

「大変だよね。気が済むまでやっていいよ。」

と優しく言ってあげてください。
時間が無いのに気が済むまでやっていいと言ったら逆効果ではないかと思うかもしれませんが、やめなさいと言われると反発したくなりますが、続けていいよと言われると拍子抜けすることがあります。子どもだっていつまでも怒っていられませんから途中からは半分終わり方を探していたりします。
その時々の状況に合わせて、1時間でも2時間でも許す限りの時間を与えて、落ち着いた頃に、お菓子を食べたり、お茶を飲んだりといったブレイクタイムに誘ってあげると良いです。「食べ終わったら、また怒る続きをやったらいいから」ぐらいの気持ちで何かホッと一息つける環境を用意してあげると効果的です。

責任感の強い子は自分で納得しないと切り替えられないことがあるので、論理的に説明したり、感情的に励ましたりするよりも、自分で消化する時間を与えてあげた方が終息が早い可能性があります。ただ毎回続くようであれば「どんなに人やモノに八つ当たりしても、目の前のものは無くならないし、逃げても追いかけてくる。だから、どんなに時間が掛かっても自分で気持ちを切り替えてやるしかない。」ということを論理的に説明してあげることも必要です。その後、似たようなことが起きても「気持ちの整理には時間が掛かっても頭では理解出来ている」というレベルにまでするためです。

大人だって、仕事に行き詰まったら、タバコを吸ったり、コーヒーを飲んだり、散歩をしたり、音楽を聴いたりしてリフレッシュする訳ですから、子どもだって煮詰まってイライラしたら音楽を聴いたり、お茶を飲んだり、絵を書いたりして気分転換を行えばいいと思います。
概ね子どもがイライラしている時は、そういった自分なりのリフレッシュ方法が見つかっていないケースが多いので、親御さんが自らのリフレッシュ方法を教えてあげれば解決するものもあると思います。

そして、散々葛藤して、なんとか自分で気持ちを切り替えることが出来た暁には、気持ちを切り替えたことを思いっきり褒めてあげましょう。そうやって自分なりの気持ちの切り替え方法を見つけられるように気長に見守ってあげることができれば、切り替えまでの時間も少しづつ短くなっていくと思います。

立ち向かう必要性をユーモアを交えて伝える

次は気分屋な下の息子のケースです。
息子は、娘と違って行き詰まると大胆に放り出して、別の遊びを始めます。
あまり罪悪感がありません。
それはそれで良い面もあるのですが、毎日最低限のことをこなせるようにしてあげたいと考えています。ですので、下の子が「やりたくない」とへそを曲げた時には、我が家ではこんな風に声がけしています。

私「◯◯くん、ドリルやりたくないか?」
息子「やりたくない!」
私「そうかぁ、じゃあドリルの前に座って目を閉じて、神様に僕の代わりに終わらせて下さいって一生懸命10回お願いして目を開けてごらん?」
息子「ブツブツブツ…」
息子「(目を開く)パッ!」

まぁ当たり前ですが、目を開いたところで現実は変わっていません。子どもも「だから何?」みたいな反応になりますが、大事なことは「魔法は無い」ということを分からせることです。
「お願いが足りないんじゃないの?」なんて言って茶化したりもしつつも、さっとシリアスな表情に切り替えて「今やらなくてもいいけど、◯◯くんがやらないといつまで経っても無くならないよ」という現実を突きつけます。やらなくてもいい理由を一緒に考えた上で、一つ一つ消去していくというやり方もあります。とにかく進まないと減らないという事実をいろんな方法で伝えて上げることが、逃げ切れるという淡い期待を打ち砕いて、自分でスイッチを入れる手助けになるのではと思います。

やるべきことを洗い出して整理する

子どもの特性に応じて2パターン紹介しましたが、両方のパターンに共通して必要となるのが、そうやって少しやる気になった時に、その種火を持続的な炎にするためのテクニックです。

まずは、やるべきことをリストで書き出させます(親御さんが代わりにまとめるでも良いです)。子どもがやる気をなくす原因の一つに、実際に必要な作業以上にイメージを膨らませてしまっているということがあります。
書き出してみて「そこまでしなくて良いんじゃない?」とか「これは今じゃなくてもいいね。」など、必要最低限の内容に絞って上げることで、子どもの気持ちが滑り出しやすくなることがあります。

