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映画『戦雲』鑑賞

三上智恵監督の映画『戦雲』を観た。戦う雲と書いて「いくさふむ」と読む。戦雲という言葉は世界中にあるらしく、戦争の前には不吉な予兆を示すような雲が現れるということで、この映画は日本が戦争の準備を着々と進めているようにみえる沖縄の離島を中心に数年かけて撮影したドキュメンタリー映画だ。

沖縄の離島には10年以上前には年に何度も訪れていた。与那国はまだ訪問していないが、沖縄本島、石垣島、宮古島、西表島、波照間島等タイミングがあうと季節を問わずに離島を訪問していた。海が好きで美しい海を眺めながら波や風の音を聴いていると、それだけで何時間でも過ごせるのだった。最後に訪問したのは10年以上前になると思うが、その当時の離島でリゾート開発が最も進んでいたのは石垣島で、今は宮古島にも多くのリゾートホテルができているようだが、当時は宮古島でも大型ホテル数は限られていた。

映画では住民にお構いなしに沖縄・南西諸島に次々に配置される自衛隊基地、武器装備、弾薬庫等の様子や人々の不安、哀しみ、そして日常の生活の様子を映し出している。

基地や弾薬庫が建設され、戦車が運び込まれる様子をみて涙があふれてとまらなかった。まるで、自分のふるさとが壊されていくのを目の当たりにしているようで観ている間胸がえぐられるようでとても悲しくつらい気持ちになったのだ。

美しい海、ゆったりと別次元で流れる時間、のんびりとした空気、そうしたものが壊されてゆく。これが今日本で起こっていることなのか。大島新監督の映画「国葬の日」でも辺野古の埋め立ての土砂を運び込むのに何十台も連なったトラック、機動隊に連れていかれる人々の様子を見てショックを受けた。同じ衝撃だ。

映画にはリゾートや観光客の様子はまったくでてこないが、国はインバウンド政策を推進し、観光が大きな収入源を占めている沖縄の島々で、戦争の足音が迫ってきている。観光客やリゾート地の人たちはどう思っているのだろうか。

何年も前に訪れた沖縄好きが集まるお店には石垣島に移住したい、移住したという人たちが何人もいた。その人たちは今どのような気持ちで島が変わっていくのをみているのだろうと考える。

これは沖縄の問題ではない。先島諸島だけの問題ではない。
私たちは、このひたひたと忍び寄る戦争の足音に注意ながらも「戦雲」を呼び寄せないようにしなければならない。


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