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【書籍紹介】コミュニティーマーケティング 小島英揮箸 併せてコミュニティ関連本を一挙にご紹介

コミュニティ関連の本を購入する際、Amazonさんが必ずレコメンドしてくるのが本書。2019年発売と古いし、AWS(Amazon Web Service)というto Bの話だしと心惹かれずでしたが、Amazonさんの熱意に負けてこの度購入致しました。

そしたら、なんと、これまで読んだコミュニティ関連本で一番参考になる一冊でした。Amazonさん、恐れ入りました。

著者の小島氏は、AWS(Amazon Web Service)の日本法人第1号社員。予算も人的リソースもない中、Saasの世界で普及しつつあったユーザーコミュニティに着目し、それをAWS普及のメイン戦略に据えた。当時、教本もない中、自ら仮説を立て、行動し、修正を重ねることで磨き上げた本物のコミュニティ論。2019年発売で、デジタル環境は今と異なる点も多いですが、コミュニティ育成手法としては、今でもバリバリに通用する内容です。

著者は「パラレルマーケター」を名乗っています。自らコミュニティマーケティングを実践していく過程で、コミュニティを通じてセルフブランディングが確立し、さまざまな企業から声がかかり「複業人/パラレルワーカー」となっていく。

「コミュニティで認められて、クラウドにすごく詳しい、セキュリティにすごく詳しい、などのポジションができて、そのときそのときで最適な会社に替わっていくのが、これからのキャリアではないか」

これからの時代を生き抜くキャリア本としても楽しめるのが本書の特徴です。

私は今、「コミュニティマーケティングという需要」をつくっているのと並行して、「パラレルキャリアという働き方の需要」をつくっていると考えています。 これはかなり意識的に行動しています。

最初、本書にあまり惹かれなかった理由が、私の中でコミュニティマーケティング=to C(生活者向け)ビジネスという先入観があった為。

本書を読んで、こうしたSaaS系のサービスこそ、コミュニティが向いているということを理解しました。

市場浸透の初期段階において、同サービスを気に入ったユーザーとしては、その良さを多くの人に広めたいという欲求がある。また、そんなイケてるサービスをいち早く見つけて使いこなしていることを自慢したいという気持ちもある。

また、ユーザー同志でユースケースを共有したり、バグや使いにくい点を見つけて、運営元に報告し、改善することは実務的にも有益。

本書に書かれていますが、AWSはそもそもサービスとして優れていた。まだ、日本でのフォロー体制が整っていない中、英語の情報を読み解きながら使い、気に入ってくれているユーザーが存在した。

著者は、そうしたユーザーを探り当て、訪問し、日本支社が立ち上がり、日本語でのサービスが始まることを伝えて回った。そこでの会話を通じて、これはと認めた人物に対し、一緒にユーザーコミュニティをやりませんか?と勧誘していった。

ユーザーコミュニティの勧誘では、「コミュニティを作ろうと思っています」といきなり切り出すことはしなかった。曖昧な期待あげはせずに素直にユーザーに「話を聞きたいです」とアポをとって話を聞いた。その人の関心が、もっとサービスを拡げたほうがいいというところにあると感じたら、「こういうコミュニティがあるとよくないですか?場を作りますので一緒しませんか?」と声をかけた。重要なのは自分ごと化して受け止めてもらうことなので、"参加のお願い"や無理な勧誘はしなかった。

そうした初期メンバーの重要性を「ファーストピンを狙え」とボーリングにたとえて、わかりやすく解説されています。

ストライクを出すために重要になるのが、「1番ピン(ファーストピン)」に相当する人たち。それは、すなわちコミュニティの初期メンバーやリーダーたちであり、このファーストピンとなる人たちの存在こそが、コミュニティをうまくまわしていくうえでの重要なポイントとなります。

AWSは、サービスの特性上、ターゲットが限られていいます。お菓子やアイスクリームであれば、広告しておいしそうだなと思えば買ってもらえる可能性がありますが、AWSはそもそもニーズがない人に広告しても、1ミリも興味は示しません。

ここに「コミュニティを通して売る(Sell through the community)」という考え方が登場します。コミュニティには、そもそもAWSに関心がある人しか居ませんし、メンバーが自発的に関心のある人を誘い入れてくれます。

