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「酸欠」が病気の原因である。

これが唱えられて、100年を超えるようになってきました。
野口英世(1876-1928)先生は、日本の著名な細菌学者。
特に黄熱病の研究で世界的にも有名です。
研究の中で、病気の原因として「酸欠」を重視した理論があります。
今日は、野口先生の酸素理論をわかりやすく、概要とデメリットをお伝えしていきます。

概要

1. 酸素欠乏が病気の原因であるという仮説

野口英世は、体内の酸素供給が不足することが、多くの病気の根本的な原因であると考えました。彼は、酸素が生体の基本的な代謝活動に不可欠であり、酸素が不足すると細胞や組織が正常に機能しなくなると主張しました。これにより、細菌やウイルスが引き起こす感染症だけでなく、その他の慢性疾患も酸欠に関連していると考えました。

2. 血液循環の重要性

野口英世は、血液循環の障害が酸欠を引き起こす要因の一つであると考えました。彼の研究では、血流が滞ることによって酸素が十分に供給されなくなり、組織が酸欠状態に陥り、結果として病気が発生するという仮説が示されました。彼は、特に脳や心臓などの酸素消費が多い臓器における酸欠が重大な影響を及ぼすと考えました。

3. 環境とライフスタイルの影響

野口はまた、生活環境やライフスタイルが酸素供給に与える影響についても注目しています。
例えば、空気の汚染や不十分な換気、過剰なストレス、過度の飲酒や喫煙などが、体内の酸素供給を妨げる要因として挙げられるわけですが、これらの要因が病気を引き起こすリスクを高めると考えました。

4. 治療アプローチとしての酸素供給

野口英世は、酸欠状態を改善するために酸素供給を増やすことが、病気の予防や治療に役立つと考えていました。彼は、適切な呼吸法や運動、酸素吸入療法などを推奨し、体内の酸素レベルを最適に保つことが健康維持に重要であるとしました。

現在の考え方

野口英世の「病気の原因は酸欠である」という理論が、現代の医学において全面的に支持されていない理由はいくつかあります。以下に主要なポイントを挙げます。

1. 病気の多因子性

現代医学では、病気の原因は単一の要因によるものではなく、複雑に絡み合った要因が関与していると考えられています。

例えば、
・遺伝的要因
・環境的要因
・免疫系の状態
・栄養状態
・感染症

などによって病気が引き起こされると考えられます。
酸欠が一部の病気に影響を与えることはあるものの、それだけが病気の主な原因とするのは不十分とされています。

遺伝的要因などの一部として、遺伝子上に変異が起こる可能性などを考えると、活性酸素の関与が否定ができません。より予防に着目するならば、見直したいポイントの一つではありますよね。

2. 感染症の病因論

野口先生の時代においても、細菌やウイルスなどの病原体が感染症の主な原因であることが広く受け入れられていました。
酸欠は、組織の耐性を低下させる要因の一つかもしれませんが、感染症の直接的な原因と、現代の感染症理論では重視されます。

微生物がどのように体内に侵入し、病気を引き起こすかについて詳細に説明しており、酸欠理論ではこれらのプロセスを完全に説明することはできません。

ただし、感染症が進むとバイタルサイン(血圧、呼吸、体温)などの低下が起こることから、感染症の予防から考えても、酸素化の必要性はかなり高いものと推察されます。

3. 酸欠状態と病気の関係の限界

酸素不足が組織や細胞に悪影響を及ぼすことは確かですが、すべての病気が酸欠に関連しているわけではありません。
例えば、自己免疫疾患やアレルギー、癌などは、酸素レベルに関わらず発生することが多いのが現状です。
免疫系の異常や遺伝的変異、細胞の制御異常が分かっているからです。
酸欠だけではなく、活性酸素による影響も考えるべきです。

4. 病理学と生理学の進展

現代の病理学や生理学の進展により、病気の発症メカニズムがより詳細に解明されています。
細胞レベルでの病気の進行や、分子生物学的なプロセスが明らかになるにつれて、酸欠だけでは説明できない多くの病理が見つかっています。

例えば、癌細胞は酸素が豊富な環境でも増殖することができ、酸素の有無に関わらず、特定のシグナル伝達経路や遺伝子変異が病気の進行を促進します。

癌化のメカニズムは他に譲るとしますが、成長期を過ぎてのがん遺伝子の再活性化などは、基本的にそのシグナルにスイッチを入れないと身体が生存を確保できないと判断した結果かもしれません。

その要因の一つに酸欠は関与している可能性はあるかもしれませんね。

5. エビデンスの不足

酸欠が病気の主な原因であるという理論を支持する十分な科学的エビデンスが不足しています。
現代医学では、理論を支持するためには、統計的に有意なデータや再現性のある実験結果が必要とされますが、野口先生の酸欠理論に関する研究はその点で限られており、広範な医学的承認を得るには至っていません。

時代背景としても、ここに注力することは不可能だったのでしょう。

まとめ

この理論は、今日の医学的視点から見ると完全には支持されていませんが、酸素が生体にとって重要であることは変わりません。
特に酸素欠乏が細胞や組織に悪影響を及ぼす影響は、科学的根拠にも、一般的にも認めるところかと私も考えています。

野口先生の酸欠理論は、彼の研究の中での独自の視点を示すものであり、彼が病気の原因を多角的に探求していたことを示しています。

これらの理由から、野口英世の酸欠理論は、現代の医学の中で一部の視点としては考慮されます。

もちろん病気を克服したいと考える方は、見直すべきポイントです。
「呼吸をする=生きること」
これを念頭におきながら、戦うのではなく、一度リラックスする目的も含めて、呼吸を見直すことが必要ですね。

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