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生きようとすれば、誰かを殺すのだ。

誰かを救う行為が、別の人間を死に追いやる。人を助ければ、その一方で誰かの不利を招く。味方をすれば敵ができる。生きようとすれば、誰かを殺すのだ。すべて同じではないか。
…何物も殺さない、何者にも不利益を与えない、そんな生き方をしたければ、人との関わりを一切断ち切る以外にないだろう。山の奥に籠り、ただ一人で生きていくしかない。たとえ一人で生きても、食べるために動物を殺す。動物を殺さなくても、木の実を採れば、その実を食べる動物が飢える。生きること自体が既に、殺し合いと同じだ。(The Fog HIder  森博嗣)

森博嗣さんの小説''Fog HIder''シリーズは、小説でありながら哲学書でもある。
この世界に絶対的な正しさなんて存在しないし、いつでも清く正しくあろうと願っても矛盾だらけなのが人間なのだとつくづく思う。
森博嗣さんの言葉は世間に対する悲観も楽観もなく、この世の理をまっすぐに見つめているからこそどんな気分のときも心にスッと入り込んでくるような気がする。


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