海外のプログラミング教育事情2018

海外の「プログラミング教育」事情(2018年版)

2020年から「プログラミング教育」が必修化されますよね。
必修化の背景には大きく2点あります。

①国内のIT人材不足
②日本の国際競争力の向上

このあたりについては、ブログやnoteでこれまで何度か触れてきているので、そちらの記事を読んでいただいている方には既知の情報だと思います。

まだよくわからない…という方は、このあたりを読んでみてください👇

さて、2018年7月に文部科学省が、小学校プログラミング教育必修化に向けた具体的な実施工程表を発表しましたね。

👆のnoteでも触れたように、2018年版「子供にさせたい習い事」の第2位に「プログラミング」がランクインするなど、必修化というだけあって、年々注目度が増してきています。

ところで、海外の「プログラミング教育」事情はどうなってるんでしょう?

必修化の背景の②として、国際競争力の向上と紹介しました。競争力を向上させる上で、敵を知るではないですが、海外の各国の「プログラミング教育」事情を把握することは大事です。何を学ぶかのヒントになりますから。

ということで今回は、海外の「プログラミング教育」事情をざっとまとめようと(各国の具体的な教育事情は別途マガジンとしてまとめる予定です)。
イントロ編的な立ち位置で、各国の教育事情の輪郭を捉えていきますね。

文科省が公開している調査結果を参考に、SE×講師である僕が、特に先進的、独創的な取り組みをしていると感じた国々を紹介していきます。

そもそも、これらの国々はどの段階(小中高)から必修科目としてプログラミング教育に取り組んでいるのか?ですが、ざっとご覧のとおりです。

小学校から
・イングランド
・ハンガリー
・ロシア

中学校から
・香港
・韓国(選択科目)
・シンガポール(選択科目)

高校から
・上海
・イスラエル
・フランス(選択科目)
・イタリア(選択科目)
・スウェーデン(選択科目)
・カナダ(選択科目)
・アルゼンチン(選択科目)
・台湾(選択科目)
・インド(選択科目)
・南アフリカ(選択科目)

ちなみに、Skypeを生んだ国として有名なエストニアは学校裁量という形で、小学校からプログラミング教育を実施しています。

そして、整理していくなかで見えてきたのは「論理的思考習得」と「実践的技術習得」の大きく2フェーズあるということです。

グラフにするとこんな感じですかね。

では、各国の「プログラミング教育」事情を箇条書きでまとめていきます。

イングランド

・「Computing」という教科がある(以下の3分野から構成)
・「Computer Science」「Information Technology」「Digital Literacy」
・教科「Computing」は教員が不足している
・言語としては、Scratch、LOGO、Kodu、Pythonなど

ハンガリー

・「Informatika」という独立教科がある(以下の分野で構成)
・ITツール利用法、アプリケーションの知識、情報学など
・アルゴリズム→モデリング→プログラミングという流れ
・言語しては、Pascal、C、Fortran、Visual Basic など

ロシア

・「インフォルマティカとICT」という独立教科がある
・教科書や教材DVDなどは国が認定し、学校は認定された教材を選択する形
・アルゴリズム中心で学び、徐々にプログラミング教育へ
・言語としては、Pascal など

香港

・「カリキュラム開発」と「教育におけるIT」の二本柱
・「Generic Skills」として、e-Learningの学び方なども教育する
・小学校まではICTリテラシー教育が中心
・目標、教材など年代に合わせて細かく設定されている
・言語としては、Pascal、Dreamweaver など

韓国

・「情報」という独立教科がある
・産業の多くが情報技術によるもので、早くから必要性が主張されてきた
・言語としては、Scratch、Python など

シンガポール

・「Computer Applications」という独立教科がある
・クラブなどの形でプログラミング活動の場が与えられている
・表計算、メディアコンピューティングなど6つの分野がある

上海

・「情報科学技術」という独立科目がある
・小学校で五大装置や汎用ソフトウェアについて教育する
・言語としては、Visual Basic、Pascal、C++ など