そもそもの目的は、不特定多数にマーケティングすることではなく、「利用開始」を増やしていくことです。「もう一歩、押したらお買い求めになりそうな方をきちんと押す」「少し興味を持っている人に対して、もう一歩のところまで持っていく」ところを改善するほうが、ずっと効率がよいはずなのに、意外とここにフォーカスが当たりません。

著者は、コミュニティマーケティングとは、全く新しいパラダイムシフトであると説きます。

コミュニティマーケティングとは、既存のマーケティング戦略の中に追加されるものではなく、根本的にマーケティングの考え方を変える新しい考え方なのだ。

私のお気に入りは、本書で提唱されている『焚き火理論』。自走するコミュニティの作り方を焚火に例えて解説。これは、私自身、コミュニティ運営に携わって来た経験と合致します。

<自走するコミュニティの作り方>

① コミュニティづくりにおいてまずすべきなのは、火力の高い種火(=リーダー)と、よく燃えそうな枯れ木(=フォロワー)をしっかり見極めて集めること

② あとは、コミュニティ運営側は、その種火が燃え移って熱量が育つように、うちわであおぎ、枯れ木をくべ続ける役目をする

③ そうして焚き火が大きくなり安定して燃え続けるようになれば、何が入っても燃える

更に、コミュニティは手順を踏んで、じっくりと育てていく必要があることをキャンプファイヤーにたとえて、わかりやすく解説されています。

コミュニティを大きなキャンプファイヤーにしたければ、きちんとステップを踏むこと。それさえ間違えなければ、少数の種火でもキャンプファイヤーが作れます。
逆に、生木だけがくべられていて、それを燃やさなければいけないとなったら、ガソリンやバーナーを持ってきて、無理やり着火するしかない。燃料を何回も交換しながら。
これがコストです。時間がかかりますから、コストが大きくなります。仮にガソリンをかけても、表面は燃えますが、中心部まではなかなか燃えません。ボッと火が立っても、すぐに消えてしまう。木の表面の油が燃えるだけで終わってしまう。
それより、急がばまわれで、種火から枯れ枝でじっくり火を育てていったほうが、実は大きなキャンプファイヤーに育ちます。そしてこれは、最初からしっかり手順を踏まないといけない。種火と枯れ枝のバランスをよく見極めてタイミングよく投入することが重要です。
そして、キャンプファイヤーを大きなものにしていくには、それなりに時間がかかるということを認識しておくことです。

以下の記載は、コミュニティやDAOで活動をしてきた人々には、激しく共感を呼ぶ内容であり、かつ、勇気づけられる内容でもあります。

Amazonさん。本当に素晴らしい本をご紹介頂き、ありがとうございました。

*小島氏が開設されたAWSコミュニティ「JAWS-UG」。現在は、Facebookグループに加え、スラックでも展開されている様です。

<関連記事紹介>

「ひと妻DAO」代表の和泉すみれさんによる「DAO生成の5段階理論」を解説した記事。

「Web3時代の新しい働き方」として6つの項目に整理した私の過去記事。

<コミュニティ関連書籍>

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Google Cloudのユーザーコミュニティ「Jagu’e’r(ジャガー)」を立ち上げた著書が、ユーザーコミュニティと企業内コミュニティについて、様々な企業の事例を紹介しつつ書かれた1冊。成功事例だけでなくコミュニティ運営で陥りがちな問題やその解決方法など、どういうステップを踏んでいけばよいかが案内されているので、運営で困ってる人は必読。

「営業自粛でも前年比150%を達成したレストラン」「深夜営業NGでも売上を維持したバー」「取引先を次々とファンにしたBtoB企業」など豊富な事例をもとに、新しい時代のマーケティングの常識を説くとともに、その具体的な進め方を説いていく。小売・サービス業はもちろん、メーカーやBtoB企業にも役立つ内容となっている。「顧客消滅」という非常時にこそ、「一見よりもファン作り」「フローからストックへ」といった小阪流マーケティングの真価がさく裂。

生活者の消費行動を促すためには「ファンベース」が絶対に必要だ。それは、ファンを大切にし、ファンをベースにして中長期的に売上や価値を上げていく考え方であり、その重要性と効果的な運用の方法を、豊富なデータや事例を挙げて具体的に紹介。元電通マンで名著「明日の広告」の著者であり、「さとなお」の通称で親しまれている佐藤尚之氏の著作。ちなみに、ご自身の会社名も「ファンベースカンパニー」。

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