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【番外】高知県と映画

『追い風ヨーソロ!』は全編にわたって高知県が舞台となる映画となります。縁あってこのような作品を製作するにあたり、高知が舞台となっている映画にはどのようなものがあるのか、簡単にではありますが調べてみました。
以下、文中において敬称は略させていただきました。

とても全ては挙げきれませんのでごく一部ですが
パーマネント野ばら(2010年 監=吉田大八 出=菅野美穂)』
県庁おもてなし課(2013年 監=三宅喜重 出=錦戸亮)』
竜とそばかすの姫(2021年 監=細田守 出=中村佳穂)』
フランキー堺と中居正広の主演で2度映画化され、テレビドラマ版では所ジョージが主演を務めた『私は貝になりたい(脚=橋本忍)』も高知が舞台ですね。
高知競馬で勝てないことで話題となったハルウララを題材とした映画も2本作られていて、しかもそのひとつはアメリカ製作です。

なお『パーマネント野ばら』にはこのnote記事でも紹介し、『追い風ヨーソロ!』にも出演くださっている(プラス主題歌・挿入歌・上映館館長)小松秀吉さんも出演されています。

(2023年6月22日追記)小松さん『県庁おもてなし課』にも出ておられるそうです。さすがの顔の広さ。

高知県が出身地である作家、宮尾登美子の作品も多く
鬼龍院花子の生涯(1982年 監=五社英雄 出=仲代達矢)』
(1985年 監=五社英雄 出=緒形拳)』
寒椿(1992年 監=降籏康男 出=西田敏行)』など。

シリーズ物では『釣りバカ日誌』の第14作「お遍路大パニック!」で、『トラック野郎』の第10作(最終作)「故郷特急便」で高知が舞台となっています。

大心劇場客席。中下段の4枚以外はすべて高知県が舞台の作品

いや、けっこうありますね。
海に川に山にと画になるロケーションが多い。これは今回、我々も高知ロケをしていて実感しました。食べ物やお酒も美味しいので、それを目的に高知でロケをしたいという映画人も少なくなかったと思います。

しかし、お気づきでしょうか。これだけ作品を並べていますが、あの名前が無いことに。日本全国を股に掛けているはずの邦画界2大スーパースター。
そう、寅さんとゴジラです。
どちらもあれだけ多くの作品があって、日本中を歩き回っているのに、まさか高知を訪れていないとは……。

まずは寅さんから詳しく見ていきましょう。

『男はつらいよ』は山田洋次原作・監督(一部除く)による大ヒットシリーズ。渥美清演じる車寅次郎、寅さんと各作品のマドンナとの恋模様を旅先の風景の中に描く人情喜劇です。もともとはテレビドラマとして制作され、その最終回で寅さんがハブに噛まれて死ぬという結末に抗議が殺到、復活して映画化されるという、この顛末からしてなかなかにドラマ。

映画としては48作に加え、渥美清の死後にも2本が公開されています。正月映画として長く定着したことで「寅さん」は冬の季語にもなっているというのだからすごいことです。

寅さんは本当に高知を訪れていないのか、テレビドラマシリーズと渥美清死後の2作を除く48作で確認します。
48作もあれば全都道府県に1回ずつ行って、どこかひとつ気に入った所におまけで行ける。高知へも足を運んでいそうなものですがね。

登場回数が多いのは北海道、長野県、静岡県、長崎県などで、いずれも5回以上ロケ地となっているようです。もちろん柴又のある東京都は全作品で登場しています。
四国は第19作「寅次郎と殿様」で愛媛県に訪れているのが最初と思われます。そして、肝心の高知県ですが……無い。まさかとは思ったけれど本当に無かった。
寅さんはオーストリアのウィーンにも足を運んでいます(41作「寅次郎心の旅路」)。またアメリカのアリゾナにも行っている(24作「寅次郎春の夢」)というのに、高知へは足を踏み入れていなかった。ウィーンもいいけどその前に高知だろうが、と愚痴も言いたくなります。

では寅さんは高知をまったく見向きもしなかったのか、というとそうでもないのです。
じつは第49作として『男はつらいよ 寅次郎花へんろ』という作品が企画されていました。タイトルからしていかにも高知。マドンナには田中裕子が配され準備もかなり進んでいました。しかし、渥美清が亡くなったことで制作は中止、幻の作品となってしまいました。

