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【いいところを語る映画評】「ドライブ・マイ・カー」

「ドライブ・マイ・カー」を映画館で鑑賞しました。で、映画評を書いてみようと思います。

ただこの作品は映画評を書くのが難しい。ひとことで言えば、「豊か」で「開かれている」作品なので、人によってグッとくるところは違うと思うし、だから切り口もいろいろある。自分もどうやって書こうか悩んでしまった。

「う~ん、何をとっかかりに書けばいいんだろう」と思い悩んでいたときにふと浮かんだのが、「3時間の上映時間にも関わらず、時間を感じずに観られたのはどうしてだろう?」ということ。そのことを考えながら書いてみようと思います。

一歩間違えればヘンテコなものに

この映画の原作は短編小説である。小説を原作として映画を作るときには、いろいろ作り変える必要がある。一番のポイントはストーリーの作り変え。原作のどのエピソードを削ってどのエピソードを残すか、もしくはさらに肉付けするか。この作品は原作が短編だから肉付けするエピソードが多い。

今回、映画のなかで多くの時間を使って描かれる多言語演劇の創作プロセスは原作にはない。他にもいろいろ原作にないエピソードが足されている。それらが濱口監督にとって親密で切実な題材ってことは分かるのだけれど、とりたてて観客の興味を引くものかと言われれば、正直微妙なものが多い。そういう意味で、一歩間違えればとてもヘンテコな作品になる可能性もあったと思う。

音楽的要素に満ちた作品

でもそうならずに済んだのは、この作品が表面的なストーリーの良し悪しだけで成立しているわけではないからではないか。それが長い上映時間を感じさせないものになっている理由だと思う。

この作品は、とても「音楽的」な作品だと感じた。
主人公・家福の「魂の救済」という志高いテーマがあり、多言語演劇の創作プロセスというしっかりしたメロディがある。ドライバーのみさきという伴奏者がストーリーに厚みをもたらし、高槻という不協和音が緊張感を与える。
加えて、車に乗っているときや車が走っているシーンの編集が見事で、そのテンポが心地よい。
また台詞のリズムも良くて、原作者・村上春樹氏の文体を音としてうまく立ち上げている。

「テーマ」「メロディ」「テンポ」「リズム」、これらの音楽的要素がストーリーを下支えしているのである。その結果、長い上映時間に耐えうる作品になったのではないかと思う。

それにしても、短編から3時間の映画を作る濱口監督の咀嚼力はすごいなあ。

総合評価 ☆☆☆☆

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆  →まあまあ。
☆☆   →う~ん、ちょっと。。。
☆    →ガーン!

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