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噛みつきについて知っておいてほしいこと

保育園生活では、新しい出会いや子どもの成長、お家とはまたちがった一面など、たくさんの楽しいことが待っています。
でも、園生活のなかではもちろんケガやケンカなどのトラブルも。なかでも1歳~2歳頃によく起こる「噛みつき」に関しては、ショックを受けられる方も多いです。「噛みつき」について事前に知っておいてもらうことで、少しでも安心して保育園に通ってもらえたらと思います。


噛みつきの衝撃は、不信感や関係悪化のもと

保育園では毎日いろんなことが起こります。
何にでも興味津々だけれども、まだ体のコントロールも心のコントロールも発達の途中の子どもたち。先の見通しも未熟なので、はじめのうちは大人からするとハラハラするような行動ばかりです。

ですが、人間は経験を通して学んでいくもの。
トラブルが起こらないように、傷つかないようにと子どもを柵に入れて閉じ込めておけるわけではありません。
ですからケガもすれば、ケンカも起こります。
そのなかでも、保護者の皆さんが衝撃を受けられることが多いのが、噛みつきです。

「 話には聞いたことがあったけど、まさかうちの子がお友達を噛むなんて!」
「 かわいいわが子が人から噛まれるなんて!」

噛んだ方噛まれた方、双方の驚きもあれば、噛まれた歯形や内出血の痕がくっきりと残るさまに驚かれる方もおられます。

噛みつきの衝撃は、噛みつきとはどんなものであるのかを知っていないと、
保育園への不信感や保護者同士の関係の悪化にもつながります。

今回は、なぜ噛みつきが起こるのか、起こったときはどう対処しているのか、そしてどうすれば噛みつきはなくなるのかということを説明することで、そのようなトラブルをできるだけ防げたらと思っています。


噛みつきはなぜ起こる?

赤ちゃん泣いてる

ではこの噛みつき、いったいなぜ起こるのでしょうか。

ひとつには、子どもの自我の芽生えが関係していると言われています。

噛みつきは、大体1歳~2歳頃によく起こります。
自分ひとりでは動いたり、ものに触れなかった赤ちゃんは、じょじょに立って歩けるようになり始め、すこしずつものを掴んだり使ったりしてあそべるようになっていきます。そうすると自分のなかでああしたいこうしたいという欲求がうまれてきます。それと同時に、自分以外の存在とのかかわりも生まれ始め、他者への関心も出てくるのです。
これがちょうど1歳頃。

ですが、この時期の子どもたちはまだ言葉も一語文や二語文。
自分の気持ちを十分に表現したり、相手に伝えたりということはまだまだ難しい状態です。

自分の思うようにいかない、でもそのことを相手に伝えられない。
そんなもどかしさが、口という赤ちゃんにとってもっとも手近な手段に出てくることで、噛みつきが起こるのです。

つまり噛みつきは、言葉の代わりとなる自分の気持ちの表現のひとつなのです。

お家で一緒にすごしたり、一緒にお出かけしたりしているときは、そんなこと起こらなかったと思う方もいらっしゃるでしょう。
親とずっと一緒の環境だと、自分の気持ちがちゃんと通じていたり、思い通りにしてもらえることも多いのではないでしょうか。

しかし、保育園では自分と同じようにまだまだ言葉が不十分で、自分の気持ちや行動の制御をこれから覚えていく子どもたちに囲まれてすごすことになります。親と一緒にいるときよりも、自分の思いが通らないことも、気持ちをわかってもらえないこともたくさん出てきます。
さらには親と1対1ですごしていたりお出かけしたりするときよりも、ずっと過密な環境ですごすのです。そこでは当然、子どもたち同士の気持ちの衝突が出てくることになるのです。

このようにして、保育園で噛みつきが起こるというわけなのです。


保育園で噛みつきを防ぐには

当然、保育園側も対策を考えていないわけではありません。

子どもたちのあそびや関心がコントロールしきれないほど一か所に集中しないように、おもちゃの数や種類を十分に用意したり、適度な空間を確保したり、できるだけ一人ひとりが満足してあそべる環境を工夫します。

そして可能なかぎり、一人ひとりの思いを汲みとれるようにていねいに関われるように工夫します。

一斉保育では限界がありむずかしいことではあるのですが、1対1のかかわりを大切にする保育だとほぼ噛みつきが起こらないこともあるのです。


噛みつきが起こったときは

母と子甘える

しかし、どんなにていねいに関わっていても、一瞬のすきに起こってしまうこともあるのが噛みつき。

噛みつきが起こってしまったときには、まず噛まれた子の傷を確認し、流水で洗って痕がのこらないようにできるかぎり冷やします。そして、噛まれて驚いた気持ち、痛かった気持ちに寄り添い、噛んでしまった子の気持ちを伝えます。

「 痛かったね、びっくりしたね。もう大丈夫だよ、冷やしているからね。きっとあの子はおもちゃを貸してほしかったんだね。」

こんな具合です。

傷の深さに反して痕が目立ってしまうこともありますが、この痕はちゃんと消えますので安心してくださいね。

嚙んでしまった子に対しては、不満に思って噛みつきに至った心情を汲みとったうえで、でも噛まれるととても痛いこと、噛むことは方法としてよくないことだとしっかり伝えます。ちゃんと言葉にして、伝えたかったことを代弁してみせながら教えます。

「 あのおもちゃが使いたくて貸してほしかったんだね。でも、こうやって噛んだらとっても痛いんだよ。噛まれた子は痛くて泣いているよ。噛んだらだめだよ。ごめんねって言おうね。おもちゃを貸してほしいときは、言葉で貸してって言うんだよ。」

一度では伝わらないこともありますが、くりかえしくりかえし、伝えます。
( ていねいに保育していると、そんなにくりかえすほど噛みつきが起こることはあまりありません。)
言葉で伝えられることをわかると、子どもは嚙みつきを手段として選ばなくなっていくものです。

子どもたちへの対応の次は、保護者への対応です。
噛みつきがあったことを双方の名前を出して保護者にお伝えするかはそれぞれの園にもよりますが、ConoCoでは、まずは園が噛みつきを止められなかったことをどちらの保護者にも謝ったうえで名前も含めてお伝えするようにしています。
その方が親同士もひとこと声をかけて謝ったり、許したりと、すっきりと解決できるからです。

もちろん噛みつきが原因でトラブルに発展しないように、あらかじめ入園の際の面談で噛みつきは起こりうること、そして噛むことも噛まれることもありうるのでお互いさまの精神でいてほしいことをしっかりとお伝えするようにしています。


噛みつきは冷静に受けとめて

何度も言いますが、噛みつきは、我が子が噛むこともあれば、噛まれることもあります。いざ入園して噛みつきが起こったときは、初めての経験でショックを受けられるかもしれません。
ですがご説明した通り、噛みつきは子どもにとって自分の気持ちの表現のひとつです。他者と共存していくうえで、自分の気持ちや行動をコントロールしていく成長の過程でもあります。
そして、言葉で表現することを覚えるにしたがって、かならずおさまるものです。

保育園での噛みつき、各園でもできるかぎり防ぐ努力をしたうえでもなお、このように成長の過程に起こりうることと知って、少しでも冷静に受けとめていただけたら幸いです。


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