指導者のヴィジョン(3.コーチングの考え方)

3. コーチングの考え方
(1) 長期的な視野での指導(Vision)
 チームで評価するのではなく、個人的な教育をし、長期的視野で子供たちを育成することが求められる。選手一人ひとりを伸ばすことに主眼を置き、個々の選手を20歳を前後にピークパフォーマンスを達成させるのが最大の目標である。「勝利」という結果は第一の目的ではなく、試合の内容、選手の将来が大切である。この年代にどうしても勝たなければならないというプレッシャーを与えるべきではない。また、指導者として負けることを恐れてはいけない。
  「選手は熱くとも指導者は冷静に」
  「子供たちにとって、勝つことよりも負けることの方に意味がある」

※ポイント 1) ゴールに向かう姿勢をもっと大切に
       2) チームの勝敗にこだわり過ぎない
       3) 個人に有益になるように考える
       4) 能力のある選手は上のカテゴリーで見る

(2) 自分の指導コンセプトを貫く(Coaching Vision)
 指導に関して、普遍的な、一貫した考えを持っていること。但し、コーチとしての資質向上に努め、聞く耳を持つことも大切である。「最終的勝利」を目的として持ち、刹那的なものに惑わされてはいけない。この場合の刹那的なものとは、指導者の名誉欲、親からのプレッシャーなどがあげられる。

(3) 適正人数での指導と均質なスキルレベルのグループ指導
 効果的指導を考えてた時、一人の指導者が指導できる人数は、学年やスキルレベルにもよるが、(4年生を想定すると)個人的経験からは10人以下と考える。効率的な指導を実現するために、指導者の確保は重要な問題である。また、できれば、均質なグループ分けは、トレーニングの目標設定やその効率的な達成に大きな影響を与える。  

(4) オーガナイズとコーチングの両方がある(Good Organizing, Good Coaching)
 しっかりとしたトレーニングプランと目的(Key Factor)を持ったメニューを立て、グラウンドでは的確なコーチングをする。目的とする要素がうまくできない場合は、場の設定も臨機応変に変える。

(5) サッカーの3つの局面に基づいて指導する
 ①攻撃の局面
 ②守備の局面
 ③攻守が入れ替わる瞬間

(6) 積極的な思考を育て、選手が自分で考えトライする指導(Positive Thinking)
 課題に対して命令形ではなく、選手が自ら進んでやる方向づけをする。まず、選手に積極的にトライさせ、常に考えさせていい判断を選手同士ができるようにコーチングする。指導者も選手も、困難な状況にあっても積極的な思考をする習慣が大切である。

(7) トレーニングに対するコーチと選手のハーモニー
 お互い求め合い楽しみながらトレーニングすること。コーチとしての自分自信を常に前進させることが、選手を育成する上で最も重要である。
 長所を伸ばす指導と子供たちに楽しいと思わせる内容を心掛けたい。
 「子供は認められたがっている」
 「褒めることは自信と積極性を生む」

(8) トレーニングはゲームで終わるのが望ましい
 ゲームにはあらゆる要素が含まれている。1日のトレーニングのまとめとして、ゲーム形式のトレーニングを取り入れることは望ましい。しかし、子供たちはゲーム形式になると、「無我夢中」になり、トレーングの要素を全く忘れることもあると認識すべきである。

(9) トレーニングの基本
 それぞれのカテゴリーで、技術・戦術・コンディッション・メンタリティについてのコンセプトをしっかりさせること。とりわけ、ポジションの役割を明確にすることと、様々なポジションを経験させること(ポリヴァレンス)、スペースを創る・使うことなど、動き方などが強調されるべきである。また、量より質を重視したい。

(10) 体力トレーニングはボールを使ったトレーニングを主体にする
 サッカーはサッカーをすることにより向上、進歩する。トレーニングは「サッカーのためのトレーニング」でなければならない。スピードや持久力などの体力を鍛えるトレーニングでも、ボールを使ったトレーニングをその中心に置くことを忘れてはならない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?