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読書の記録(13)『山小屋ガールの癒やされない日々』吉玉サキ 平凡社

『山小屋ガールの癒やされない日々』 吉玉サキ 平凡社

手にしたきっかけ

学生時代、サイクリング同好会に入っていて、自然豊かなところを自転車で旅した。キャンプをすることもあったし、ユースホステルを使うこともあった。それまで、旅行と行っても、家族で海水浴に行って民宿に泊まるというような旅行、両親の田舎へ行ってのんびり過ごす(いかにも昭和って感じの)というような旅行しか経験していなかったので、とても新鮮な体験で楽しかった。

季節に応じて住む場所を変えたり、自然の中で暮らすというのに、今でも憧れがある。実際に働くと大変なこともあるのかなあ、冬の間はどうしているんだろう、と気になり読んでみようと思った。

先日、『聴こえない母に訊きにいく』の感想を書いた。

五十嵐大さんと同じく、吉玉サキさんもnoteに書いておられると知り、さっそく読んでみた。私の好きな感じのエッセイがたくさんあった。

心に残ったところ

・地獄のヘリ待機
富士登山が中2の行事にある学校に勤めていたとき、富士山に生徒を引き連れて登ったことがある。教員1人につき10人ほどの生徒を引き連れて登る。8合目の山小屋で1泊して朝早く出発し頂上を目指す、という行程だった。

「通勤ラッシュの時間に大きなザックを背負って新大阪に行くのがまず大変」とか「行きの新幹線はとにかく体力温存」とか「5合目でバスから降りたときにはしゃいだら、既に空気が薄いから危険」とか「天気がよくないと雨と風が下から巻き上げるように降ってくる(打ちつけてくる)」とか、何度も行っている先生たちは面白おかしく、いろいろな情報を教えてくれた。

産・育休をはさんで2回行ったが、2回とも天気もよく、高山病にもならず無事に登れた。山小屋で食べた『とうもろこし』がものすごくおいしかったことを今でも覚えている。あのとうもろこしも、こうやってヘリで上げられていたのだろうか?

・遭対協隊員の思い

『岳』は大好きな漫画の一つだ。繰り返し何度も読んだ。自然の美しさと厳しさと、そこで働く人々の思いを教えてくれる。山が好きだから山を嫌いにならないでほしい、また山に来てほしい、山で会おう!という彼らの思いが伝わってくる。この本の中にも隊員のエピソードが出てくる。本業を持ちつつ山の安全を守ってくださる方々に頭が下がる思いだ。

・山の荒天は凄まじい!
・山小屋の人々がお客さんを叱る理由

初めての富士登山にソワソワしてたとき、経験のある先輩の先生が「山に人権はない」と言っていたことを思い出した。広々と寝たいとか、顔を洗いたいとか、そういった普段ならあたり前のことが制限される。酷かもしれないが、7合目まで登った時点で、ものすごく遅れをとる生徒や、体調に不安を訴える生徒は、山小屋待機となる。日常と同じような感覚では危険だ、という意味での話だったと思う。頑張れ!とか、みんなと一緒に登ろう!といった前向きな気持ちだけではどうしようもないことがある。実際に登って、『命や安全が第一』というのを身にしみて感じた。

まとめ

この本を読んで、あ〜私やっぱり自然が好きなんだ…と再確認した。ライン片づけで靴を片づけたときに、富士登山のために買ったトレッキングシューズを手放すことができなかった。他のものは数年使っていないと、えいっと思い切って放せたのに、なぜトレッキングシューズは手放せないんだろと思っていた。本格的な登山とまではいかなくても、ハイキング、トレッキングをしたいんだという自分の潜在的な思いに気づかされた。

山への憧れの気持ちがあるということを確認できたので、トレッキングシューズはもう少し置いておこう。8月に犬鳴山に友達と行って、滝を見て、山頂からの景色を味わって、自然の中で遊ぶ楽しさを思い出した。いつか行こうと思っていた金剛山にも登ってみたい。

本を読むこと、noteを書くこと、家をととのえること、の他にもやりたいことがたくさん出てきて嬉しい。やろうと思えばできる自分になれていることにワクワクする。


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