終わりと進捗を可視化する

その次のステップとしては、作業の終わりを明記したり、進捗を可視化してあげます。
学校からもらった宿題のリストや上に書いたやることリストに対して、終わったものからそれに打ち消し線を引くように指示します。打ち消し線を引くことに抵抗があるようでしたら、チェックマークを付けるでも良いです。プリントやドリルのページ内でも同様に終わったものから印を付けさせます。個人的には塗り潰すなど、子ども本人がやっつけた感を得られるやり方をお勧めします。
そうすることで、少しでも前に進めば、目の前のものがどんどん少なくなっていくことをビジュアルで認識出来ます。得手してやる気のない時は、塊のままでやるかやらないかを迷っていたりします。そうではなく、一つ一つに分解して消し込んでいくことで、着実にボリュームは減るのだということが実感出来れば、ペンを走らせる意欲も湧いてきます。
具体的には、ドリル1日1ページというノルマだとしたら、1ページの終わりに「ここまで」という線を引いてあげて下さい。不思議なもので終わりのラインを書き込むことでやる範囲が狭まったような錯覚があり、頑張ろうという気持ちの支援になります。終わりのラインに「ゴール!」と書いて上げると、さらに意欲が湧くかもしれません。
漢字ドリルの宿題であれば、一問終わるごとに一緒に消し込みをして「これで50問の問題が49問になったね。もう一問やれば48問になってどんどん終わりが見えてくるね。」と言葉に出して説明して上げると、これも当たり前のことを言っているだけなのですが、悶々と悩んでいるより気持ちが楽になります。
そうやって進む先を明らかにして、少しづつでも前に進むことで、完了タスクが増え、残りの処理が減っていく変化を実感出来るようになります。

心の防波堤を守りきる

我が家では、学習能力を高めること以上に学習に向かうための能力を重視しています。そのためには、辛抱強く気持ちが切り替わるのを待ったり、進め方のアドバイスをしたり、さらには動機付けのために「終わったら◯◯していい」とか「終わったら◯◯あげる」といったプレゼントを用意して、出来るだけ優しく子どもに寄り添うようにしています。
しかし、親として譲らないラインも設定しています。それは「期限があるものは期限までに必ずやりきる」ということです。
体調的な問題を除いては、どんなに夜遅くなろうともその日にやるべきことは必ず終わらせるようにしており、ここに例外を作らないようにしています。
この親としての一貫した姿勢が、子どもが最後の最後に「やなきゃいけない」という気持ちに切り替えるための心の防波堤になると考えています。
親としても時々子どもに付き合うのに疲れて「もういいから明日やりなさい。」と言いたくなります。そして、翌日「昨日、「今日で良いよ」って言ってあげたんだから、今日は必ずやりなさい。」といったところで、むしろ昨日例外を一度認めているので、子どもの心の防波堤を壊れてしまっており、気持ちを切り替えるための踏ん張りが効かなくなってしまいます。

言い方を変えると、「一度決めたリミットは絶対」という設定の厳しさがあるからこそ、それ以上子どもを追い詰める必要がなく、やりたくないという気持ちに共感しながら「でも一緒に少しづつ頑張ろう」と優しく励まして上げることができるのです。

それは学校の先生がやりたくてもできないこと

会社員である私の教員免許は、もはや履歴書の隙間を埋めるぐらいの価値しかありませんが、それでも、もし今教員をやっていたとすれば、学校という枠組みの中で子ども一人一人をマネジメントしていくことの限界を感じているのではないかと思います。
特に今回のコロナ騒動のように、学校に登校が出来ないとなると、教師としてしてあげられることは宿題を出すことぐらいしかありません。オンライン授業という選択肢もありますが、それですら個々の生徒の自立心ありきであって、机に向かえなかった子は取りこぼすことになります。
親の本音としては、学校に行かせることでそれなりに学んで成長して帰ってきてくれることが望ましく、わざわざ家で先生の代わりに子どもを机に向かわせるのは面倒でしかないのですが、これが学校では出来ないことで、親だけがやってあげられる価値のあるサービスだとしたら、少しは前向きになれたりしませんか?
ましてやそれが社会を生き抜いていく上で勉強を教えることよりも重要なことだとしたら、本気で向き合う価値があると思いませんか?
まずは大人が、「勉強やる気スイッチを押すためのスイッチ」を自らONにして、子供と接することができれば、私が書いたやり方なんかよりもっといいサポートの仕方が見つかるのではないかと思います。

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