新感覚!解決しないミステリー小説 ロンドの旅Part2.ソナタの旅Chap.1ルンビニの事件
8.複眼
ジェット機が到着すると、すぐに事件現場へ向かった。そこでクライアントと合流する手筈になっている。初めて訪れた国だが迷うことはない。"上"の手配した車に乗り込むだけだ。事件の資料から移動手段に至るまで、捜査に必要なものはすべて用意されている。社員は事件を解決することだけに集中できる環境が整っているのだ。
道中は牛車や馬車とすれ違った。周りには広大な野原が広がっている。外灯がないため、夜道の運転はヘッドライトだけが頼りになりそうだ。当時の状況をできるだけ明確に想像し、目に見えている実際の景色と照らし合わせながら矛盾点を見出す。それがソナタのやり方である。
こちらでございます。
ドライバーがそう呟き、車を止めた。ソナタはすぐに降りて辺りを調査し始める。クライアントが言うとおり、夜中にこんな何もないところで何をしていたのか?どのように行き着き何のためにここにいたのか?その理由が分からない限り、解決の糸口を掴むのは難しそうだ。現場には献花代が置かれ、たくさんの花が手向けられていた。世界的な演出家である彼を弔うため、世界各国からこの地を訪れる人が後を絶たないという。つまり、この事件の注目度は高い。ましてや、一度事故として処理されたものが覆るとなれば、メディアの格好の餌食となり、さまざまな憶測や誇張、フェイク報道が飛び交うことは容易に予測できる。もちろん事件の解決が最優先なのだが、それだけではなく、社会的な影響度合いも含め、よく考えて行動することが事件関係者には求められることになる。
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