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恋の詩をまとめました。
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キス

キス

クリスマスパーティーが退屈だったので

煙草を吸いに店の外へ出ると

さっきから気になっていた女の子が

煙草を吸っていた

僕は彼女を誘って別の店で飲み

やがて終電がなくなり

線路沿いの道を僕らは

ホテルに向かって歩いた

百メートルくらい先にホテルが見えた時

彼女が言った

ねえ

ここでキスしてくれる?

それで僕らは

線路沿いの道でキスをしたんだ

バースデーパーティー

バースデーパーティー

君の二十三歳の誕生日の

前日の三月三十日

駅前に車を停めて仕事帰りの君を待ち伏せた

君は少し驚いたけれど

助手席のドアを開けるとするりと乗り込んだ

それで僕らは郊外のフランス料理店に行った

店のそばを川が流れていて

食事の後

僕らは桜並木の土手を歩いた

僕は君に好きだと告白し

君は

自分は結婚しているのだと謝った

それから僕は君を家の近くまで送っていった

君は車から降りよ

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ハチ公前

ハチ公前

就職活動が終わって

三か月ぶりに僕らは会った

待ち合わせのハチ公前で

僕はホテルに行こうと言い

君は映画に行こうと言った

やがて君は

最近どれだけ寂しかったかを

目に涙を浮かべながら説明し

だからホテルは嫌なのだと訴えた

そのとてもわかりにくい論理を

僕は一応理解できたけれど

映画に行く気にはなれなかった

僕が黙っているので君は

ホテルに行かないのなら帰る?

と訊いた

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ウシガエル

ウシガエル

その夏ぼくは二十七歳で

ガールフレンドが三人いた

一人は夫がいて

あとの二人はぼくの好みじゃなかった

好みじゃない二人のうちの一人の

アパートは田んぼの隣にあった

クーラーのない部屋の窓の外で

夜はウシガエルが鳴いた

肌を合わせながら

彼女は

ぼくの名前を呼び

好きと言った

それはたぶん

嘘ではなかったけれど

本当でもなかった

その夜

ぼくはシーツを汚してしまい

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