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新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅Part2ソナタの旅 Chap2アントワープの事件

20.疑惑

 おお、今日はお疲れさま。何かあったかい?

団長は優しく声をかけるが係員はずっと下を向いたまま何も応答がない。両手の拳を強く握り体は少し震えているように見える。中で話を聞こうと誘導してもそこから動こうともしなかった。

 このドアは開けておくから準備ができたらいつでも話を聞くよ。

団長は係員の両肩に指先をそっと乗せ、少し屈んでにっこり笑顔でそう伝えると自席に戻った。それから数分…数十分が経過したところで再びノックの音が聞こえる。

 失礼します。

いつもは威勢が良く楽団の中ではムードメーカーの係員は肩を落とし、声は小さく、まるで別人のような表情を見せた。顔の血の気が引いて青白く、ただごとではない雰囲気を醸し出している。

 おっ、やっと話してくれる気になったか。どうぞ、そこに座って。いまコーヒーを淹れて来るよ。

もちろん彼の異変には気付いているが、あえて明るく普段どおりに接した。団長は自室をあとにしてパントリーへ向かう。来客用のソファに腰をかけた係員は足を広げ腿に肘をつきながら頭を抱えた。自分1人では抱えきれない情報を知ってしまい心がいまにも壊れそうなのである。やがて団長が戻りテーブルにコーヒーを置くと係員の向かい側に腰をかけた。

 今日は色々あって苦労をかけたね。

 いえ。団長もお疲れさまでした。今日のことで、どうしてもお話ししたいことがあります。

 どんな話だい?

 僕は…見てしまったんです。

 何を?

 あ、あの子の母親が…だ、団長の娘さんの楽器に…細工をして、、ました。

 君は確かに見たんだね?

 はい、間違いありせん。皆さんがコイントスで演奏順を決めているとき、僕は1人で娘さん側の舞台袖の係員をしていました。そこには確かに楽器も置いてあって僕は番をしていたんです。

 …ちょっと待ってほしい。間違いがないよう、君がこれから話そうとしてくれていることを文字にして記録させてもらってもいいかな?もちろん最後に君にチェックしてもらうし、君が話してくれたということは絶対に誰にも言わないよ。

 分かりました。ご配慮はありがたいですが、これを知っているのはあそこにいた僕だけです。きっと母親も気付くことでしょう。でも、それを分かったうえで団長に伝えなければいけないと思ったんです。このままオーディションの結果が出てしまうなんて、音楽家として、人間として、僕は納得ができませんでした。

係員の固い決意は、団長へ十分に伝わった。しかし、この決意がさらに事件を複雑にしていくことをまだ誰も知らない。

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