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映画感想文「めまい」ヒッチコック作品

NHKBSで放送されていた「めまい」を録画して鑑賞しました。
感想を書いてみようと思います。

この作品はずいぶん前(うん十年前)に観たことがあって、その時は「これがヒッチコックの最高傑作のひとつかあ」とありがたがって鑑賞したのだけど、いまいちのれなかったんですよね。
自分は、「北北西に進路をとれ」や「サイコ」「裏窓」「鳥」の方が面白いと思ったのでございます。
でもそれなりに時間がたって、それなりに歳を重ねたので、「今観たら違うかもしれない」と思い再鑑賞しました。

※今作品にご興味ある方はネタバレなしで観た方が楽しめます。
ここで退避してくださいませ。

1958年 アメリカ
監督 アルフレッド・ヒッチコック

刑事ジョン・ファーガソンは、逃走する犯人を追撃中に屋根から落ちそうになる。そんな自分を助けようとした同僚が誤って転落死してしまったことにショックを受けたジョンは、高いところに立つとめまいに襲われる高所恐怖症になってしまう。そのことが原因で警察を辞めたジョンの前に、ある日、旧友のエルスターが現れる。エルスターは自分の妻マデリンの素行を調査してほしいと依頼。マデリンは曾祖母の亡霊にとり憑かれ、不審な行動を繰り返しているという。ジョンはマデリンの尾行を開始するが、そんな彼の見ている前でマデリンは入水自殺を図り……。

映画.comより

結論からいうと、今回もやっぱりそこまでのれなかった。。。
自分はまだお子さまなのかもしれません。
というかもう少し理由を探ってみると、この作品はお話を追うというより、ヒッチコックさんの文体を味わうものなのかなと。
自分はお話を追いすぎてたのかもしれません。
まあサスペンスだから、どうしてもお話を追っちゃうのだけど。

登場人物はほぼ2人。主人公の元刑事とヒロイン。
それで2時間強の作品を持たせる。
65年前の作品で、テンポも今どきの映画と較べるとスロー。
でも最後まで観れちゃう。それだけ演出に引き付けるものがあるってことですよね。すごいっす。
そういうところが最高傑作のひとつと言われている理由なのかもしれません。

よくよく考えると、この作品はサスペンスものであると同時に、ラブストーリーなんです。
しかも切ないラブストーリー。
ネタバレになってしまうのですが、元刑事がヒロインを好きになっている時は、ヒロインは元刑事を騙している。
いったん騙し終わった後に元刑事とヒロインは再度出会いまた恋愛関係になるのですが、うまくいくのも束の間、元刑事はひょんなことから自分が騙されていたことに気付く。

サスペンスの脚本としては大雑把な部分があるのだけど、ラブストーリーとしてみると、好き同士の男女の想いがすれ違っていて、切ない。
小説で例えると、主語の視点が変わる構成のミステリーのような。
ただヒッチコックさんはご自身の作風をよく分かっているから、ラブストーリーを前面に押し出さない。あくまでもサスペンス映画として作っている。
でも今作の2時間の中でサスペンスフルなシーンはほんの一瞬で、あとは主役の男女が恋に落ちるシーンを描いている。
今振り返ると、好き同士であるにも関わらず2人が一緒にいた時間はたいていその裏に思惑があって、幸せな時間は短かったよなあと。

なので、「大人の切ない恋愛であるにも関わらずサスペンス(犯罪もの)なので甘くない作品」と捉えると、当時としてはなかなか稀な味つけだったのかなと思いました。

自分はヒロインのキム・ノバクさんのクールさが好きです。
ヒッチコックさんはキムさんのことを気に入ってなかったらしいけど、キムさんの優しそうじゃない(もっといえば冷たい)感じが、自分はこの作品に合ってると思う。
そのクールなキムさんが犯罪に加担し、でもその騙した相手を好きになってしまうってとこにグッとくるんですよね。

ヒッチコックさんが女性に対して倒錯した感情を抱いていたのは有名だけど、女性への幻想を大事に持ちながら一方で本性を暴き立てたい、みたいな倒錯した感情がよくあらわれてる作品なのかもしれません。
そこら辺のヒッチさん特有の倒錯感情がいまいち共感できないからのれないのかも。
江戸川乱歩のジメッとした倒錯感は好きなのだけど。

総合評価 ☆☆☆(☆5が最高)

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