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~スタッフブログ#11~ヨーロッパの食品ロス問題について

プノボロメンバーの、のえです!
ヨーロッパの食品ロス問題について
 
前回はアメリカのフードロス問題について書かせていただいたので、今回はヨーロッパ(特にEU)のフードロス問題について書かせていただきます。
 

実は深刻なヨーロッパの食生活


まず初めに、前回はアメリカの食生活を紹介させていただきましたが、ヨーロッパの食生活というとどのようなイメージを持ちますか?
私はアメリカに暮らしていてヨーロッパに行ったことがないので、すごくオシャレで美味しい高級食材が多いんだろうなぁ、という印象でした。
あながち間違いではありません。
しかし、ヨーロッパの食生活の現状はかなり深刻なものでした。
欧州委員会の統計によると、EU(欧州連合)の成人の肥満率は50%を超えているそうです。

2021年の欧州委員会の統計。EUの成人の53%がBMI25以上(肥満)だということがわかります。(出典:Over half of adults in the EU are overweight (eurostat) https://ec.europa.eu/eurostat/web/products-eurostat-news/-/ddn-20210721-2)


実際に、肥満問題がヨーロッパの大きな問題となっているのです。
肥満問題は人々が偏った食生活の中で生きていることが原因で起こります。
よって、肥満問題が深刻なヨーロッパでは食品によって需要に激しい違いがあり、需要が供給を大幅に上回っている食品は廃棄されることなく消費される場合が多いですが、需要が供給を大幅に下回っている食品は大量に廃棄されてしまいます。
(出典:Overweight and Obesity – BMI Statistics (eurostat) https://ec.europa.eu/eurostat/statistics-explained/index.php?title=Overweight_and_obesity_-_BMI_statistics
 
 

ヨーロッパの食品ロスの現状は?


2021年、欧州連合(EU)は1億3800万トンの食品を輸入しました。しかし、Feedback EU という団体が実施した最新の調査によると、毎年EUで廃棄される食品は1億5380万トンと予想されています。これはEUで生産されている食品の約20%に値します。食品廃棄により生じる費用は143ビリオンユーロにも登り、廃棄のために温室効果ガスを大量に発生させなければなりません。
(出典:EU wastes more food than it promotes, says new report (European Environmental Bureau) https://eeb.org/eu-wastes-more-food-than-it-imports-says-new-report/

「農場から食卓へ戦略(Farm to Fork Strategy)」とは


この現状を受け、欧州委員会は「農場から食卓へ戦略(Farm to Fork Strategy)」という戦略を始めました。
実際には欧州グリーンディールというCO2削減に向けた政策の一部として実施されている戦略ですが、フードロス削減にも直結するので紹介させていただきます。
環境問題やフードロスの他、冒頭に紹介した人々の食生活問題なども解決することを目標にしています。


「農場から食卓へ戦略」で解決することを目標にしている4つの項目。(ピンク色から時計回りに)持続可能な食品生産、持続可能な食品加工と食品流通、持続可能な食品消費、食品ロスと廃棄の防止。(出典:Farm to Fork Strategy (European Commission) https://food.ec.europa.eu/horizontal-topics/farm-fork-strategy_en#Strategy)


この戦略は、名前の通り食品が生産されている農場から消費される人々の食卓へ届く際の過程に注目したものです。
特にフードロス解決に直結する取り組みとして、食料安全保障を強化し、食品が手に入りやすくするというものがあります。
具体的には、食品ビジネス(生産と売買)に関わる企業が人々に食品を届ける責任を持たせるため、欧州委員会が行動規範を作成してビジネスを監視するというものです。
食品ビジネスの見直しを通して多くの人々に公平に食品が行き渡り、食品ロスが削減される効果が見込めます。
また、ビジネスの監視を続ける上で食品生産や売買の際に廃棄される食品を削減する取り組みもしています。

この戦略の中で欧州委員会が明確にフードロス対策として公言しているのが、廃棄される食品の計測方法を改めることです。
冒頭に、毎年EUで廃棄される食品は153.3ミリオントンと予想されていると書きましたが、これはあくまでも予想に過ぎず、実際にはさらに廃棄されている可能性が高いです。
実際の量が明確になっていない理由として、特に農場で廃棄されている食肉の計測方法が曖昧で、報告されている廃棄量に加味されていないという現状があります。
農場での計測方法を見直し、実際の廃棄量を明確にすることで、今後具体的にどれくらい食品が余っているのか、どこでどのような対策をすればいいのかなどの解決策を見つけることができます。
(出典:Farm to Fork Strategy – Publication (European Commission) https://food.ec.europa.eu/system/files/2020-05/f2f_action-plan_2020_strategy-info_en.pdf

アメリカの食品ロス対策を調べた時は貧困問題とつながることが多かったですが、EUの対策は環境問題と肥満問題につながるっていることが印象的でした。
イタリアンやフレンチなど、日本でも人気の高いヨーロッパの料理に囲まれていたら肥満率が上がるのも仕方がないと個人的には思ってしまいますが…。
ヨーロッパに行く機会があれば、食べ過ぎないように気をつけようと思います。

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