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映画感想文「ある男」

映画館で「ある男」を鑑賞しました。
感想を書いてみようと思います。

この作品は昨秋の公開だったのだけど、日本アカデミー賞受賞ということで、凱旋上映していました。
「凱旋上映」、ステキな響きですね。

まあネーミングはともかく、劇場で観られるのは映画ファンとしては嬉しい。
新作に限らず過去作品も映画館で観られる取り組みがもっと加速するといいですよね。
大人の事情うんぬんやコストの問題もあると思うのだけど、いろんな垣根を取っ払って、選択肢が広がるといいなあ。

2022年 日本
監督 石川慶

弁護士の城戸は、かつての依頼者・里枝から、亡くなった夫・大祐の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受ける。里枝は離婚を経験後に子どもを連れて故郷へ帰り、やがて出会った大祐と再婚、新たに生まれた子どもと4人で幸せな家庭を築いていたが、大祐は不慮の事故で帰らぬ人となった。ところが、長年疎遠になっていた大祐の兄が、遺影に写っているのは大祐ではないと話したことから、愛したはずの夫が全くの別人だったことが判明したのだ。城戸は男の正体を追う中で様々な人物と出会い、驚くべき真実に近づいていく。
映画.comより

事故で亡くなった夫は他人の名前を騙っていた。じゃあ夫は一体誰だったのか?
名前が分からないので、亡き夫を仮にXとして、Xの人生を追いかけるーー
というのがこの映画の発端です。

こう書くとミステリーっぽい感じですよね。
まあミステリー要素がないってこともないのだけど、ミステリー色はそこまで強くありません。
ミステリー要素で物語の間口を広げてはいるけど、その部分はすんなり話が進んだ印象です。
強烈なフック(引っ掛け)はなかったかな。

それよりも、「レッテル」「ラベリング」「バイアス」「自分が見たいようにしか見ない」などの人の見方の裏側にあるものをあぶりだすドラマだと思いました。
そして、そういうものに対抗するにはどうすればいいのだろう?と問うている気がします。

自分が思ったのは、そういう差別や偏見につながるものの見方を防ぐものは、嘘いつわりのない「真情」のようなものなのかなあ、と。

全体的に明るい映画ではないのだけど、印象に残っているのは、Xと妻の馴れ初めのところだったり、息子が「Xがいなくて寂しい、父親(X)に話したいことがたくさんある」と母親に語るとこだったり。

暗めのトーンの作中でも、いわゆるいいシーンが印象に残ってるんですよね。
妻がXを好きになって、車中でキスするシーンもよかった。
シンプルに「好き」っていう真情があふれてました。

そういう混ざり気のない気持ちが本当の相手を見つめるためには必要なのかなと。

「在日」や「ヘイトスピーチ」の問題だったりを扱っている作品ですが、なんだろう、とても繊細で優しい映画だと感じました。

最初にミステリーじゃない、と書きましたが、ミステリーだと犯人(この作品に犯人はいませんが)の動機につながる過去の境遇なりを同情的に描いたりしますよね。
そこに観客は感情移入するのですが、この作品はXの過去に対してそういう描き方をしてません。
「かわいそう」っていう誘導をできるだけ排している。
ここは新鮮だし、良いところだと思いました。

それよりも、Xの生き方に寄り添う方に力点を置いている。
そういう意味で優しい映画だなと。

だって、「ある男」は自分にもあてはまるかもしれない。
ひょんなことから、自分もXになるかもしれない。
そんなことは誰にも分からないのだから。

総合評価 ☆☆☆

☆☆☆☆☆→すごい。うなっちゃう!世界を見る目がちょっと変わる。
☆☆☆☆ →面白い。センス・好みが合う。
☆☆☆  →まあまあ。
☆☆   →う~ん、ちょっと。。。
☆    →ガーン!

                 ***

今年は今日時点(3月の終わり)で、映画館で6本鑑賞。
1カ月2本のペース。
昨年は1年間で6本だったので、だいぶペースが上がっています。
ほんとはこのくらいのペースで観たいのだけど、まあどうなることやら。
できれば維持したいっす。

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