読書の記録(26)『青春をクビになって』 額賀澪
手にしたきっかけ
高校の国語の入試問題に『 風に恋う』が使われていて、それがきっかけでこの作者の作品を読むようなりました。吹奏楽や陸上など、中高生に薦めたい本が多く、青春を素敵に書かれる作家さんだという印象でした。
この本の帯には『夢の諦め方は、誰も教えてくれない 青春小説家が描く青春の終(しま)い方』とあります。今までに読んできた作風とはちょっと違うかも?と気になり読むことにしました。
心に残ったところ
この本に出てくる45歳の“高齢ポスドク”と同じように、私自身も就職氷河期を経験しています。私の力不足も大きな原因ですが、大学4回生のときには教員採用試験に受からず、就職浪人をしました。バイトを掛け持ちしながら3回目の挑戦で教員になることができました。
先生になりたいという夢を叶えたのに、22年後、その職を辞める決断をして、小学校の図書館司書になりました。地方公務員から、年度会計職員となりました。ふとした瞬間に、辞めるという決断は本当に正しかったのか?という思いが今でも頭をかすめます。そんな中、出会った一冊です。
読んでいて、ところどころ胸が痛くなりました。誰に迷惑をかけるわけでもなく、自分の好きなことを研究し追究したいだけなのに、じわじわと真綿で首をしめられるかのように、お金のやりくりで汲々としてしまう。夢を持つこと、諦めること、生活していくということ、いろいろなことをグルグルと考えてしまいました。
でも、読後感は爽やかというか、未来が見えるというか、結局は毎日を積み重ねていくしかないと思いました。いろんな人との出会いがあり、それぞれの人にそれぞれの価値観や人生があり、知らぬ間に他人に思わぬ影響を与えたり与えられたりして、社会が構成されています。
いろいろな年代の人や、いろいろな立場の人が出てくるので、わかるわ〜と共感したり、う〜ん?と考えたりしながら読みました。
今までの経験は無駄にはならないし、辞めると決断したから道が開けることもあります。時間を手に入れることによって、今まで見えていなかったものが見えるようになることもあります。
登場人物の名前や、古事記のエピソードも印象的でした。
まとめ
自分の人生は自分で決めるしかないと思いました。覚悟を持って好きなことを仕事にするのか。好きなことは仕事にはせずに続けていくのか。どの決断が本当にいいのか、悩ましいなあと思いました。
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