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読書の記録(51)『野原できみとピクニック』濱野京子 偕成社

手にしたきっかけ

高学年向けの、恋愛に関する本を探していて見つけた。YA向けのコーナーにあった本だし、装丁も子どもが好きそうな感じ。本文の字の詰まりぐあいもほどよい感じ。ふりがなも適宜ある。偕成社のHPを見ると「中学生から」とあったので、高学年でも読めるかなと思って読んでみた。

優弥はある日、繁華街で男子高生に絡まれていたところを、通りかかった稀星に助けられる。
裕福な家に生まれ、進学校に通う優弥と、底辺校に通いながら、家計を助けるためアルバイトにいそしむ稀星はお互いの違いにとまどいながらも、しだいに惹かれあっていく。
育ってきた環境が、まったくちがう2人が恋に落ちたら、見える世界はどう変わるのだろう。
2人の恋が現代日本を映しだす、格差社会のラブストーリー。

カバーの見返し部分より

心に残ったところ

格差社会って何だろう?と思って読み始めた。公立の場合、中学校までは裕福は家の子も、そうでない家の子も、同じ学区なら同じ学校に通う。多様性というか、いろいろな人がいる中で影響を与え合ったり、揉まれて(揉みくちゃにされて?)たくましく成長していくイメージがある。ところが高校になると学力で校風がガラッと変わってしまう。近くても交わることのない高校生たち。格差社会って、このことなんだなとだんだんわかってきた。

お互いを好ましく思う優弥と稀星が距離を詰めていく様子がなんとも微笑ましい。私が学生の時はLINEで連絡を取り合うなんてなかったけれど、今の子たちはこうやって文字でやりとりをして思いを高めていくのか…というのがわかってすごく新鮮だった。出会ってからお互いの思いが文字に残っていて、それをさかのぼって見られるというところが、私たちの時にはなかった恋愛だなあと思った。

同時に、優弥の母の気持ちや、トラブルを避けようと動いてしまう先生の思いもわかる。私が年を重ねたからだよなあと思う。人を見た目で判断しないとか、学歴なんて関係ない、とはわかっていても無意識にある自分の中の偏見を突きつけられる感じがした。

高校生の時の私がこの話を読んだらどう思うんだろう。格差社会と感じるんだろうか。自分がその年代なら格差を本質的には理解できず、大人が訳わからないこと言ってくる、ぐらいにしか感じないような気もした。

恋愛と言っても過激な描写はなく、それぞれの心の動きが丁寧描かれているので、小学生にも薦められる。ただ、小学生にはまだピンとこないかなあ。自分と友達の家庭環境がどれだけ違うかなんて意識していない気がする。

まとめ

二人の恋を応援したいし、今後どうなっていくのか気になった。恋をして、勉強を頑張ったり、自分の将来のことを考え始めたり、お互いを高め合っていく感じがいいなあと思った。


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