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【#115】愛知県・豊田市長選挙レポート(2024 2.4)


 世界最大の自動車メーカー、トヨタ。 その本社が有り、市名の由来がまさにそれなのが、今回取材した豊田市です。 世界から取り残された日本企業が多い中で唯一の希望といえる会社が市内に有るのならさぞかし立派な自治体なのだろう、と思いきや、調べてみるとその成り立ち故の独特、というか異様な、ハッキリ言えば異常な構図が広がっていました。
 4期目を目指す現職に元県議が挑んだ、60年ぶりの選挙を、レポートします。 4年に一度行われている市長選が「60年ぶり」とは、これ如何に?




◆豊田(とよた)市・概要

(豊田市役所)
  • 面積:918.32㎢(愛知県 第1位 / 54市町村)

    • 冒頭の地図を見ていただければそのデカさがお分かりいただけるかと。 愛知県総面積の約18%を占めています。

  • 人口: 416,146人(第2位)※2024年1月1日現在

  • 人口密度:453.16人/㎢(第47位)※2024年1月1日現在

    • 人口ランキングとの落差がスゴい! 中心部と中山間地で街の景色が全く違い、とても同じ自治体だとは思えません。

  • 平均年齢:44.24歳(第14位)※2020年現在

  • 衆議院は愛知11区に属し、八木哲也(自民 4期)を選出

    • 今回の豊田市長選の構図は、この衆院選から始まっています。 詳しくは「POINT」で


◆立候補者

鈴木 雅博 (44) 無所属 新 元愛知県議
太田 稔彦 (69) 無所属 現 4期目を目指す

 4期目を目指す現職に、愛知県議を3期途中まで務めた新人が挑む一騎打ちです。


◆前回(2020年)の選挙

[当]太田 稔彦 (65) 無所属 現 102,617票
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[落]山内 真也 (29)  無所属 新   17,827票

投票率:36.56%

 前回は新人候補が市議選にも当選出来ない、公報が手書きレベルの候補者だったため現職が圧勝しました。
 ただ、前回ほどではないにせよ豊田市長選は毎回この調子。 当選した方のワンサイドゲームという結果が続いています。 しかも、半世紀以上


◆POINT

①崩れ始めた “三位一体”

 豊田市長選は従来、「豊田市議会自民系会派」「トヨタ自動車労組(及び労組系会派)「地元財界」三者がガッチリ手を組み候補者を擁立。 国政与党で市議会最大会派の自民党と市内にとんでもない数がいる会社の組合とトヨタ系列会社を始めとする市内の会社が擁立した候補に誰も太刀打ちできるワケがなく、選挙が「信任投票」化している構図が1968年の市長選以降、ずぅ~~っと続いて来ました。 
 ところがここ数年、連合と自民党が接近し始めて “三位一体” の構図に変化が生じ始め、

 2021年の衆院選ではトヨタ労組出身で民主党系政党に所属していた古本伸一郎氏(当選6回 当時は無所属)が立候補を辞退。 政府自民党との良好な関係性を崩したくない豊田章男社長(当時)の意向に逆らえなかった同労組が「政党の対立前提の小選挙区からは組織内議員を出さない」とし、後ろ盾を失った古本氏は出馬を取りやめ、

 小選挙区制導入以来一度も当選出来なかった自民党候補が共産候補との一騎打ちに大差で勝利し、八木氏が4期目で初の小選挙区選出議員となりました(その後、古本氏はトヨタ復帰→2021年から愛知県副知事となります)。


②60年ぶりの「分裂」選挙

 豊田市には “三位一体” の構図から選ばれた人が市長になるという “不文律” が、ほかにもうひとつ存在します。 それは、

「市長は3期12年まで!」

 過去の市長を見ると、1964年に就任した第4代市長から前職が退任した2012年まで、キレイに12年で市長が入れ替わっています。 そうなると現職の太田候補は今期を以て退任するハズですが、現職が4期目に意欲を見せたコトに自民系会派が難色を示し現職に先んじて立候補を表明した鈴木候補を支援。 一方、2021年の衆院選では候補を立てず自民候補を利する形をとったトヨタ労組及び労組系会派は現職を推薦するコトで今回は我を貫き60年ぶりの「分裂」選挙となりましたが、分裂したのは自民党(会派)ではなく「自民党系会派」「トヨタ労組」という豊田市ならではの分裂となり、選挙戦に突入していったのです。


③豊田市議会議員の支持動向を見る

豊田市議会HP より引用)

 定数45人の豊田市議会は(諸派含めて)5会派有り、現職の太田候補には労組系「豊田市議会市民フォーラム」9人が支持。 一方、新人の鈴木候補へは「豊田市議会自民クラブ議員団」28人「公明党豊田市議団」4人、加えて無所属系会派の「新しい風とよた」に属する2人が支持しており、市議会議員の数では「9人:34人」と新人候補が現職を圧倒しております。
 豊田市は代々労組系が推す候補が市長になっていますが、豊田市の自民党員は愛知県で最多だという話も有り、結局は自民党会派あっての三位一体なのかもしれません。 さぁ、この構図が票にどう影響するでしょうか。

 それでは、両候補の選挙運動は有料部分で御紹介。
 同日に投開票された京都市長選の陰に隠れてしまっていますが、この選挙は「60年ぶりに “豊田市長” が誕生した歴史的な選挙」だと私は思います。 宜しければ御購読下さい。


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