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傑作!と言いたかった...映画「ラストナイト・イン・ソーホー」

「ラストナイト・イン・ソーホー」を配信で鑑賞しました。
で、感想を書いてみようと思います。

いや、もう前半は素晴らしい。ワオ!って感じです。
文句なしの☆5つ。
なのに、後半になってなぜか物語が痩せていく印象。
後半は☆3つ。

ということで全体の印象は、あいだをとって☆4つ。

あ~、惜しい、もったいない、あと一歩という気持ちが残ります。
「傑作!」と言いたかったのに。。。

でも、どうしてこういう気持ちになったんだろう?
理由は何だろう?
ちょっと書きながら考えてみたいと思います。

はじめに

簡単な情報です。

2021年 イギリス
監督 エドガー・ライト
出演 トーマシン・マッケンジー(エロイーズ)
   アニヤ・テイラー=ジョイ(サンディ)

ファッションデザイナーを夢見て、ロンドンのソーホーにあるデザイン学校に入学したエロイーズは、寮生活になじめずアパートで一人暮らしを始める。
ある夜、夢の中できらびやかな1960年代のソーホーで歌手を目指す美しい女性サンディに出会い、それ以降夜ごと夢の中でサンディを追いかけるようになる。
次第に身体も感覚もサンディとシンクロし、夢の中での体験が現実世界にも影響を与え、充実した毎日を送れるようになったエロイーズ。
夢の中で何度も60年代ソーホーに繰り出すようになった彼女だったが、ある日、サンディが殺されるところを目撃してしまう…
映画.comより

ジャンルは何?

まずジャンルです。
映画.comだと「タイムリープ・ホラー」とあり、ウィキペディアには「サイコロジカルホラー」とあります。ヤフー映画だと「サイコスリラー」。
なんだか分かったような分からないような言葉が並ぶのですが、全部外れてはいません。

ちなみに公式サイトではどう形容しているかというと、「タイムリープ・サイコ・ホラー」。

これらの言葉を総合すると、ホラーという言葉が多くて「怖そうだな」という印象です。自分はそう思いました。
でもね、これがちょっとミスリードな気がします。

じゃあどういうジャンルなのかというと、この作品は「ミステリー」です。
あらすじの終わりの方にあるように、物語の中盤に殺人事件が起きて、後半はその犯人さがし・動機の解明といった、もろミステリーの展開になります。

でも自分はミステリー映画だとは思わずに観ていたので、後半の王道ミステリー展開に悪い意味で肩すかしを食いました。
「あれ、そういう話だったっけ」って感じです。

殺人事件が分かった後から、エロイーズが殺された人たちの亡霊に追い詰められていくのですが(そこがホラーといえばホラー)、その描写も一辺倒だし、なにより映画(シナリオ)の目的が犯人さがしに絞られてしまって、急速に物語が「痩せて」いきました。

エロイーズが警察に相談したり、学校の図書館で新聞のデータベースから事件を調べたりと、そういう行動をとるのはまあ「分かる」のですが、夢の中でタイムリープする超常現象を認める映画なのに、現実的過ぎというか普通過ぎというか古典的というか。

きっとそのバランス感覚がエドガー監督のいいところなんだろうなとは思うのだけど、ちょっと真面目過ぎるんだよなあ。(その真面目な人柄は好感が持てるのだけど)

前半はほんと素晴らしい

前半が素晴らしいと書きましたが、「田舎から都会のソーホーに出てくる主人公」、「鏡の中に映る母親の霊」、「デザイン学校の寮や友達になじめず雰囲気のあるアパートで一人暮らしを始める」、「夢の中で憧れの60年代にタイムリープ」と、青春ものからSFまでどんな物語でもいけそうな仕掛けの乱れ打ち。
それがセンスの良い音楽にのって過不足なく描かれていきます。
鏡やネオンの光を効果的に使った映像も洒落てて素敵です。

さらに、60年代をただノスタルジックに描くのではなく、「女性の性被害」という今日性のある社会テーマをあぶりだし、それをきちんと告発している。
(夢の中のサンディは歌手になりたいとショウビジネス界でもがくのですが、中年のおじさんたちにいいようにあしらわれ、性搾取の対象になってしまう。)
主人公のエロイーズだけでなく、観ている観客もハッとさせられたと思います。現在と過去がつながったというか。

そして、エロイーズは夢破れたサンディをなんとか助けようと努力する。
その「時空を超えてのシスターフッド」という側面も、SF好きにはグッとくるものがありました。

ほんとに「傑作!」と言いたい。
でもなあ、痩せちゃうんだよなあ。

結論として

結論として、じゃあどうすれば物語が「痩せ」なかったのか。

①もっと違う終わり方があった気がする。
 繰り返しになるけど、前半が素晴らしかっただけに、ミステリーとして話を決着すべきではなかった。事件を解決するというより、もっと「感じる」映画でもよかったのではないか。

②逆にミステリー要素をはじめから強調する。
 個人的にパッと思いついたのは、できるだけ早い段階で殺人(を想起させるような)のシーンを挿入するべきだったのでは、ということ。
はっきり見せる必要は全くなくて、「血だらけのサンディ」を一瞬でも見せれば、ミステリー要素の伏線になったし、ホラー要素も強まったのでは。

「ミステリー」と認識してこの作品を振り返れば、とてもよくできている。
犯人は序盤から出てくるし、怪しい人物は犯人じゃないし、意外な人物が真犯人だったりと、もろもろきっちり定石を踏んでいる。
自分がこの映画を定義するなら「タイムリープ・ミステリー」。

ただまあミステリーという言葉を宣伝文句に入れなかった理由(戦略ともいう)はなんとなく分かる。
仮に「タイムリープ・ミステリー」と言われても、なんじゃらほいって感じだもんなあ。
「ホラー」という言葉の方が押し出しが強いし、特に若い世代には訴求力がある。ホラー要素はあるにはあるし。

う~ん、一体どうすればよかったんだああああああ。
でもいい映画でした。うんうん。

総合評価 ☆☆☆☆

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆  →まあまあ。
☆☆   →う~ん、ちょっと。。。
☆    →ガーン!

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