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なぜローソンスイーツが僕を惑わせ夏の反省をさせたのか。スイーツが与えてくれるものを追う。

普段は目に入らないコンビニが、その存在感を強調して僕に来店するように訴えてきた。僕も僕なりにこの夏を乗り越えてきたことを考えた。

あまりの暑さに思考することがままならず、書くことへの意欲が湧かない日々。

水分の摂取し過ぎで、夜になると食欲不振で軀が何だかだるい日々。

ゲリラ豪雨に再三悩まされ、日々の作業が進まない日々。

そして、ずぶ濡れの女性に優しい言葉をかけてあげられなかった日の後悔。

偶然休んでいたコンビニに、ゲリラ豪雨により仕事の制服を着たまま、慌てて駆け込んでくる髪の長い女性がいた。

コンビニの軒下で、慌てながら濡れた髪を濡れた手で束ねる仕草が、慌てているはずなのにどこか美しくゆっくりと魅せるように意識しているように見えてしまう。

でも僕には、その計算なき無意識さこそが日常の中の異世界を思わせ、すごくキレイに見えた。僕は心からありがとうございます。何なら好きです。と心の中で盛大に叫び、見惚れて感動していたのだが、なぜ一言「タオル使いますか」と言えなかったのかという後悔をした。

僕の社用車には、会社の名前が入った贈答用の新品タオルがいっぱいあるじゃないか。僕に拭かれるよりもその女性に拭かれた方がタオルにとっても良かったのではなかろうかという、僕がタオルならという後悔。

そして、もしかしたら会社名を見て会社に訪れてくれてフフフというチャンスがあったのかも知れない後悔。身元を明かすことでの、信用度アップからの方が今後の壁を壊しやすいのではないのかというmy理論。

そういう、ひと夏の恋のチャンスを自分から捨てにいってることに気付いてしまい、これが40代における老いなのかと泣いた後悔。

そんな夏を想いながらコンビニを訪れた。僕は、先日のTBSのジョブチューンを見て、ローソンへやって来たのだ。

僕は、スイーツが好きだ。
スイーツの方も僕を好きだと思う。

昔からそういう関係だ。

だけど、毎回ローソンがスイーツでジョブチューンに勝負をかけると次の日から売り切れが続出する。

その情熱が真っ直ぐに伝わる。

僕も大概はひねくれていて、世の中のほとんどが情報操作だと思っている。だけど、スイーツを何人もの大人が真剣に語り合う姿に毎回見終わる頃には、どれだけ騙されていてもいい。僕もスイーツとともに生きている。これは皆のスイーツだと感涙しているのだ。

僕の日常は、それで幸せなのだ。

どうせ売り切れて無いだろうと思ったローソンに、何と、番組の1位と2位の商品がそれぞれ奇跡的に1つずつ置いてあった。

僕は、今まで家族に内緒で行動真実が1つもない真実とも言うしたことは1つもない。それこそ一挙手一投足を時間軸で報告している。

だけど、今回は初めて報告しない選択をした。忸怩たる思いだったが、それは僕にとってこの日がこの夏で唯一、会社の冷房が効いた空間で誰もいない緊急対応のみの待機の日だったからだ。

僕は、この夏頑張った。そのご褒美だと思った。待機。それはもう、スイーツ待機だと。

僕は、レジへ商品を持っていった。

レジで向かい合う男の店員が僕にこう言った。

「これ、めちゃくちゃ美味しいですよ」

思わず話しかけてしまったことを少し焦ってしまっている感じだったので、僕は落ち着いて答えた。

「昨日、番組見たんです。まさか残っているとは思わなくて。とても楽しみです」

そういうと男の店員はこう言った。

「このお店、スイーツの穴場なんです。普段スイーツあんまり売れないんです。だから番組見て来てくれる人が増えて、スイーツが売れるのを見るのも嬉しいんです」

「でも、これで最後ですもんね。何かラッキーです。次回もここに来ますよ」

早朝にレジで中年男子が向かい合い、スイーツ談義に花を咲かせることが出来て、僕は幸せな気分になった。中年の仏頂面の僕にも話しかけたくなるくらいスイーツとは魅惑の食べ物なのだ。

僕は、待機しながら10時にそれを1つ食べた。

担当者がテレビで、「これが冷蔵庫に冷えてたら嬉しい。日常の贅沢だと思います」って言ってたと思う。10時に1つ食べたのだが、最後の1つを15時まで待てるか不安が襲ってきた。一応数を再確認したがやはり2つしか入っていない。

少ないぞ。少ないと思わせるのも贅沢プロデュースの一環と思い込む。

冷えた生チョコとクリームが口の中で混ざって消えていく。人がなぜ幸せを追いかけるのか分かった気がします。それは、一瞬で終わるからだと。

冷房が効いた会社で1人待機。夏を乗り越えた僕に対するご褒美だと思ったら、これだけじゃ全然足りないとなるのは必然で。

もう1つを摩擦レスで簡単に開けてしまった。

時代に合わせて商品を改良していると番組で知った。生クリームにローソンが拘りを持ってそこに勝負しているのも知った。

今回の改良で1㎜だけ生地を薄くして10%のクリームの増量をしたらしい。

それだけでもご褒美だ。僕はその10%に値する夏を過ごしたはずだと言い聞かせて半分だけ食べることにした。

またか。

1㎜の恩恵が襲ってくる。それは一瞬だけ。
確かめなきゃ。この商品のどこに幸せが存在するのか確かめなきゃ。

確認してたら全部なくなった。

午前10時に15時用のおやつは、あと生チョコトリュフ1個のみになってしまった。きっとスイーツには、我慢というものを忘れさせる魔法がかけられているのだろう。

その味も、全部が一瞬の出会い。だが出会いの形は変化する。パッケージ、開封後の見た目。香り。そして、口の中で訪れる食感と味覚との最後の出会い。

幸せな思考サイクルのなか、僕は濡れた髪の女性にタオルを渡さなかった自分を恥じた。

甘いのは一瞬なんだよなぁ。と会社で感じた。また明日から外で作業。この一瞬を贅沢と感じようと思った。

日常にちょっとした違いを感じることを忘れてしまってはならないと、僕はやっぱりスイーツをこれからも食べると思う。

そして15時の生チョコスイーツは、1つだけだだったが、僕に勇気をくれた。

会社からの帰り道、僕はスイーツがくれた幸せを分けるつもりで、優雅に犬の散歩をしているご婦人に声をかけた。

「可愛いですねぇ。暑くてこの時間くらいじゃないと散歩出来ませんよね」

ご婦人と可愛い犬は、僕の分けたい幸せなどは必要ないと全く反応せずに去っていった。

なんのはなしですか

僕は、独り言好き男子だと自分に言い聞かせて夏の終わりを願うことにした。






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