ミステリー小説ロンドの旅Chap4.ユールマラの事件19.離別
幼女は食事をしながら何度も目を擦った。捜査の負担を背負うには彼女の肩はあまりにも小さい。出された料理をサッと口に運ぶとすぐに歯を磨いてベッドへ向かう。久しぶりに両親が口を揃え我が子に1日の終わりの挨拶投げかけた。
バルカ、おやすみ。
…。
2人きりになると、ソナタはロンドと離れ離れになってから今までの経緯を淀みなく語りはじめる。壮絶な旅の一部始終を聞きながら、全身の水分がすべて目から流れ落ちるかと思うほど涙が止まらなかった。間接的に彼女へ与えてしまった激しい苦痛をもう消すことはできない。自身の行いを心底悔い、打ち拉がれた。
私たちの親友はね、口は悪いけど、ずっと貴方のことを信じているわ。今でも。メライと組んで私とロンドの再会を阻もうとしたのは彼らの優しさなの。
僕のしてきたことは間違いだったのか。こんなに周りの大切な人たちを傷つけて…。
貴方は"上"と自分を信じてここまできた。
ははは…"自分を疑え"、か。君の座右の銘だ。
自覚はないかも知れないけど、いま貴方は光と闇の狭間にいてとても危うい状態よ。いつ深い深い暗黒の闇に落ちてもおかしくない。それは、"上"のせいでもあるけど、自分に起きること、起きたことはすべて最後は自分で責任を取らなくてはならないわ。自分自身で乗り越えるしかないの。まだ涙を流せるいまなら、本当のロンドに戻ることはできるわ。
しばらく…1人にしてくれ。
小声で呟くとスタスタとベッドルームへ向かって歩き出した。再会の喜びも束の間、2人の間には重苦しい空気が漂っている。彼女は1人外を眺めた。窓ガラスに映る自分の瞳から一筋の涙が流れているのが見える。気づかぬうちに泣いていたようだ。1人になり緊張の糸が切れたのかも知れない。過酷な逃亡生活中は一度も涙を流すことはなかったが、いまはなぜが涙が止まらない。そんな時、機内の通話装置が鳴ったので、受話器を取った。
ソナタ…せっかく会えたのに本当にすまない。時間が欲しい。僕の心はこんなにも弱いなんて思ってもみなかった。
ロンド、どういうこと?どこかに行ってしまうの?
その後すぐにゴォーという大きな音が機内に鳴り響いた。
僕は…必ず帰る。
お願い!いまの状態で1人になったら貴方はどうなるか分からないわ!!
ソナタ、メライ、バルカ、ごめん。行ってくる。
彼女は急いで音のする方へ向かった。しかし、そこには人影はなく、あるのは開いたハッチから吹き荒れる強風だけだった。緊急用のパラシュートが1つなくなっている。なんとロンドは飛行中の機体から突然外に飛び出してしまったのだ。
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