Lie

あなたは嘘つきだ
朝ごはんの目玉焼きは半熟派
違うね本当は完熟派なんでしょ?
私知ってたよ
あなたが時々作る目玉焼きは
癖なのか完熟になってたものね

私みたいにロングの子が好きって
いつも言ってくれてたけど
あなたのInstagramでいいねする女の子は
だいたいショートカットだったよね
なんかムッとしたけど
君の長い髪は特別なんだって言ってくれたから
許そう

犬より猫派だったんでしょ?
そばよりうどん
アウトドアよりインドア派だったよね
あれもこれもどれもこれも
本当にあなたは大嘘つきだ

でも知ってるんだ
どの嘘も全て私のためについてくれてたことは
優しいあなたは全部私に合わせようとしてくれた
でも全部気づいてたから
「ねえ、嘘つかないで」って
私の言葉にあなたはよく困り顔してたよね
ほんとに愛しい私の思い出

でも今はその愛しい思い出が辛い
あなたといたこの部屋から
あなたのついた優しい嘘達が離れてくれないよ
お揃いで使った食器にはあの日の目玉焼きの嘘
ソファにはあの日語り合ったタイプの嘘
テレビのリモコン雑誌歯磨きお風呂場寝室
あれもこれもどこもかしこも
あなたが付いてくれた嘘と思い出が詰まりすぎて
私の息が詰まりそうだよ

ねえ、なんで嘘ついたの?
「ずっと一緒だよ」なんて
守れない約束ならしないでよ
八つ当たりしたくてもあなたは居ないけれど
どうせあなたの事だ
私を悲しませまいと嘘をついてたんだよね
自分が病の中にいたなんて

いつもあなたの嘘はバレバレな癖に
どうしてそういう大事な嘘は上手いの
私、何にも気付けなかったよ…
あなたの優しさがその時は辛かったよ
あなたが倒れた時どうせいつもの冗談だって
思ってしまった私を殴りたい

最後の別れ際
弱々しくなった優しい笑顔であなたは言った
「愛してる」
これは嘘じゃない
私の手を握るか弱い手に力が入るのを感じたから
だから私も返す
「愛してる」
これも絶対に嘘じゃない
嘘なわけが無い

彼が遠くに旅立ってから数ヶ月が過ぎる
まだあなたのついた嘘達と思い出が
時に私を切なくするけれど
私は元気に生きてるよ
あなた以上の人には出会えそうにないよ
私のことを一番に考え私のために
自分を犠牲にしてまで尽くそうとしてくれる
あなたみたいな人もう絶対会えないと思う

失ってからより
あなたが愛しくなってしまってしょうがない
やっぱりダメだ前向きな言葉が綴れない
悲しくて寂しくてしょうがないよ
あなたがいてくれないと私ダメだよ
あなたの優しい笑顔が恋しい
ごめんね、私全然元気じゃない
でも精一杯生きるね
愛したあなたの分までずっとずっと
でもまだ元気になれそうにはないや
なんだかんだ私も嘘つきだ

私達どちらも嘘つきだ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?