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【再掲】書籍「コミュニティーマーケティング 」を動画つきで解説します

本書は2019年発売と5年前の本となります。日進月歩のデジタルマーケティングの世界において、5年も前の本は使い物にならないと思ったそこのあなた。さにあらず。今でもバリバリに通用するコミュニティマーケティングの本質が詰まった1冊です。

著者の小島氏は、AWS(アマゾン・ウェッブ・サービス)の日本法人第1号社員。予算も人的リソースもない中、Saasの世界で普及しつつあったユーザーコミュニティに着目し、それをAWS普及のメイン戦略に据えました。当時、教本もない中、自ら仮説を立て、行動し、修正を重ねることで磨き上げた渾身のコミュニティ論です。

ファンコミュニティと言うと、消費財やブランド品、あるいはアーティスト等の消費者、生活者向けのサービスをイメージされる方が多いのではないでしょうか?私も、そう思っていた一人です。

本書を読むと、SaaSと呼ばれるサブスクビジネスや事業者向けのサービスとも相性が良いことが理解できます。

市場浸透の初期段階において、特定のサービスを気に入ったユーザーとしては、その良さを多くの人に広めたいという欲求があります。また、そんなイケてるサービスをいち早く見つけて使いこなしていることを自慢したいという気持ちも加わります。

また、ユーザー同志でユースケースを共有したり、バグや使いにくい点を見つけて、運営元に報告し、改善することは実務的にも有益です。

AWSはそもそもサービスとして優れていて、まだ、日本でのフォロー体制が整っていない状況下、英語の情報を読み解きながら使い、気に入ってくれているユーザーが既に存在していたそうです。

著者は、そうしたユーザーを探り当て、訪問。日本支社が立ち上がり、日本語でのサービスが始まることを伝えて回った。そこでの会話を通じて、これはと認めた人物に対し、一緒にユーザーコミュニティをやりませんか?と勧誘していったそうです。

ユーザーコミュニティの勧誘では、コミュニティを作ろうと思っていますといきなり切り出すことはしなかった。曖昧な期待はせずに素直にユーザーに話を聞きたいですとアポをとって話を聞いた。その人の関心が、もっとサービスを拡げたほうがいいというところにあると感じたら、こういうコミュニティがあるとよくないですか?場を作りますのでご一緒しませんか?と声をかけた。重要なのは自分ごと化して受け止めてもらうことなので、参加のお願いや無理な勧誘はしなかった。

と著者は勧誘の秘訣を明かします。

そうした初期メンバーの重要性を「ファーストピンを狙え」とボーリングにたとえて、わかりやすく解説されています。

ストライクを出すために重要になるのが、ファーストピンに相当する人たち。それは、すなわちコミュニティの初期メンバーやリーダーたちであり、このファーストピンとなる人たちの存在こそが、コミュニティをうまくまわしていくうえでの重要なポイントとなります。

AWSは、サービスの特性上、ターゲットが限られています。お菓子やアイスクリームであれば、広告しておいしそうだなと思えば買ってもらえる可能性がありますが、AWSはそもそもニーズがない人に広告しても、1ミリも興味は示してもらえません。

ここに、コミュニティを通して売る(Sell through the community)という考え方が登場します。コミュニティには、そもそもAWSに関心がある人しか居ませんし、メンバーが自発的に関心のある人を誘い入れてくれます。

そもそもの目的は、不特定多数にマーケティングすることではなく、利用開始を増やしていくことです。もう一歩、押したらお買い求めになりそうな方をきちんと押す、少し興味を持っている人に対して、もう一歩のところまで持っていくところを改善するほうが、ずっと効率がよいはずなのに、意外とここにフォーカスが当たりません。

コミュニティマーケティングとは、既存のマーケティング戦略の中に追加されるものではなく、根本的にマーケティングの考え方を変える新しい考え方。パラダイムシフトであると著者は主張します。

自走するコミュニティの作り方が、焚火理論として紹介されています。

1.コミュニティづくりにおいてまずすべきなのは、火力の高い種火、リーダーと、よく燃えそうな枯れ木、フォロワーをしっかり見極めて集めること。

2.あとは、コミュニティ運営側は、その種火が燃え移って熱量が育つように、うちわであおぎ、枯れ木をくべ続ける役目をする。

3.そうして焚き火が大きくなり安定して燃え続けるようになれば、何が入っても燃える。

更に、コミュニティは手順を踏んで、じっくりと育てていく必要があることをキャンプファイヤーにたとえて、わかりやすく解説されています。

コミュニティを大きなキャンプファイヤーにしたければ、きちんとステップを踏むこと。それさえ間違えなければ、少数の種火でもキャンプファイヤーが作れます。

逆に、生木だけがくべられていて、それを燃やさなければいけないとなったら、ガソリンやバーナーを持ってきて、無理やり着火するしかない。燃料を何回も交換しながら。

これがコストです。時間がかかりますから、コストが大きくなります。仮にガソリンをかけても、表面は燃えますが、中心部まではなかなか燃えません。ボッと火が立っても、すぐに消えてしまう。木の表面の油が燃えるだけで終わってしまう。

それより、急がばまわれで、種火から枯れ枝でじっくり火を育てていったほうが、実は大きなキャンプファイヤーに育ちます。そしてこれは、最初からしっかり手順を踏まないといけない。種火と枯れ枝のバランスをよく見極めてタイミングよく投入することが重要です。

そして、キャンプファイヤーを大きなものにしていくには、それなりに時間がかかるということを認識しておくことです。

本書には、コミュニティ運営者にとって有益な情報に加えて、コミュニティに参加し、活躍するメリットが参加者の視点でも書かれています。

30分や1時間の面接で、その人のスキルや人となりを評価するのはとても難しいことですが、コミュニティで評価が高い人であれば、その評価はかなり信用できるといっていいでしょう。

自分がどんな人物であるか、その信用がコミュニティによって、いわば保証、担保されている人が強い時代が、実際に来ている。もし、会社を替わる気がないとしても、その特異な部分で、副業のお声がけがかかるかもしれないのです。

続けて、著者は、コミュニティで活躍するメリット及び得られる報酬を以下の様に説明します。

対価はベンダーからではなく、違う形でやって来ます。それは、コミュニティで承認されたり、称賛されることだったり、世間から見つけられたり、自ら違うキャリアを見つける、といったことであって、そんなふうに報酬がやってくることが、持続的なコミュニティの運営には欠かせないのです。

また、熱量が高いコミュニティ作りに関する秘訣として、以下の様に書かれています。

すでに熱量の高いファンがいる場合のコミュニティは、熱量の高いファンを、どうスターにするかを考える必要があります。コミュニティの頂点で、あの人はすごいねと思わせる場をどうやってつくるか。熱量の高い人たちが心地よくなる環境づくり、熱量が維持される場、もしくは、もっと熱量が高くなる場づくりです。

如何でしたでしょうか?コミュニティ運営者にとってはもちろん、コミュニティ参加者にとっても大変示唆深い内容であると思います。

■動画版は、こちら。




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