現地の人はこの作品をそれは心待ちにしていたようです。土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の伊尾木駅には「いおきトラオ君」という寅さんをモチーフとしたキャラクターがいます。また、駅の近くには寅さん地蔵も建てられている。作品になっていないのに、ちょっとした寅さんの聖地となっています。
ここまで応援されていた作品があった。名作がもう1本生まれるはずだった。あらためて名優の死が口惜しく思われます。

伊尾木駅のいおきトラオくん。金網ごしですみません


寅さんに続いてはゴジラです。ゴジラも本当に高知へ上陸していないのか。
結論を先に言ってしまいますが、訪れていません。

それどころか、これに関しては対象をもっと大きくしても成り立ってしまいます。
すなわち「高知」を「四国」に、さらに「ゴジラ」を「怪獣」に置き換えられてしまう。
つまり、怪獣たちは一度も四国を襲っていない、のです。

北海道といえば『ゴジラVSキングギドラ』(1991年)での2大怪獣の第一ラウンドになりましたし『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一髪』(2008年)も印象深い。
九州ですと『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994年)の決戦地ですし、『空の大怪獣ラドン』(1956年)の阿蘇は絶対に外せません。
日本海側がすぐに思い出せなかったのですが、若狭が『ゴジラVSビオランテ』(1989年)で自衛隊、次いでビオランテとの熱い名勝負の舞台となっていました。

ところが四国となると、何も思い浮かばない。
特撮、というくくりで見ると仮面ライダーで高知が舞台になったことはあるのですが、怪獣モノで探すと、本当に何も出てきません。

もっとも惜しかったのは『ゴジラVSデストロイア』(1995年)。ゴジラが四国電力の伊方原発(愛媛県)に向かいます。しかし自衛隊所属の超兵器スーパーXⅢがこれを阻止。ゴジラの、というか怪獣の初の四国上陸は幻と消えました。

日本は間違いなく、世界一、怪獣の襲撃を受けている国でしょう。であるというのに、四国は一度も上陸を許していない。
何故か。理由はもう明確でしょう。
四国の各地にある霊場が巨大な結界を成して災厄から守ってくれているからにほかなりません。空海が残し、時代を超えて人々が熱心に崇めてきたその想いが四国の地を怪獣の蹂躙から守ってきたのです。壊すことで画になるランドマーク的な建造物が無いから、なんて理由ではないのです。断じて。
だから怪獣が出たら四国へ逃げよう、という人口誘致作戦はありな気がします。

寅さんとゴジラは来ないけれど、今後も高知を多くの映画スターが訪れることを願ってやみません。
高知県の映画の末席に今回『追い風ヨーソロ!』が加わることになりました。作品の規模は列挙した名作には及びませんが、高知への愛はどれよりも強く、濃く、熱く込められていますよ。いやほんとに。

今回は『追い風ヨーソロ!』の紹介から少し離れた番外編でした。
寅さん・ゴジラ以上に全国を回っている水戸黄門で訪れた都道府県ランキングを作ったら高知県は何位になるのか、もやろうかと思ったのですが、話数が多すぎるのでやめました。それにそもそも映画じゃないし。

◆◆◆

『追い風ヨーソロ!』

【出演者】
大野仁志 我妻美緒 山川竜也 八洲承子 愛海鏡馬 豆電球

【上映日時】
2023年6月24日(土)~6月30日(金) 毎日13時~・19時~
各回、出演者による舞台挨拶・トークショーあり。

【木戸銭】
大人/1,500円 中学生・高校生/1,300円 小学生/1,000円

【会場】
大心劇場
〒781-6427 高知県安芸郡安田町内京坊992-1
http://wwwc.pikara.ne.jp/mamedenkyu/

【あらすじ】
1889年、安田村。唐浜では通りすがったお遍路の男に看取られながら、ひとりの女が息を引きとった。そして安田川のほとりでは安田村を離れていた兄弟が偶然の再会を果たしていた。その前に父の仇だと刀をかまえる女が現れた……。

時は流れて現在、安田町。かつての安田村にいた面々と同じ顔をした者たちが集ってくる。他人の空似か、あるいは前世か。交錯する過去との因縁。時を超えて、彼らを包むように風が吹く。

全編高知・安田ロケ、上映は大心劇場による地産地消映画がここに誕生!


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