【短歌エッセイ】あの街を離れて
基本的に出張のない仕事に就いているのだが、ごく稀に出張がある。そのごく稀がこの土曜日からあった。
私は元々出不精で、旅行はあまり好きではない。
楽しみより不安が勝るタイプだし、違う環境はどうにも慣れなくて心がそわそわしてしまう。
初日は新幹線や初めての街に飲み込まれそうになりながらも、夜はアルコールの力も借りて楽しく過ごした。
明くる日。
昨晩力を借りたアルコールは、明け方5時に「お先に」と出て行ってしまって、すっかり目が覚めてしまった。
早目に支度をして、目的地に着いたのだが、時間を1時間ほど勘違いしてしまったことにそこで気付いてしまった。
どうするか。
仕方がないので一旦外に出る。
5月の日差しは鋭いが、木陰のベンチを見つけたのでそこに座る。
私の住む街よりも幾分季節が遅れているようで、吹き抜ける風はまだ少し冷たさもあった。そのひんやりとした感覚は、自分がストレンジャーであることを再認識させられながらも、どこか心地よかった。
しばらく風に吹かれる。
「知らない街も悪くないかもしれない」
そう思うと、なんだか気持ちにゆとりが出来た。
空を見上げて、風を感じて、それを味わって。
当たり前のことだけど、なんだかとても久しぶりな気がした。
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