イスラエル

・「Computer Science」という独立教科がある
・アルゴリズム的思考開発→プログラミング というカリキュラム
・言語としては、Basic など

フランス

・独立した教科はなく、「数学」の一部として教えている
・プログラミング言語は「科学的言語」のひとつという位置づけ
・言語としては、Scratch、Algobox、Python、Scilabなど

イタリア

・小学校では「Programma li Futuro」それ以降は「Informatica」
・「Programma li Futuro」は論理的思考方法の獲得が目的
・「Informatica」はOS、アルゴリズム、プログラミング
・学校によって独立科目だったり、数学の一部だったりする
・言語としては、C、PHPなど

スウェーデン

・「Programming」という教科がある
・高校では「Programming」を年間50から100時間取り組む
・政府は、ICTリテラシーは、読み、書き、計算に次ぐスキルと

カナダ

・「Computer Studies」という教科がある
・課外授業としてもプログラミングを教えている
・コンピュータ使用に関する法的、倫理的な問題にも取り組んでいる
・言語としては、Scratch から入ることが多い

アルゼンチン

・「Computing」「Programming」という独立教科がある
・全生徒、全教員にノートPCを1人1台無料配布して教育する
・プログラミング教育は日本でいうと中学校の年代から教育する

台湾

・「情報」という独立科目がある
・ネット利用マナー、ネットいじめ防止などモラルの教育も実施する
・プログラミングは中学校から取り組み、小学校はリテラシー重視の教育
・言語としては、Scratch、Visual Basic など

インド

・「ICT」という教科がある
・ICT環境の利活用、課題解決、思考開発などのスキル取得が中心
・小、中学校の段階において、授業料や教材は無料
・言語として、LOGO、QBasic、Visual Basic、C++、Java など

南アフリカ

・「Information Technology」という教科がある
・プログラミング自体の学習より、論理思考の教育が中心
・言語としては、Delphi、Java など

いずれの国でも、最初に取り組むのは「論理的思考習得」でした。その期間こそ違いがあれど、基本的な考え方を教えるだけじゃなく、実際に物を触りながら習得させていくというスタンスをとっています。

逆に、「実践的技術習得」は中学校や遅いところでは高校からという国が多いです。ここから見えることは、テクニックは短い期間でも継続して取り組めば比較的習得しやすいということです。

一度身についた思考を改善していくってのはしんどいですよね。ただ、一度身についてしまえば、その思考パターンがスタンダードになるので、積み上げた分だけ、他者(他国)と差をつけることにも繋がってきます。

調べたなかでも、香港は結構しっかりカリキュラムが組まれており、バランスがいいなという印象でした。

ここについては次回、掘り下げていこうと思います。

そして、最初に学ぶ言語としてもっとも多かったのが「Scratch」です。

日本のプログラミング教室でも「Scratch」を導入しているところは多いですが、世界的にも指示されていますね。実践的技術習得のフェーズで具体的にどんな言語を学習するかは各国でバラつきがあったので、このあたりもこれから注力していこうと思います。

やはり、プログラミングはひとつの課題解決手段です。

プログラミングをできるようになる!が目的になると、どうしても細かいお作法などに意識がいきやすくなり、視野も狭くなります。それよりも、そもそもプログラミングはね…という本質的な部分をしっかり教育することで、IT自体のおもしろさや楽しさを発見しやすくなると思ってます。

僕も小学生にプログラミングを教えていますが、「プログラミングしよう!」よりも「ゲーム作ろう!」の方が超積極的になってくれます。

プログラミング教育の必修化を前に、「まず何からさせよう…」という悩みを抱えている保護者のみなさんは、すでに先進的な取り組みをしている国々の事例を参考にするといいでしょう。

今回見えてきたのは「実践的技術習得」よりも先に「論理的思考習得」だということ。これは別にプログラミングを学ばせなくても学習できることだと思います。なにせ、プログラミングはひとつの表現方法なので。

海外では、母国語、外国語につぐ言語だと捉えられていますしね。

さて、今回はイントロ編として海外の「プログラミング教育」事情について、国ごとの特徴についてまとめてみました。(2018年版)

各国の具体的な取り組みについては、今後掘り下げていく予定です。

お楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?