《5》181020~21:ケンケン山
くもり
21日に行く予定をしていたが、前日に山登りのイベントがあったため泊まりで調査に行くことになった。
ケンケン山に登るのは初めてだった。
9月末の台風の影響で倒木と土砂によって道が塞がれてしまったため、森林組合が入り綺麗に整備したとのことだった。
裏の方がかなり崩れてしまったとクルージングで沖島を一周ぐるっと乗せて周ってもらった時に見せてもらった。
山も手入れをしなければ崩れていってしまう。
Dの木という(根がDの形に曲がっていてちょっとした見ものらしい)木には倒木のせいで辿り着けなくなったらしい。
残念。もう見れないのだろうか。
島に到着し、案内してくださる方と一緒に山へ入る。
コミュニティセンター向かって左の突き当たりに登山口がある。
黒くて大きい臆病な犬に死ぬほど吠えられる。正直怖い。
入ってすぐ階段を登った先に並ぶお墓。
こんな急な階段を登ったところにお墓参りをしに行くのか。
管理をするのも大変だ。
御供物を猪に荒らされたりなどはしないだろうか。
聞くところによると猪が対岸から湖を泳いで渡ってきて、沖島に上陸しこの山に住み着いているらしい。
鉢合わせたら怖いなーと思いながら登った。
柔らかい土には地面を掘り返したような跡があった。
どうやら猪の足跡らしい。獣の匂いはしなかったから直近に通ったところではなさそうだった。
聞いていた通り倒木が多い。
運動不足の体には結構険しい、息が切れる。
途中お化けみたいな木があったり、
きのこの群れを見つけたり。
あと石がでかい、というかもはや岩。
見晴らし広場に出た。曇っていたので絶景!というわけではなかったけど、対岸がよく見える。
くもりの湖も水墨画のようで綺麗である。
途中道の端の地面を覆うように野苺がたくさん生えていた。
今からちょっと先までが旬らしい。
なんだかすごく美味しそうに見えた。ジャムにしたら美味しいだろうか。
うーん、でも酸っぱそう。
酸っぱいから猪も食べなくて生き残ってるのかな。
猪は反対側の千円畑の方に降りて行って野菜を食べ散らかすらしい。
ちゃんと何が美味しいか分かってるのがすごい。
猪と島民の激しい攻防があるらしく、今度ちゃんと見に行ってみたい。
頂上に着いたら他の登山客が休憩していた。
お菓子をたくさんいただいて少しお喋りした。
ちょっとしたハイキングにはいいボリュームの山だそうだ。
***
イベントのない、普通の日に泊まるのは初めてだ。
遅めのお昼ご飯で漁業会館で婦人会の方達のカレーを食べた。
夏祭りを思い出した。
天気が良くなってきたが風が強い。
ザザーと一定のリズムで波が浜の石を洗う音を聞いていると海をみているような気がしてくる。
実際湖面に波が立っていて、海のように見えた。
フラフラと夜の写真を撮りながら歩いていたら、酒屋さんの前を通りがかり、中にいるおじさんたちに呼ばれた。
「何してんの、外寒いで、はよ中入り〜」
酒屋さんで漁師さんたち3〜4人で飲んでいるようだった。
「ほら、飲め」と、紙コップに焼酎をもりもりに注がれる。
モロコの話になり、持ってきたると、家から獲れたモロコを持ってきてくださり、その場で調理していただいた。
琵琶マスとフナのお刺身もたらふくご馳走になった。
こ、これが漁師メシ、、?
豪快に酒のつまみになっていく魚たちはたまらなく美味しく、お酒と漁の楽しい話で夜が更けていった。
***
22日 晴天
11月に湖魚祭りがあるらしく、その出し物の一つとして島娘の体験を企画しているらしい。
かつて沖島の女性が作業服として着用されていたモンペを着て記念撮影が撮れるというものだった。
そのモンペを実際に島のお母さん方に声をかけてしまってあったものを寄付していただいたみたいで、お試しにちょっと着てみないかと声をかけていただいた。
早速着させてもらう。
田舎出身の2人、似合ってしまうわ。
記念に写真を撮っていると、近くを通りがかったお母さんが着方を直してくれる。
袖は作業がしやすいように不思議な形で作られている。
モンペ姿でちょこっと島内を歩いてみた。
服に染み付く記憶は人を笑顔にさせるようだ。
すれ違う島民は少し驚いたような表情を見せ、自然と笑顔になり「何をやってんの〜」「懐かしいわあ」と話しかけてくれる。
いつもシャイであまり話してくれない漁師さんたちもニコニコしてくれ、話を聞いてみると、幼い頃見ていた母の記憶を思い出したとのことだった。
漁に出て、畑に出て、台所に立って、子供をあやす。
きっと私くらいの歳からそうやって生きてきたであろう、誰より働き者の島育ちの女性たちの重みをなんだかずっしり感じた。
***
ねこと遊びながら弁財天の方に向かって歩く。
9月の秋祭りは奥津嶋神社から厳島神社の方へ歩いていったそうだ。
水辺には葦(あし・よし)が群生していた。
1年前に葦のドームをラ・コリーナで見たのを思い出す。
風がビュウとふくと、サワサワと葉が擦れる音が心地よかった。
葦の音、波の音、トンビの鳴き声。
しばらくぼうっと聞いてしまう。
音シリーズでいうと、石を踏む音を聞いてみようと思って、防波堤(降りると胸ほどの高さ)を超え浜におりた。
大きい石がゴロゴロ転がっている。
踏んで歩いてもらうと、カシャカシャと角が擦れる音がする。
思っていたよりも軽い音がした。
歩いてみると、うっかり転ぼうもんなら足を捻りそうな不安定さ。
今回は泊まりだったこともあってのんびり周った。
とんでもなく穏やかに時間が過ぎていく、不思議な時間の流れだった。
次回は11月4日の湖魚祭りにいく予定。
おっちゃんたちの誰に聞いても、何するんかようわからんと返された謎の祭り。ちょっと楽しみである。
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この回の写真を見直していて一番グッときた写真
なんで撮ったのかわからないし
なんで道の脇に放置されているのか分からないし
なんで島にあるのか分からない古看板。
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