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そういう物語。



本当につまらない男だって
心底そう思ったのよ。


レンアイの技術もないくせに!


赤いダッフルコートの女の子は
かつかつと音を立てながら
街中を眺めて言いました。


たったひとりの女の子
かけがけえのない女の子
すべての喜怒哀楽を帰して
すべてを上から眺めています。



空は、まぁ、
スカイブルーというよりは
群青色かしら。



本当につまらない男だって
心底そう思ったのよ。


車両の1番端の壁側の席に座るため
7番ホームで15分も待機する男。
隣から乗った女性もおそらく
その位置に座りたかった。
譲ることなく勝ち誇った顔してドヤ顔で座り
腕組みして眠り始めたのよ。
考えられる?
いくら冴えない
緑の上着を着ていた女性だとしてもよ?
でもわたし、彼女の爪好きだったな。
そこには今まで積み上げてきた
彼女なりの辛みが現れていた、
妙ちきりんな爪。
呆気に取られた座席よ。




本当につまらない男だって
不快で吐き気がしたわ。


レンアイの発想もないくせに!


食パンの耳はカットしてくれないとね、
ぼく食べれないんだ。
パン屋さんのレジ員にわざわざ言うから
慌ててカットするもレジの行列
考えられる?
レジ員は慌てて指切ったって話よ。
そこのおススメパンは
ハニースイート小倉パンっていってね
もうネーミングからやり直せって話しなんだけれど、
待たせたお詫びとしてお客様に配ったって噂。
味?まぁ、うなる甘さと豆が入ってんじゃないの。
でね、なんとパンの耳くんは、
ぼくのせいで指を切ってしまったんだねの
お詫びとして、彼女のバイト終わりを待って
秘密の指切りげんまんしたらしいわよ。
これが本当の古風な商売ってやつね。


赤いアイライナーをひいた女の子は
ぶつぶつと言いながら
男女を眺めていました。


たったひとりの女の子
ふうせんみたいな女の子
すべての悲喜交々を掌にしまい
中から眺めています。


街は、まぁ、
薄い膜がかかったように
漠然と堂々としていた。



本当に本当に!つまらない男だって
灰色の雪ん中に顔ぶちこみたくなったわ。



レンアイの技術もないのに、
相手の出方や状況に応じて
自分に有利になるように処置をし
相手を振り向かせるために
押したり引いたりするテクニック
『駆け引きのピンク』なんて名付けて
想像力を駆使した話し
考えられる?
彼女は『雪の上にダーイブ』したって噂よ。
押されちゃったんでしょう、おそらく。
はまるか滑るかどっちか。
前者も後者もやり切ったってわけね。
男もその上からダーイブしたみたいよ。
本当につまらな過ぎる男、
だけど、ちょっと楽しそうね。




赤ずきんちゃんは寒さに凍えたふりで
猫のように丸くなりながら
すこしあたたかい気持ちになったとか、
ならなかったとか。

ところで、






「あなたはどのタイプ?」









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