なぜ医師の当直は辛いver2
あくまで、一医師の考えとして書いているだけですので、明確な根拠があるわけではありません。
ただ、20年弱、救急科に従事したものの考えというだけです。
病院の数が多いから、当直しないといけない医師が多くて辛い。だから、病院を少なくすればいいと書いたけど、病院を集約するなんて簡単にはできません。
じゃあ、どうするかといえば、現実としては、多くの地域は当番制を引いています。これだと、3つ病院があって、夜間に3台の救急搬送があって、今まで1台ずつ分散していたところ、当番日を順番に決めておけば、一箇所に集まります。これで、3人中、2人の医師は働かなくてすむようにできます。1箇所で1人の医師が診るのは辛いけど、当番じゃない日には働かなくてすむので、分散しているよりはマシです。
じゃあ、これで病院を1箇所にしなくても大丈夫かと、、、必ずしもそうではない。
病院が分散していると、病院の機能も分散してしまうことが問題。
大きな病院なら、体のどんなことも診てくれるだろうと非医療従事者の方は思ってしまうけど、県庁所在地で最大級の病院でもない限り、何でも診る、というわけにはいかないというのが肌感です。
4tトラックにはねられて、息も絶え絶えの重症な状態。脳に損傷があって、お腹の腸に損傷があって、大腿骨も折れていそう。
A病院は神経中心の病院で脳外科疾患しかみれない
B病院は外科医がいるけど、脳外科医と整形外科医がいない。
C病院は整形外科医と外科医はいるけど、脳外科医はいない。
A病院に運ばれると、脳の手術は成功するも、腸の損傷のため死亡。
B病院に運ばれると、腸の手術は成功するが、脳の損傷のため死亡。
C病院に運ばれると、骨折の手術は成功するが、脳か腸の損傷で死亡。
日本中で、こういう地域がありますが、そこで言われるのは、「医療の限界です」という言葉です。
A病院、B病院、C病院が合併してABC病院となっていれば、全ての治療が完了して助かるかもしれません。
話を戻して、当直がなぜ辛いかといえば、それぞれの病院の医師が頑張ってしまうからです。
良くも悪くも頑張る人が多いです。何とかしようと、皆頑張って医療します(してしまいます)。医師に限らず、医療従事者には、そういう人が多い。うちの病院だと、この疾患しかみれないから、他の疾患は我慢してね、と言ってしまえば辛くないのに、脳外科の医師が腹部の診療を頑張ってするし、外科の医師が骨折の診療を頑張ってするし、整形外科の医師が脳の診療を頑張ってするから辛いのです。
蕎麦屋にイタリア料理を食べたいというお客さんが来たら、普通は追い返されます。でも、病院だと、作ったこともないイタリア料理を頑張って作ります。そして、ざるスパゲッチーのような、わけわからないものが出てきます。不慣れな料理を作って、疲弊します。