見出し画像

新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅Part2.ソナタの旅Chap.2アントワープの事件

29.模糊

事件当日、幼馴染と団長は楽屋で話をした。

 本当に久しぶりだね。元気そうで何よりだよ。

 団長、ご無沙汰しています。その節は母が大変なことをしてしまい、どうやってお詫びをしていいのか…申し訳ありません。

 …私にも大きな責任がある。だがいまの立場を退かないことにしたのは、その"責任"から逃げないためだ。ところでいまも音楽は続けているんだろう?

 ええ。でも今日はそのお話ではないんです。これをあの子に渡してほしくて来ました。

団長が受け取った手のひらサイズの白いメモ用紙には"pfpp fff ppff fppf fppf"と書かれていた。このあと、幼馴染はすぐに楽屋を退室し、程なくしてアントワープの事件が発生したのだ。これは、音楽記号のp(ピアノ/弱く弾く)とf(フォルテ/強く弾く)を使ったモールス信号である。モールス信号とは、短い点と長い点を掛け合わせ言葉を作ることができるもの。彼女たちはpを短点、 fを長点に置き換え幼少期に暗号遊びをしていた。

今回の暗号を読み解くと、"かれのまま"となる。つまり、"彼のママ"…誰のことだろうか。それは、幼馴染の母親ではなく、自殺したと見られる舞台袖にいた係員の母親であると考えられる。ソナタは過去の事件と暗号のメッセージを結びつけ、係員の母親が事件に関与している可能性を見出した。しかし、幼馴染がわざわざ団長宛に暗号化したメッセージを渡した理由、"彼のママ"の関与を知っている理由は、ソナタもまだ解き明かすことができていない。これ以上ソナタ自身による捜査は不可能であり、赤縁メガネの女性に託し自分のやるべきことに注力することにした。それが、息子やロンド、メライ、バルカ…大切な家族を守ることに繋がると、ソナタはもう確信している。しかし、旧友から託されたタブレットがあるとはいえ、相手の姿はボンヤリと…いや、いまの時点では見えていないと考えた方が良いだろう。そんな相手との対峙はソナタの頭脳をもってしても簡単なことではないのだ。

アントワープの事件のクライアントは"彼のママ"、マリオネットは幼馴染の母親、ターゲットは団長…仮説が正しいのであればこういうことになる。だが、この誰もが物語の登場人物に過ぎない…すべては"著名人殺し"の首謀者"プランナー"の筋書き通りにコトが進んでいるだけだ。憎悪の火種に薪を焚べ、その炎を大きく、そして黒く…深い闇の色に育てていく。こうしてクライアントやターゲットに恰も自分の意思で事件を引き起こしていると思い込ませる。これがプランナーの完全犯罪の手立てだ。ただ今回に至っては急遽ストーリーを書き直し、マリオネットの演者をソナタへ変更したようだ。なぜ彼女が狙われているのか、それもまだ謎なのである。

旧友は団長の娘の替え玉を用意しようとしたが、父親が殺害された事件の捜査に何とか協力したいという本人の達っての願いにより、自分自身でソナタと接触した。すなわち、彼女たちのやり取りにウソはなく、短い間ではあったが彼女たちの間に確かな信頼関係が芽生えたことだけは、紛れもない真実であった。

ロンドの旅Part2ソナタの旅 Chap3へ続く

#ロンドの旅
#ソナタの旅
#ロン旅
#ソナ旅
#ミステリー小説
#ソナタ
#ロンド
#カクヨム
#小説家になろう
#金賀こう
#斉田キョウ
#ミステリー
#小説
#新感覚
#新感覚解決しないミステリー
#解決しないミステリー
#解決しないミステリー小説
#キョウ
#こう
#メライ
#バルカ
#インスタ小説
#japanesenovel
#konovelchannel
#moteruchannel
#RondosJourney
#mysterynovel
#mystery
#novel
#モテルちゃんねる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?