素材でみる、島の暮らし展
2 年の夏、高木と2 人で沖島の暮らしについての展示を行いました。
「このリサーチの内容を展示の形式にして視覚的にも感覚的にもわかりやすいものにしていこう」
こんな話は割とリサーチのはじめの段階から出ていました。
(わたしが大学でアトリエとして借りている部屋に、毎月行くリサーチの内容を随時更新しながら展示をしていくというような提案。実際そんな余裕は全くなく、知らない間にその話は消滅。壁を塗り展示什器とかもちゃんと考えてたのが余計に笑える。)
(↑塗ったアトリエ。湖に浸かっているようで心地が良かったなぁ。青い床そのままに卒業してごめんなさい。)
わたしは毎期末に学校で”研究報告会”という名の展示の機会があるのでどうあがいても半期に一回形にせねばなりませんでした。
しかしそれは大学の公式のものである以上わたし個人の名前でしかできないものだったので、いつか2 人の名前でちゃんと展示の形にしたいという思いがありました。
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名芸でやるのか、ギャラリーを借りるのか、沖島でやるのか。
どんな人に来てもらいたいのか、何を見せたいのか。
迷いに迷いました。
実際にギャラリーへ見学に行き、時間をかけて考えていきました。
そして1 年生のおわり頃からゆるりと準備を始め、展示の時期は1 年間のリサーチが終わった頃、お互いの学校のスケジュールを見て7 月13 日から15 日の3日間で開催することにしました。
島の人に見てもらうのがメインではなく、まずは自分たちの周辺の人(建築関係の方や普段お世話になっている人たち)に見てもらいたい。という思いから名古屋で開催することに決め、「暮らし」と「それを構成する素材」にフォーカスした展示内容に決めました。
沖島の雰囲気に合うようなるべく手作り感のある温かい展示にしたいという思いがあり(もちろんコストの面も)、真っ白なギャラリーを借りるのをやめ、前の研究室のつながりでご縁があった古民家を展示場所として利用させていただくことにしました。
結果的にですが、この選択は良かったと思います。
2 ヶ月から1 ヶ月半前くらいからしっかりと内容を詰めていき、1 ヶ月前に告知、会期前1 週間を準備期間に当てることにしました。
展示にはたくさんの人に来て欲しいけど、ただ見てもらうだけじゃなくて、会話ができるような展示にしたい、1 人1 人にちゃんと自分たちの口で説明したいと考えていました。
展示会場の規則などから常に人が出入りできる状況ではなかったこともあり、1 日を2 部制にして、1 部あたりの定員を5 名に設定しました。
高木の得意分野「広報」の力もあり、なんとかほぼ定員で当日を迎えることができました。(↓フライヤー)
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色んなことが決まったら、あとはひたすらに作るのみ。
「素材」という切り口でどう島の生活や私たちのリサーチを見せるのか。
せっかくなのでなるべく住宅を利用した展示にしようということで使われなくなった障子枠や和紙を利用し展示什器を作りました。
お互いの意見をぶつけながら、今まで「こんなことしたいね」ととりとめもなく話していたようなアイデアを徐々に形にしていきました。
足跡のつく床や、建具に文字を書いていくこと、食べ物の写真、調査に持って行っていったもの、私たちそれぞれの視点で見た沖島の風景、漁網、自然のパレット、外壁ばかりを集めたもの、沖島の石、和紙のスクリーンを使った上映室。
次から次へとウキウキするような構想が浮かびました。
建具を洗い、木材を加工し、床を張り、どうにか実現できるものはとにかくやってみることにしました。
仕方のないことだけど1 週間で仕上げるのはやっぱりすごくキツかったです。当日の明け方に動画がやっと仕上がり、チェックを終え、ソファで泥のように眠り、朝残りの印刷に走る。
ありがたいことに夜遅くまで後輩に手伝ってもらいながら、なんとか開催することができました。
ギリッギリ過ぎて、思い出しただけで寒気がしました。
それでも夜中にコンビニへおやつを買いに行ったり、住人の方が作ってくれたご飯をみんなで食べたり。
一瞬でも卒業制作の時期に戻ったような苦しくも楽しい制作期間でした。
お手伝いいただいたひぐちん、高瀬、あきほちゃん。迷惑ばかりかけてごめんね、本当にありがとう。
高木とは後半お互い譲れないところがぶつかったり、思うようにコミュニケーションが取れずにすれ違い気味だったけれど、後から思い出すとまぁそれも愛おしい思い出ですね。
とにかくお金がなく、できることは全部自分たちでやるという逞しさで当初考えていたよりも手作り感あふれる展示会場になりましたが、どこか私たちらしい不完全さが心地よくもありました。
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当日は三連休での開催だったのもあり、全部で30名ほどの来場がありました。基本的には個人的な招待制で、SNS でも宣伝してたからか初めて会う人もきてくれました。Twitter で私たちのことを知っていてくれたらしく、SNS 活用の重要性を感じました。広がりは、本当に嬉しい。
ひとまず自由に見てもらって、その後はなるべく全員と会話ができるような時間を取れるようにしました。
何を感じたのか、どこに疑問を持ったのか来場者から直接お話が聞けたのはこの規模感だったのと実家にいるようなこの家の落ち着いた空気感のおかげだったなと思います。
展示を見終わってもすぐに帰らずそのうち畳に座りながら、自分の知っている地域のことや今考えていること、自分の地元の話をポツリポツリ話し始めてくれるのはすごく嬉しくて、私たちが一方的に与える情報ではなく、展示を通してそのような「場」を作れたのはやりたかったことにも近かったのかなと思います。
なんだか方々にご迷惑をかけつつの開催だったなぁと今更ですが、思います。
お家を貸してくださった大家さん、シェアハウスのみなさん、お手伝い頂いた後輩、時間外でも見たいと来場してくださった方々、集合時間や場所やルールを守って見てくださった来場者の皆さん、沖島から足を運んでくださった住人の方。
本当にありがとうございました。
書いていただいたアンケートの回答が愛おしいものばかりで、今でも時々大事に見返します。
本当に、本当にありがとうございました。
以下展示風景です。
今でも、この展示の蚊取り線香の匂い、映像の音、床を踏む感触、暑い部屋、突然の雨、夜のひっそりとした温かさを思い出します。
最後に、展示最終日の撤収前の疲れ切った2人で終わります。
いただいたサポートは心を優しく保つためののお茶代にします。